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其の五
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<SIDE:都木美周>
俺の幼なじみ、野宮幸明はアホだ。
母親同士が学生時代からの大親友でお互い結婚後も非常に仲が良く、家も近所だったことから、いつも俺の隣には当たり前のように奴がいた。
あまりに一緒に居すぎて、本当の兄弟(同い年の弟)だと思い込んでいたくらいだ。
向こうの両親が仕事で忙しい時はうちで普通にご飯食べて風呂入って寝泊まりしてたし、まあそりゃ勘違いもするだろう。
……言いたくはないが小さい頃のあいつは、とにかく可愛かった。
色白で目がくりっとして、笑うと周りがキラキラ明るく見えるような。
そのせいかよく女の子の服を着せられてたけど、本人は別に気にしてはいなかったと思う。
人見知りせず誰にでもニコニコして、可愛らしいスカート姿の幸明。
今と比べて信じがたいほど大人しかったあいつは、それはもう素晴らしい美少女(美幼女?)に見えた筈だ。――特にロリコンの変質者どもには。
おかげで常に俺が目を光らせるようになり、何度危ういところを救ったことか。
幸明のアホめ。
見るからに怪しいおっさんに「美味しいお菓子あげるから」と声をかけられて疑いもせず、のこのこ付いて行こうとするなんて。
他にも玩具やら仔犬やら、誘い出すためのエサは様々だったけれどその全部にまんまと引っ掛かるし。
あの頃もし俺がいなかったら完全に性犯罪の被害者だったぞ。下手したら拉致監禁の末、死んでいたかも。
実は一度、俺が目を離した隙に男が近付いたことがあった。
車に乗せられそうになっている幸明を見つけ、防犯ブザーを鳴らし、大人たちに助けられて事なきを得たが。
……何故か今でもたまに、あの日の夢を見ることがある。
ブザーが鳴らず俺は間に合わなくて、幸明を乗せた車が走り去るのだ。そしてどこか真っ暗な場所で男に乱暴される幸明が泣き叫びながら、悲しげに俺の名を呼ぶ。
「周ちゃん、助けて、お願い、助けて」
「ごめんなさい、周ちゃん、周ちゃん」
(幸ちゃん、幸明!)
***
息苦しさで目覚めると、何もない宙に向かって手をのばしていた。
クソッ、と苛ついてその手で目を覆う。
「あのアホ野郎が、くだらねー真似しやがって。おかげでまた嫌な夢を見ちまったじゃねーかよ」
いつの間に寝てしまったのだろう。
バクバクとうるさい心臓。
俺は、深く吸い込んだ息を吐き出した。
あの誘拐未遂事件があったすぐ後に幸明の親は離婚し、父子家庭となった。理由はよく分からない。涙目の母さんが『大事な家族を守るためなのよ』って言ってたから、特別な事情があったんだと思う。
決して不仲になったわけじゃないその証拠に、幸明とおじさんは今もおばさんと楽しく電話やメールでやり取りをしている。ついでにうちの家族も。
まあ、それはともかく。
.
俺の幼なじみ、野宮幸明はアホだ。
母親同士が学生時代からの大親友でお互い結婚後も非常に仲が良く、家も近所だったことから、いつも俺の隣には当たり前のように奴がいた。
あまりに一緒に居すぎて、本当の兄弟(同い年の弟)だと思い込んでいたくらいだ。
向こうの両親が仕事で忙しい時はうちで普通にご飯食べて風呂入って寝泊まりしてたし、まあそりゃ勘違いもするだろう。
……言いたくはないが小さい頃のあいつは、とにかく可愛かった。
色白で目がくりっとして、笑うと周りがキラキラ明るく見えるような。
そのせいかよく女の子の服を着せられてたけど、本人は別に気にしてはいなかったと思う。
人見知りせず誰にでもニコニコして、可愛らしいスカート姿の幸明。
今と比べて信じがたいほど大人しかったあいつは、それはもう素晴らしい美少女(美幼女?)に見えた筈だ。――特にロリコンの変質者どもには。
おかげで常に俺が目を光らせるようになり、何度危ういところを救ったことか。
幸明のアホめ。
見るからに怪しいおっさんに「美味しいお菓子あげるから」と声をかけられて疑いもせず、のこのこ付いて行こうとするなんて。
他にも玩具やら仔犬やら、誘い出すためのエサは様々だったけれどその全部にまんまと引っ掛かるし。
あの頃もし俺がいなかったら完全に性犯罪の被害者だったぞ。下手したら拉致監禁の末、死んでいたかも。
実は一度、俺が目を離した隙に男が近付いたことがあった。
車に乗せられそうになっている幸明を見つけ、防犯ブザーを鳴らし、大人たちに助けられて事なきを得たが。
……何故か今でもたまに、あの日の夢を見ることがある。
ブザーが鳴らず俺は間に合わなくて、幸明を乗せた車が走り去るのだ。そしてどこか真っ暗な場所で男に乱暴される幸明が泣き叫びながら、悲しげに俺の名を呼ぶ。
「周ちゃん、助けて、お願い、助けて」
「ごめんなさい、周ちゃん、周ちゃん」
(幸ちゃん、幸明!)
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息苦しさで目覚めると、何もない宙に向かって手をのばしていた。
クソッ、と苛ついてその手で目を覆う。
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いつの間に寝てしまったのだろう。
バクバクとうるさい心臓。
俺は、深く吸い込んだ息を吐き出した。
あの誘拐未遂事件があったすぐ後に幸明の親は離婚し、父子家庭となった。理由はよく分からない。涙目の母さんが『大事な家族を守るためなのよ』って言ってたから、特別な事情があったんだと思う。
決して不仲になったわけじゃないその証拠に、幸明とおじさんは今もおばさんと楽しく電話やメールでやり取りをしている。ついでにうちの家族も。
まあ、それはともかく。
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