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とある牛丼チェーン店にて
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ある日俺は牛丼を食べに有名チェーン店へ。
みんながすーきすーき、すっきでーす、な牛丼を食べたくなる。
俺は数ある食事の中では牛丼が大好きだ。
そんな牛丼を1週間に一度は食べたくなる。
本当は好きですな牛丼チェーン店より、松な牛めしを提供してくれるチェーン店の方が好きだ。
しかし家から自転車でサクッと行ける距離にあるのは当時はそこしか無かった。
話は逸れるがみんなはどんな牛丼の食べ方が好きだ?
マストな食べ方は人それぞれだろう。
もしこれだ!ってのがあったら是非教えて欲しい。
俺の?聞きたいのか?
はは、聞かせてやろう。
松な牛丼、もとい牛めしの食べ方なんだがな。
サイズはなんでもいい。
まずは牛めしと生卵を頼む。
卵を割り、その中にテーブルに予め置いてある、そう、ポン酢をぶち込む。
どのくらいの量かって?
そんなの好きなだけ入れればいい。
ポン酢を入れたら親の仇かってくらいかき回せ。
牛丼の上から回すように溶き卵をかける。
ここでさらに、そう!またポン酢だ。
またまたポン酢をまわしかける。
どのくらいの量かって?
そんなの自分で決めやがれ。
うむ、うまし!
脱線したな。
では本題に入ろう。
某牛丼チェーン店で起こった俺の体験談を聞いてくれ。
この話はもはやコントだ。
どうせなら身振り手振りでみんなに話したい。
だが文字でここは我慢して欲しい。
それではコント牛丼屋、お楽しみください。
ふぅ、今日も牛丼食べるか~大盛りか特盛か~うーん、まぁ座ってから決めるかな。
自動ドアの前に立ち、開いた所で店内へ。
いつものように1歩足を踏み入れる。
通い慣れた牛丼屋だ。
なんてことはない。
直前までは何を食べるかしか俺は考えていない。
なのになんだ、雰囲気がいつもと違う。
俺は状況を確認するためにざっと店内を見渡した。
入口から目の前はレジ、そこからU時型のカウンター席。
向かって右手にはテーブル席だ。
カウンター席にはまばらに数人が座っている。
そして2人席にはちょいとヤンチャそうなあんちゃんだ。
奥の四人席が複数空いているのが目に入る。
カウンター席に座るより、何故か俺はテーブル席を選択した。
俺の席からはカウンター席が一望でき、カウンター席の奥には厨房だ。
なんだろうか、店内の空気がおかしい。
まぁ気の所為だろうと流し、商品を選んでいく。
たしか当時はまだタブレットではなかった。
俺はメニュー表を見て商品を選んでいく。
ここで俺は異変に気付いた。
いつもは座ったらすぐ出てくる麦茶が来ない。
忙しいんだろうとそのことは頭の片隅から外へと出ていった。
チーズ牛丼、ネギたま牛丼、キムチ牛丼、何にするかなぁと思い視線を走らす。
今日はネギたま特盛だな!
豚汁とサラダもいっちゃいますか~なんて思い店員さんを呼ぼうかなと視線をカウンター席の方へと移す。
ん?なんだ?
「山田さん!味噌汁作って!まだサラダも出てませんよ!牛丼並できてます!」
厨房から女性店員の怒鳴るような声が聞こえる。
その声で焦った顔をし、カウンターの間の職員スペースを右往左往する50代も後半であろうおじさんが見えた。
なんだ?何が起きてる?
おじさんは女性店員の指示をこなすことに必死だ。
だがなんだ、動きに無駄が多い。
「ええっと、これは⋯⋯サラダはどこだ⋯この牛丼はどこの人の⋯⋯」
うむ、とても焦ってらっしゃるじゃないか。
焦らなくてもいいのに。
それに女性店員さんもそんなに追い込まなくてもいいのに。
そう思いながら俺はおじさんの動きを目で追うので必死だ。
だからだろう、俺の注文を取りに来てくれない。
そんなおじさんだ、長い目で見てやらんとな。
右往左往するおじさん観察をしながら俺は注文を取りに来てくれるのを待つ。
その間にもお客さんは入ってくる。
カウンターに座る人、テイクアウトを注文する人。
こんなのおじさん捌けるのかね。
心配しながら俺はおじさんを見守った。
でも注文早く取りに来てくれないかな⋯⋯⋯
その時、俺の視界に動く人物を捉えた。
ヤンチャなあんちゃんだ。
食べ終わったんだろう、レジの前に立っていた。
呼び鈴を鳴らすあんちゃん。
焦ってレジに向かうおじさん。
レジの前に立ち、さらに焦っているおじさん。
どうした、何があった?
俺はもう自分の注文どころじゃない。
焦るおじさんとイライラしているヤンチャなあんちゃんに釘付けだ。
「なにしてんだ、早くしろよ」
「はい、ただいま!えっと、これかな、どうやるんだっけ、えっと⋯⋯」
なんだ?レシートを確認して、何食べたか打てばいいじゃないか。
何をそんなに戸惑う?
あんちゃんがブチ切れ寸前でレジのカウンターを指でトントンしてるぞ。
頑張っておじさん。
店内の平和はおじさんにかかってるんだ。
「おっせーな!牛丼大盛りとサラダと味噌汁だって言ってんだろ!」
「は、はいぃ!今すぐやりますのでぇ!えっとえっと、これじゃなくてぇぇ、どれだったかなぁ」
ほら、ついにブチ切れたぞあんちゃんが。
焦るなおじさん、分からない時は聞けばいいんだ。
店内には厨房にも店員さんがいるんだ。
俺の願いが通じたのだろう。
おじさんが動いた!
「す、すいません、レシートがなくなったみたいで、あの、どうしたらいい⋯⋯」
「前に教えましたよね、やってください。次の出来上がってますから、早くしてください」
一刀両断だ。
取り付く島もないのか?
1回教えたからやれ?なんてシビアなんだ。
ここはなんだ、おじさんに厳しい世界か?
走ってレジ前に戻るおじさん。
怒鳴るあんちゃん。
助けない女性店員。
見守る俺。
下を向いて黙っている店内の客。
カオスだ。
ハラハラしてた俺は怒りに変わってしまう。
なぜ女性店員は助けない。
仕事を上手く覚えられないおじさんなんだ、君が助けないと店内の秩序が守られないんだぞ?
おじさんもそうだが、店内を守るのも仕事のうちだろう。
こんなことなら俺が助けてやりたい。
だが俺は飲食店でバイトの経験がないんだ。
こんな時になんで俺は役に立てない。
おじさんの焦る後ろ姿を見ることしかできないのか。
くそっ⋯⋯⋯でも俺の注文も早く来てほしいな。
「あ、ありがとうございました!」
「ったく、ちゃんとやれよ!」
捨て台詞を吐いて出ていくあんちゃん。
何とかおじさんは操作を思い出したんだろう。
現金、間違ってないといいね。
ホッとしたのもつかの間、出来上がった物を捌くおじさん。
そしてついに俺の所へ来てくれたんだ。
ありがとうおじさん、待ってたよおじさん。
額に汗をかき、必死な顔で俺のところへ来てくれてありがとう。
じゃあ注文するね!
「お待たせしました!」
「ネギたま牛丼の特盛と豚汁とサラダでお願いします」
「ネギたま牛丼特盛、豚汁、サラダ、ですね!かしこまりました!」
そうそう、しっかり確認、大丈夫だよね、特盛だよね?大盛りと間違えてないよね?
そんな心配しなくていいよね?
そう願いながら俺はおじさんの後ろ姿を見つめていた。
そこからは穏やかだった。
俺の注文が届く。
おじさんがちゃんとネギたま牛丼特盛と豚汁とサラダをお盆に乗せて持ってきてくれたんだ。
ありがとうおじさん。
美味しく頂くよ。
「あっ、麦茶が⋯⋯⋯お待ちください!」
そんな気を使わなくていいんだよ、おじさん頑張ってね。
でも右手に握ってたレシート置いてけばいいのに。
ん?違和感が⋯⋯⋯
「麦茶お待たせしました!」
「ありがとうございます」
そしておじさんの右手にはレシートは存在していなかった。
おじさんんんんんんんんん!
それだよそれ!
さっきのあんちゃんもそれだ!
どこ行ったのレシート!
変な気を使うからあぁぁぁぁ⋯⋯⋯⋯
でも俺は性格が悪いんだ。
この後どうなるか知りたくて、レシートのことは指摘しなかったんだ。
俺の高速で回転する脳は、答えを導き出したんだ。
教えない方が面白いと。
やなやつぅぅぅぅ。
そんなやな奴全開な俺は、美味しく牛丼を頂きながらおじさん見ている。
なんでか?
はは、サラダと豚汁よりも美味しいおかず過ぎてな!
どんどん注文を捌くおじさん。
調子出てきたんかね。
「持ち帰りの注文出来たんでお願いします!」
またまた厨房からの指示が飛ぶ。
おじさんに休まる時はないんだ。
動けおじさん、頑張れおじさん。
「牛丼並をふたつと、サラダのお持ち帰りの方、お待たせしました!」
その声で待っていた女性が注文を受け取った。
「箸とか紅しょうがを貰ってもいいですか?」
おいおい、おじさんがそんなこと言われたら対応できるかわからんだろう。
レジの横に備え付けられてるのがない、だから聞いた。
ということは補充してないわけだ。
そこまで気が回らないし、そもそもおじさんはそんなこと出来ないんだ。
君もおじさんのヤンチャなあんちゃんと女性店員とのやり取りを見てたであろう。
なぜそんなことを言うんだ。
やめてあげなさい。
でも面白いからナイスだぞ。
「えっとお箸は⋯⋯⋯あ、こちらですね、何膳おつけしましょうか!2膳、はいこちらです!紅しょうが⋯紅しょうが⋯あれぇ、紅しょうがは⋯⋯⋯⋯」
ほら見ろ、探せないじゃないか。
イレギュラーなことに対応できたら、その歳で牛丼チェーン店でバイトなんかしてないんだよ。
恐らく何かあっての今、なんだろう。
そんなおじさんが紅しょうがの場所なんて⋯⋯⋯
「あ、こちらの入れ物に紅しょうが入れちゃってください!そうしたら持って帰れますので!」
おじさんんんんんんん!
それ卵!生卵入れる容器!
ナイスな咄嗟の判断だと思ったろ!
いい笑顔しやがって!
危うく牛丼吹き出すとこだったぞ!
やるなおじさん!
しかも君!しっかりテーブルに置いてある容器の中から紅しょうが詰めてるんじゃないよ!
ナイスすぎるぞお前ら!
ふう、別の意味でもお腹いっぱいだぜ。
なんて楽しい牛丼チェーン店なんだ。
さてと、レシートも来ないことだし、どうやっておじさんと絡もうかなぁ。
ワクワクが止まんないぜ!
せっかくおじさんが入れてくれた麦茶だ。
これもしっかり頂こう。
うむ、うまし!
俺は席を立ち、レジの前に立った。
目の前には女性店員。
おじさん⋯⋯⋯どこ?
「お待たせ致しました」
笑顔で俺の対応をする女性店員。
さっきまでの怒声はどこへ?
それよりもおじさんは何処?
「レシートがなくて⋯⋯⋯」
さっきおじさんは分からなくて右往左往しまくりだったことの再現か?
起こるのか?
君もやっちゃうの⋯⋯⋯⋯
「はい、〇〇円になります」
ですよね、テーブル番号とかで即分かりますよね。
えっと、何故それをさっきすぐにおじさんに教えてくれなかったんだ?
そうしたらおじさんも無駄に焦ることもなかったし、店内の秩序も保たれたじゃないか。
ふつふつと怒りがまたまた込み上げる。
だが俺が怒ることじゃない。
ここはご馳走様と言い、サッと去るのが大人ってもんだろう。
だが、だがしかし!
おじさん────
「えっとね、仕事が出来ないおじさんだとしても、あの時は教えないと店内がザワつくと思うんです。だからもう少し優しくしてあげてくださいね」
そう、俺もおじさんだから。
ふぅ、言ってしまったな。
だが後悔はない。
余計なお世話だったろう。
でもおじさんは頑張ってたんだ。
このくらい言ってもいいんじゃないかな。
まぁいい、次に会えたらまた応援しよう。
それから何度足を運んでも、おじさんには会えなかった。
fin.実話です
みんながすーきすーき、すっきでーす、な牛丼を食べたくなる。
俺は数ある食事の中では牛丼が大好きだ。
そんな牛丼を1週間に一度は食べたくなる。
本当は好きですな牛丼チェーン店より、松な牛めしを提供してくれるチェーン店の方が好きだ。
しかし家から自転車でサクッと行ける距離にあるのは当時はそこしか無かった。
話は逸れるがみんなはどんな牛丼の食べ方が好きだ?
マストな食べ方は人それぞれだろう。
もしこれだ!ってのがあったら是非教えて欲しい。
俺の?聞きたいのか?
はは、聞かせてやろう。
松な牛丼、もとい牛めしの食べ方なんだがな。
サイズはなんでもいい。
まずは牛めしと生卵を頼む。
卵を割り、その中にテーブルに予め置いてある、そう、ポン酢をぶち込む。
どのくらいの量かって?
そんなの好きなだけ入れればいい。
ポン酢を入れたら親の仇かってくらいかき回せ。
牛丼の上から回すように溶き卵をかける。
ここでさらに、そう!またポン酢だ。
またまたポン酢をまわしかける。
どのくらいの量かって?
そんなの自分で決めやがれ。
うむ、うまし!
脱線したな。
では本題に入ろう。
某牛丼チェーン店で起こった俺の体験談を聞いてくれ。
この話はもはやコントだ。
どうせなら身振り手振りでみんなに話したい。
だが文字でここは我慢して欲しい。
それではコント牛丼屋、お楽しみください。
ふぅ、今日も牛丼食べるか~大盛りか特盛か~うーん、まぁ座ってから決めるかな。
自動ドアの前に立ち、開いた所で店内へ。
いつものように1歩足を踏み入れる。
通い慣れた牛丼屋だ。
なんてことはない。
直前までは何を食べるかしか俺は考えていない。
なのになんだ、雰囲気がいつもと違う。
俺は状況を確認するためにざっと店内を見渡した。
入口から目の前はレジ、そこからU時型のカウンター席。
向かって右手にはテーブル席だ。
カウンター席にはまばらに数人が座っている。
そして2人席にはちょいとヤンチャそうなあんちゃんだ。
奥の四人席が複数空いているのが目に入る。
カウンター席に座るより、何故か俺はテーブル席を選択した。
俺の席からはカウンター席が一望でき、カウンター席の奥には厨房だ。
なんだろうか、店内の空気がおかしい。
まぁ気の所為だろうと流し、商品を選んでいく。
たしか当時はまだタブレットではなかった。
俺はメニュー表を見て商品を選んでいく。
ここで俺は異変に気付いた。
いつもは座ったらすぐ出てくる麦茶が来ない。
忙しいんだろうとそのことは頭の片隅から外へと出ていった。
チーズ牛丼、ネギたま牛丼、キムチ牛丼、何にするかなぁと思い視線を走らす。
今日はネギたま特盛だな!
豚汁とサラダもいっちゃいますか~なんて思い店員さんを呼ぼうかなと視線をカウンター席の方へと移す。
ん?なんだ?
「山田さん!味噌汁作って!まだサラダも出てませんよ!牛丼並できてます!」
厨房から女性店員の怒鳴るような声が聞こえる。
その声で焦った顔をし、カウンターの間の職員スペースを右往左往する50代も後半であろうおじさんが見えた。
なんだ?何が起きてる?
おじさんは女性店員の指示をこなすことに必死だ。
だがなんだ、動きに無駄が多い。
「ええっと、これは⋯⋯サラダはどこだ⋯この牛丼はどこの人の⋯⋯」
うむ、とても焦ってらっしゃるじゃないか。
焦らなくてもいいのに。
それに女性店員さんもそんなに追い込まなくてもいいのに。
そう思いながら俺はおじさんの動きを目で追うので必死だ。
だからだろう、俺の注文を取りに来てくれない。
そんなおじさんだ、長い目で見てやらんとな。
右往左往するおじさん観察をしながら俺は注文を取りに来てくれるのを待つ。
その間にもお客さんは入ってくる。
カウンターに座る人、テイクアウトを注文する人。
こんなのおじさん捌けるのかね。
心配しながら俺はおじさんを見守った。
でも注文早く取りに来てくれないかな⋯⋯⋯
その時、俺の視界に動く人物を捉えた。
ヤンチャなあんちゃんだ。
食べ終わったんだろう、レジの前に立っていた。
呼び鈴を鳴らすあんちゃん。
焦ってレジに向かうおじさん。
レジの前に立ち、さらに焦っているおじさん。
どうした、何があった?
俺はもう自分の注文どころじゃない。
焦るおじさんとイライラしているヤンチャなあんちゃんに釘付けだ。
「なにしてんだ、早くしろよ」
「はい、ただいま!えっと、これかな、どうやるんだっけ、えっと⋯⋯」
なんだ?レシートを確認して、何食べたか打てばいいじゃないか。
何をそんなに戸惑う?
あんちゃんがブチ切れ寸前でレジのカウンターを指でトントンしてるぞ。
頑張っておじさん。
店内の平和はおじさんにかかってるんだ。
「おっせーな!牛丼大盛りとサラダと味噌汁だって言ってんだろ!」
「は、はいぃ!今すぐやりますのでぇ!えっとえっと、これじゃなくてぇぇ、どれだったかなぁ」
ほら、ついにブチ切れたぞあんちゃんが。
焦るなおじさん、分からない時は聞けばいいんだ。
店内には厨房にも店員さんがいるんだ。
俺の願いが通じたのだろう。
おじさんが動いた!
「す、すいません、レシートがなくなったみたいで、あの、どうしたらいい⋯⋯」
「前に教えましたよね、やってください。次の出来上がってますから、早くしてください」
一刀両断だ。
取り付く島もないのか?
1回教えたからやれ?なんてシビアなんだ。
ここはなんだ、おじさんに厳しい世界か?
走ってレジ前に戻るおじさん。
怒鳴るあんちゃん。
助けない女性店員。
見守る俺。
下を向いて黙っている店内の客。
カオスだ。
ハラハラしてた俺は怒りに変わってしまう。
なぜ女性店員は助けない。
仕事を上手く覚えられないおじさんなんだ、君が助けないと店内の秩序が守られないんだぞ?
おじさんもそうだが、店内を守るのも仕事のうちだろう。
こんなことなら俺が助けてやりたい。
だが俺は飲食店でバイトの経験がないんだ。
こんな時になんで俺は役に立てない。
おじさんの焦る後ろ姿を見ることしかできないのか。
くそっ⋯⋯⋯でも俺の注文も早く来てほしいな。
「あ、ありがとうございました!」
「ったく、ちゃんとやれよ!」
捨て台詞を吐いて出ていくあんちゃん。
何とかおじさんは操作を思い出したんだろう。
現金、間違ってないといいね。
ホッとしたのもつかの間、出来上がった物を捌くおじさん。
そしてついに俺の所へ来てくれたんだ。
ありがとうおじさん、待ってたよおじさん。
額に汗をかき、必死な顔で俺のところへ来てくれてありがとう。
じゃあ注文するね!
「お待たせしました!」
「ネギたま牛丼の特盛と豚汁とサラダでお願いします」
「ネギたま牛丼特盛、豚汁、サラダ、ですね!かしこまりました!」
そうそう、しっかり確認、大丈夫だよね、特盛だよね?大盛りと間違えてないよね?
そんな心配しなくていいよね?
そう願いながら俺はおじさんの後ろ姿を見つめていた。
そこからは穏やかだった。
俺の注文が届く。
おじさんがちゃんとネギたま牛丼特盛と豚汁とサラダをお盆に乗せて持ってきてくれたんだ。
ありがとうおじさん。
美味しく頂くよ。
「あっ、麦茶が⋯⋯⋯お待ちください!」
そんな気を使わなくていいんだよ、おじさん頑張ってね。
でも右手に握ってたレシート置いてけばいいのに。
ん?違和感が⋯⋯⋯
「麦茶お待たせしました!」
「ありがとうございます」
そしておじさんの右手にはレシートは存在していなかった。
おじさんんんんんんんんん!
それだよそれ!
さっきのあんちゃんもそれだ!
どこ行ったのレシート!
変な気を使うからあぁぁぁぁ⋯⋯⋯⋯
でも俺は性格が悪いんだ。
この後どうなるか知りたくて、レシートのことは指摘しなかったんだ。
俺の高速で回転する脳は、答えを導き出したんだ。
教えない方が面白いと。
やなやつぅぅぅぅ。
そんなやな奴全開な俺は、美味しく牛丼を頂きながらおじさん見ている。
なんでか?
はは、サラダと豚汁よりも美味しいおかず過ぎてな!
どんどん注文を捌くおじさん。
調子出てきたんかね。
「持ち帰りの注文出来たんでお願いします!」
またまた厨房からの指示が飛ぶ。
おじさんに休まる時はないんだ。
動けおじさん、頑張れおじさん。
「牛丼並をふたつと、サラダのお持ち帰りの方、お待たせしました!」
その声で待っていた女性が注文を受け取った。
「箸とか紅しょうがを貰ってもいいですか?」
おいおい、おじさんがそんなこと言われたら対応できるかわからんだろう。
レジの横に備え付けられてるのがない、だから聞いた。
ということは補充してないわけだ。
そこまで気が回らないし、そもそもおじさんはそんなこと出来ないんだ。
君もおじさんのヤンチャなあんちゃんと女性店員とのやり取りを見てたであろう。
なぜそんなことを言うんだ。
やめてあげなさい。
でも面白いからナイスだぞ。
「えっとお箸は⋯⋯⋯あ、こちらですね、何膳おつけしましょうか!2膳、はいこちらです!紅しょうが⋯紅しょうが⋯あれぇ、紅しょうがは⋯⋯⋯⋯」
ほら見ろ、探せないじゃないか。
イレギュラーなことに対応できたら、その歳で牛丼チェーン店でバイトなんかしてないんだよ。
恐らく何かあっての今、なんだろう。
そんなおじさんが紅しょうがの場所なんて⋯⋯⋯
「あ、こちらの入れ物に紅しょうが入れちゃってください!そうしたら持って帰れますので!」
おじさんんんんんんん!
それ卵!生卵入れる容器!
ナイスな咄嗟の判断だと思ったろ!
いい笑顔しやがって!
危うく牛丼吹き出すとこだったぞ!
やるなおじさん!
しかも君!しっかりテーブルに置いてある容器の中から紅しょうが詰めてるんじゃないよ!
ナイスすぎるぞお前ら!
ふう、別の意味でもお腹いっぱいだぜ。
なんて楽しい牛丼チェーン店なんだ。
さてと、レシートも来ないことだし、どうやっておじさんと絡もうかなぁ。
ワクワクが止まんないぜ!
せっかくおじさんが入れてくれた麦茶だ。
これもしっかり頂こう。
うむ、うまし!
俺は席を立ち、レジの前に立った。
目の前には女性店員。
おじさん⋯⋯⋯どこ?
「お待たせ致しました」
笑顔で俺の対応をする女性店員。
さっきまでの怒声はどこへ?
それよりもおじさんは何処?
「レシートがなくて⋯⋯⋯」
さっきおじさんは分からなくて右往左往しまくりだったことの再現か?
起こるのか?
君もやっちゃうの⋯⋯⋯⋯
「はい、〇〇円になります」
ですよね、テーブル番号とかで即分かりますよね。
えっと、何故それをさっきすぐにおじさんに教えてくれなかったんだ?
そうしたらおじさんも無駄に焦ることもなかったし、店内の秩序も保たれたじゃないか。
ふつふつと怒りがまたまた込み上げる。
だが俺が怒ることじゃない。
ここはご馳走様と言い、サッと去るのが大人ってもんだろう。
だが、だがしかし!
おじさん────
「えっとね、仕事が出来ないおじさんだとしても、あの時は教えないと店内がザワつくと思うんです。だからもう少し優しくしてあげてくださいね」
そう、俺もおじさんだから。
ふぅ、言ってしまったな。
だが後悔はない。
余計なお世話だったろう。
でもおじさんは頑張ってたんだ。
このくらい言ってもいいんじゃないかな。
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それから何度足を運んでも、おじさんには会えなかった。
fin.実話です
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