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第二十一話「いきなりピロートーク!?」

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 恍惚の表情を浮かべながらヒクヒクと痙攣を続けるセルフィ。大丈夫かな?

「ありゅくぅ……しゅきぃ、しゅきしゅきぃ……」

 瞳の中にハートが見えんばかりの表情だ。実に可愛い。
 よしよしと撫でておく。

「えへへ……こんなの、はじめてぇ……」

 よほどよかったらしい。実に幸せそうな声を漏らす。

「凄かった……こんなの……もう戻れない」

 撫でる俺の手を掴み、手の甲にキスを繰り返す。
 快楽の余韻を手放したくないらしい。

「勇者様ぁ……」

 うっとりトロンと絡みつくように俺に抱きついてゴロゴロしだす。
 実に甘えん坊さんである。可愛らしいので、俺はしばらく彼女をじっくり愛でながら、好きにさせておくのだった。

 そして彼女を撫でたりキスをしたり、まったりとした幸せタイムを堪能すること数十分。
 彼女に腕枕しながらのピロートーク。
 雑談の途中で俺は決断したのだ。
 きちんと伝えておかねばなるまいと。

「ところでさ」
「うん」
「こんな時に言うべきじゃないのかもしれないけど……」
「?」
「実は俺、もう彼女がいるんだ」

 フィルナのことを伝えることにする。
 いづれバレるからね。

「それで?」

 きょとんとした顔で、それが何? って感じの顔をするセルフィさん。

「まぁ、そうだと思ってた」

 あれ? 意外。怒らない?

「手なれてたから」

 まぁ、それはほとんどスキルのせいだったりするんですけどね。

「私は別に、二号さんでもかまわない」

 二号さん。つまり愛人ポジか。
 それでいいのか?
 っていうか、疑問に思っていたことを口にしてみる。

「この世界ってさ」
「うん」
「結婚制度とかってどうなってるの?」
「?」

 彼女は首をこてりと傾げる。

「あぁ、実は俺……」

 どうしてそんな当たり前のこと知らないの? って顔をしていたので、とりあえず俺が異世界転生者で生まれたばかりであることを素直にゲロった。
 召喚されて幽閉されて逃げてきて、そしてこの世界のことを何も知らないってことを。

「なにそれ、酷い」

 幽閉された辺りで同情してもらえた。

「なるほど。そういうことなら……」

 彼女は説明してくれた。
 この世界の結婚制度や性のモラルについて。

 まず、この世界は一夫多妻制は普通であるらしい。だが――。

「ただし帝国ではタブー。教義的にアウト」

 とのこと。
 参ったな。帝国は一夫一妻制か。フィルナが怒らないといいけど。

「ところで、その人は人間?」
「え?」
「ドワーフとエルフ、小人族ならワンチャンある」

 なんでも帝国は周囲にある多種族の国を攻めて統一支配して領土を広げているらしい。
 そのため隷属させられているいくつもの別種族がいるのだそうな。
 そして、教義は基本的に純粋な人間のためのもので、多種族はその文化を好んではいないのだという。

「で、人間?」

 俺はセルフィの問いに素直に答えた。

「ドワーフだね」

 実は偽装を与えた際にフィルナのステータスプレートを見せてもらっていたのだけど、その種族の欄にはドワーフと書かれていたのだ。
 フィルナが中学生のような小柄な容姿をしているのもドワーフという種族が原因であるらしい。
 ちなみに年齢は二十歳を過ぎているとのこと。なんとお姉さんだ。

「なら大丈夫。ドワーフは一夫多妻。場合によっては多夫一妻もある」
「ほぅ」

 女王様の逆ハーレム的な?

「ちなみにエルフもそう。半獣人は種族による。魔族は基本、多夫多妻制」
「なるほど」

 実に豊富な知識である。それともこの世界では一般的な知識なのだろうか?

「小人族なんてもっとフリーダム。結婚制度そのものが無い」
「おぉぅ……」

 乱交し放題だね。

「そんな風に多様な状況から、最近の連邦内では平等に多夫多妻制にせよ、と呼びかける運動さえある」

 乱れてますなぁ。
 そんなんでいざ帝国に攻められた時とか大丈夫なのだろうか。

「ところで、帝国から逃げてきたってことは……」

 首輪を見てセルフィが暗に問う。

「うん、奴隷なんだ」

 魔族で帝国から、の時点で察していたのだろう。
 俺は素直に宿屋から受け取った奴隷単独外出用の手形を見せる。
 冒険者の酒場兼用の宿はこういったシステムがあって戦闘奴隷が一人で出歩いても大丈夫なように出来ているのだ。
 これで町中を身分証明無く武装して歩いても平気って訳。

「嫌いになった?」
「なるわけない。私が買い戻す」
「買い戻さなくても、俺の彼女がご主人様だから」
「そう、なら私が買い取って市民権を買う」

 実に頼もしい発言。惚れちゃいそう。もう惚れてるけどさ。
 ありがとう、とキスをすると、にへっと小さな微笑を浮かべるセルフィ。

「買えるの?」
「やり方次第」

 ふむふむ。ならばこれで偽造戸籍を買う必要は無くなったわけだ。

「どうすればいいの?」
「まずは本人が稼いで持ち主にお金を返す。そして許可をもらう。これで奴隷の身分は無くなる」

 なるほど、奴隷として買われた代金を稼いで返して許可がもらえればいい訳か。
 ん? 待てよ。俺は実際に奴隷として買われた訳じゃないから……。
 これ、すぐになんとかなるんじゃね?

「そのあとで教会に寄付金と届けを出して、出生メダルを発行してもらえば良い」

 ん? このシステムだと、奴隷のふりして国境抜けて他国の国籍手に入れ放題なのでは?
 いぶかしげな表情でもしてたのだろうか? 問わずとも俺の疑問にセルフィが答えてくれた。

「ちなみに偽装奴隷は重罪。バレたらやばい」
「おぉぅ……」
「そもそも奴隷の国境越えには入念な審査が必要。戦闘奴隷でもないと奴隷のふりして他国に入るとか無理」
「な、なるほどぉ」
「そして戦闘奴隷は冒険者として追跡が可能だから、何か悪さしててもすぐに捕まる」

 あれ? 詰んでね?

「ただ、帝国からの脱国の場合、連邦はそれを黙認してる」
「ほぅ?」
「スパイの危険性があるから要注意リストには入るけど、犯罪者でなければ大抵は受理される」

 ぐぇ……犯罪者なんだよなぁ。多分。

「……偽装奴隷なの?」
「実は……」

 全部ゲロることにした。
 もし裏切られそうなら支配して隷属させればいいし。
 そもそも彼女が裏切るとは思えない。
 甘い考えかもしれないけどね。
 今は少しでも味方が欲しい。

 フィルナが以外とポンコツだって判明したからな。
 我がパーティには頭脳班が必要だ。

「ん~……そういうことなら」

 賢そうなセルフィさんの出した答えとは――。

「偉業を一つでも達成して国賓になればいい」

 なんかとんでもない無茶振りだった。

「冒険者としていくつもの大きな功績をあげて、この国にとって必要な人物になればいい」
「それってかなり無理ゲーじゃない?」
「勇者様ならいける。大丈夫」
「本当に?」
「私は信じてる」

 俺の腕に腕を絡め、うっとりと目を細める。

「……俺と一緒にいると、辛い目にあうかもしれないよ?」
「わかってる」
「いつか後悔するかもしれない」
「かまわない」

 犯罪者として一緒に逃げることになるかもしれない。
 それなのに――。

「奴隷でもかまわない」

 その目はまっすぐに俺を見つめていた。

「犯罪者でもかまわない」

 信頼を通り越した愛を感じさせる強い瞳。

「好き……愛してる」

 逃すまいと俺をぎゅっと抱きしめて彼女は、

「もう放さない。私の勇者様。どこへなりとお供いたします」

 俺に忠誠を誓うのだった。


 そして、フィルナに彼女を合わせる時が来た。
 あれから数日が経過した。
 生理と疲労で床に伏せっている状態で合わせるのはなんとなく嫌な予感がしたので日を改めたのだ。

 そして、元気になったフィルナの下にセルフィを連れてきた。

「一人目の仲間です」

 う、なぜか敬語になってしまった。
 そんな俺を見てフィルナは、

「はぁ……」

 と溜息を吐いた。
 そして、

「いつかこうなるんじゃないか、って気はしてたんだ」

 じっとりとした目で俺を見る。

「まぁアルクは格好いいからしょうがないよね」

 セルフィを見て、そして俺を見る。

「ボクだけで独り占めするなんて、さすがに、ね」

 とは言いつつも。潤んだ瞳で俺をじっと見て、腕を絡めてくる。

「でも、ボクのこと、ポイしないでね」

 彼女の温もりを腕で感じながら、

「そんなことするわけないだろ。愛してるよ。フィルナ」

 口づけで彼女の不安を解消する。

「ん……なら、大丈夫」

 ぎゅっと俺を抱きしめるフィルナ。
 そんな姿を見て、

「私は捨てられても離れない」

 対抗心でも燃やしたのか、俺のもう片方の腕に腕を絡め、セルフィもなんか宣言をはじめる。

「どこまでも追いかける」

 こちらはこちらで愛が重い。

「迷惑って言われても離れない。ご奉仕する。例え地の果てまでも」

 よしよしと、解放された側の腕でセルフィを撫でる。

「むぅ……ボクも」

 よしよしとフィルナも撫でる。

「私も……」

 目を瞑ってキスをねだるセルフィ。

「よしよし」

 唇に唇を軽く合わせ、ちょこんと口づけを交わす。

 両手に花。
 俺のセカンドライフは、今まさに最高潮クライマックスを迎えようとしていた。


 その後軽く三人で自己紹介をした。

 冒険者をするなら最低でも四人以上が理想だろう。

「さて、残る仲間は一人かな」

 二人に尋ねると。

「別に男でもいいんだからねっ」

 フィルナに釘を刺されてしまった。
 けっこう嫉妬深いフィルナなのであった。

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