【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ

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追放

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 トラス伯爵はサリーからもう一部、写しを貰い、握りしめながら邸に戻った。前妻は侯爵令嬢だったこともあり、気位の高い、気の強い女性だった。グリズナーは違うと思っていたが、私に見せる顔だけではなかったようだ。聞くことは出来なかったが、妃殿下はどんな気持ちで聞いていたのだろうか。

 自身の父親は亡くなっているが、別邸で暮らしている母親にも話に行くと、同じ女性として軽蔑する、顔も見たくない、子どもたちは私も面倒を看るから、あなたは家を守るように言われ、本邸に戻ることになった。

「君は母と代わりに別邸に移動して貰う、反省して生きていくように」
「…っはい、承知しました」
「このまま向かいなさい、必要なものは後で届けさせる」

 グリズナーは大人しく、別邸に移動した。娘は三歳、息子もまだ十歳、グリズナーは悪いことをしたので、謹慎となったため別邸で暮らす。詳しいことは理解できるくらい大きくなったら、全て話すと告げた。娘は泣き出すかと思ったが、分かったと言ってケロッとしており、驚いたほどだった。

 どうやら兄である息子は何か起きていると察していたようで、娘の手をぎゅっと握っていた。兄と妹の関係が良くて安心した。

 そしてグリズナーの両親には説明より前に、まず黙ってこちらに目を通してくださいと、妃殿下への発言を先に読ませた。不思議そうな顔をしていたが、読み進めると二人とも同じように眉間に皺を寄せていた。

「酷い言葉だとは思いませんか?全て、グリズナーのサリー・ペルガメント侯爵令嬢、そしてサリー王太子妃殿下への発言です」
「っな、何ですと…私たちは知らない、こんなことを言っていたなど知らなかった」

 義母は目を見開き、言葉を失っていた。全く関係ない者でも、まさに不愉快でしかない言葉の羅列のようなものだ。

「そこにあるように相応しいという発言をしたために、王太子妃殿下は代理に指名されました。ですが、殿下から閨の教育の担当の契約違反で、王家の催しに参加させないと通達が来ました」
「本当に知らなかったのです、ペルガメント侯爵からも王家からも何も言われておりません」

 娘がこんな発言をしていたならば、侯爵家でも、王家からでも、お咎めがあってもいいはずだ。しかし、そのようなものはなかかった。

「そうでしたか、何も言われていないから問題がないというわけではないでしょう。私も何も知りませんでした。ですが、追放は変わりません。私の妻は追放され、あなた方の娘は追放されたと理解した上で行動してください」
「私たちもですか」
「当たり前です、殿下から連帯責任となりました」
「事実なのですか」
「妃殿下の記憶力はご存知ですよね?嘘を付いても何の得にもならないことも。それとも私にこの一緒にいた人物に確認を取れと言うのですか?恥ずかしくて、出来ません。代わりにやってくれるのであれば、調査してください」
「そ、それは…」
「私はこれを妃殿下に渡されたのです。目の前でこれを読む辛さが分かりますか?閨の教育の担当ではなく、まるで分別のない、頭の悪い娼婦です」

 トラス伯爵が王太子夫妻の前ではのみ込んだ言葉だったが、義両親にはしっかり目を見つめて告げた。

「これは、その通りだと思います。まさか、こんなことを言う娘だということすら、知りませんでした。閨の教育のことも、事後報告だったのです。先に聞いていたら、私は反対しました。それなのに、あの子は立派なお役目だと言いながら、こんな発言をしていたなんて。何て罰当たりで愚かなことでしょう、これは私たちの責任です」

 義母は潔く受け止めたようで、トラス伯爵の目をしっかり見つめて言い切った。

「息子にもきちんと伝えます。ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」

 子爵家は既にグリズナーの弟が継いでいる。弟も何も知らなかったかもしれないが、知らなかったから関係ないとは言えはしない。

「見張ることが罰だとされました」
「はい、表に出していたことが恥ずかしくてなりません。我儘を言うようなら、こちらで幽閉しても構いません。ねえ、あなた」
「ああ、そうだな」
「とりあえず、こちらで様子を見ます。酷いようならお任せするかもしれません」

 義両親は元々常識のある、人のいい人たちだった。一気に老け込んだ顔で、項垂れており、関与しているとは考えていなかった。何か言われればこちらを読めば黙るでしょうと、写しを渡して帰った。

 私も見る目がないが、王家も教育の担当の人選ミスだとしか言いようがない。
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