【完結】愛とは呼ばせない

野村にれ

文字の大きさ
43 / 203

不快1

 翌日、ミアローズ・エモンドから読み始めたのが間違いだったのか、さすがに食欲がなかったので、軽い朝食しか食べていないはずのに、脂っぽい物を食べ過ぎたような胸やけがする。リール殿下もクリコットも腹部を擦りながら、読み進めている。

 ミアローズに関しては、腐ってもというよりは腐りきっている公爵令嬢ではあるが、爵位は上なので、サリーも我慢するしかなかっただろう。

 『今日も華やかさに欠けるのではなくて?まあ、私と違って、元々ないものは出せないものね。お可哀想だこと』
 『私は女性の最高峰なの、あなたでは誰も付いて来ないわ』
 『女性は愛されて美しくなるって言うけど、私は愛されてもっと美しくなるの』
 『リールに求められるのも時間の問題ね、私って美しいでしょう?まるで物語のお姫様じゃない?あなたもそう思うでしょう?』

 期待を裏切らない自分がどれだけ美しく、男性にどれだけ求められているかという傲慢な発言に、サリーを見下し、しかもルアンナ以上に同じようなことしか言っていない。語尾が違うだけで、全く同じ発言だったくらいだ。

 なぜ自身ではなく、サリーが王太子妃なのかと、リールへ好意があるわけではなく、王太子妃への執着からの発言が多いが、興奮剤を盛って、現実を知った後は分かり易く一切なくなっている。ゆえに王太子妃になったサリーへの発言はない。

「クソローズ・エモンドに改名させるか」
「良いですね!クソローズ・エロモンドは公爵邸所有の邸で、色狂いに励んでいるそうですよ」
「エロモンド…」
「真実を流させますか」
「ああ、離縁したのだから、もういいよな?そうしてくれるか」

 ミアローズが色狂いであることを知ったのは、リカス・マーラ侯爵と結婚した後であった。巧妙に隠していたが、事件後に公爵邸には監視も込めて、息の掛かった者を潜り込ませており、そこから別の邸での証言を得ていた。

「はい。使用人の安全の対策を取って、流させます」
「後は出て来るまでは、話にならないから、放って置くのがいいな」

 マリーズ・ヒルダは、見た目も性格も、何か特別目立つような質ではなかった。ただあまり裕福ではない男爵家の令嬢ということもあり、自立心の強い、向上心の高い女性なのだと思っていた。

 ただ、いずれ別れが来るのだから、恋人のように過ごしたいと言い出したことがあり、いかに想い合っているという発言ばかりだ。

 『殿下は毎回、会う度に好きだ、可愛い、愛していると恥ずかしげもなくおっしゃるのよ、こちらが照れてしまうのよ』
 『殿下には愛を持って出会った私が、相応しいと思うの。そうでしょう?今ね、養女にしてくれる高位貴族を探してくれているのよ』
 『殿下は私を壊れ易いもののように優しく触れるの。私のことが大事なんだなって実感するのよ』
 『愛しあっているのに一緒にはなれないって、一番の不幸かもしれないわね』

「マリーズは嘘ばかりじゃないか!好きだ、愛しているなどと言ったこともない。甦らせて、罰したいくらいだ」
「…悲劇の恋人気分ですね」
「しかも、詐欺師になっていたとは」
「ええ、留学が出来なくなったと言って、お金を巻き上げていたようですね。そして支払いのために、娼婦に身を落とした、自業自得です」
「私にも国を離れると言っていた、お金は渡していないぞ」

 楽しいや嬉しい、もしかしたら可愛いくらいは言ったことはあったかもしれないが、『好きだ』『愛してる』などと、一度も言った憶えはない。養女の件も初めて聞いた、既に詐欺師の虚言癖があったのだろう。

 しかも『一緒になるには死を選ぶしかないのかしら』とまで言っており、ミアローズのように自身の自慢の方がまだ良かったかもしれない。サリーがどんな気持ちだったかと思うと、精神的に参る。

 マリーズの束に男性たちに詐欺で訴えられた記事もあり、親にも縁を切られ、自身で返すしかなく、返済できないまま亡くなったようだ。

 王太子妃となったサリーとはおそらく会ってもおらず、発言は学園のみであった。

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

妹に奪われた婚約者は、私を壊す災厄でした

あう
恋愛
伯爵家の長女セレナは、侯爵令息の婚約者として家を支え、妹のわがままにも耐え続けてきた。 しかし妹ミレイユは、“可哀想な妹”を演じて姉の婚約者を奪い、ついに婚約破棄へ持ち込んでしまう。 すべてを奪われた――そう思われたセレナだったが、伯爵家を離れたことで見えてきたのは、自分を縛っていた歪な家族と婚約の真実だった。 そして、奪ったはずの妹のほうもまた、望んだ未来とは違う現実へ追い詰められていく。 奪い返さない。縋らない。 静かに手放した令嬢が、自分の人生を取り戻していくざまぁ恋愛譚。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

旦那様から出て行ってほしいと言われたのでその通りにしたら、今になって後悔の手紙が届きました

伊久留りさ
恋愛
 北辺の国境を守る小さな領地、ヴァルドリア。その城館の一室で、若き領主の妻アリシアは、夫レオンハルトの言葉に静かに耳を傾けていた。 「アリシア、君にはもう少し、この城から離れてもらいたい」  レオンハルトの声は、いつものように低く、落ち着いていた。しかし、その言葉の意味は、アリシアにとってあまりにも唐突で、あまりにも冷たいものだった。 「……離れる、とはどういう意味でございますか」 「つまり、この城にいないでほしい、ということだ。しばらくの間、君には別の場所で暮らしてもらいたい」  アリシアは、ゆっくりと目を閉じた。指先がわずかに震えるのを、彼女は必死に抑えていた。この男の前で、自分が動揺している姿を見せたくなかったからだ。

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・