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齟齬
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「それは…でも、エンバーが支えることは出来ます」
「うーん、聞いてみるが、難しいと思って欲しい」
「エンバーはメリーナ嬢に、相応しい相手になるために努力したのです」
「そうか、うん、それはありがたい話だが…話はしてみよう」
「よろしくお願いいたします」
スペンサ侯爵はメリーナに、エンバーとの婚約の話をすることにした。
これがメリーナがエンバーに好意を持っていれば話は違うのだが、父親から見ても、好意を持っているように見えたことは一度もなかった。
「エンバーから婚約したいという話が来ている」
「エンバー様は成績もよく、令嬢たちからも人気があるのですよ。私では勿体ない相手でございます」
メリーナと違って、エンバーは見た目も良い方で、成績は上位であり、嫁ぎたい令嬢には爵位の問題があるが、婿には行って貰うには申し分ない相手となっている。
「だが、それなら支えて貰ってもいいのではないか」
「そのようなことをすれば、当主が無能だからと思われて、スペンサ侯爵家にも迷惑が掛かりますわ」
「だが、エンバーはメリーナのために努力をしたそうだぞ?」
「努力したことは、今は私のためだったとしても、無駄にはならないのではありませんか」
「それはそうだが」
エンバーの人柄も知っており、娘と婚約したいために努力したと言われれば、どうにかしてやりたいところではあったが、メリーナの考えも間違っていない。
「お断りしてください、私はどこか利のある相手に嫁ぎたいのです」
「うーん」
礼儀なマナーは合格を貰っているが、家庭教師が本格的についた頃から、勉強は振るわず、メリーナはこれでは当主は務まらないと言うようになった。
努力していないのなら、やりなさいと言えるが、遅い時間まで机に向かっている娘に、もう休みなさいという以外掛ける言葉がなかった。
「ハイラード伯爵家には叔母様が嫁いで、ご子息が御継ぎになるのでしょう?」
「そうだな」
「でしたら、もう縁を繋いでも利があるとは思えません。勉強は出来ませんが、社交をして、お役に立てるような方と結婚いたします。私に当主は無理ですから…」
「分かった」
エンバーとの婚約は、スペンサ侯爵によって断られることになった。
「すまないが、メリーナはやはり嫁ぎたいと言っておってな」
「支えることは」
「そうなれば、当主が無能だと思われるだけだと、エンバーなら大事にしてくれるとは分かっているが、あの子が劣等感を抱えたままになるのも、忍びないのだよ」
「それは」
エンバーが努力しなければ良かったことは絶対ないが、メリーナにとって劣等感を抱く存在になってしまったのは、誤算であった。
「エンバーならいい相手が見付かるだろう」
「分かりました」
逆だったら何か支えに、それこそ礼儀などはしっかりしているのだから、問題はなかったかもしれないが、爵位を継ぐのはメリーナであるために叶わない。
エンバーが騎士爵、男爵などにもしなっても、そうなると侯爵家の令嬢を娶ることは難しい。
可哀想だが、エンバーには事実を話すしかない。
「スペンサ侯爵家から婚約は断られた」
「そんな…」
「やはり、メリーナ嬢は嫁ぎたいとおっしゃっているようでね」
「それは…私では支えらないと思われているのですか」
「そうじゃない、メリーナ嬢は勉強が振るわないことに劣等感を抱いてらっしゃる、だから自分が当主になっても、馬鹿にされることを心配されている」
「そんなこと、私がさせません」
エンバーなら守ることは出来るだろうが、劣等感は拭えるだろうか。
「うーん、聞いてみるが、難しいと思って欲しい」
「エンバーはメリーナ嬢に、相応しい相手になるために努力したのです」
「そうか、うん、それはありがたい話だが…話はしてみよう」
「よろしくお願いいたします」
スペンサ侯爵はメリーナに、エンバーとの婚約の話をすることにした。
これがメリーナがエンバーに好意を持っていれば話は違うのだが、父親から見ても、好意を持っているように見えたことは一度もなかった。
「エンバーから婚約したいという話が来ている」
「エンバー様は成績もよく、令嬢たちからも人気があるのですよ。私では勿体ない相手でございます」
メリーナと違って、エンバーは見た目も良い方で、成績は上位であり、嫁ぎたい令嬢には爵位の問題があるが、婿には行って貰うには申し分ない相手となっている。
「だが、それなら支えて貰ってもいいのではないか」
「そのようなことをすれば、当主が無能だからと思われて、スペンサ侯爵家にも迷惑が掛かりますわ」
「だが、エンバーはメリーナのために努力をしたそうだぞ?」
「努力したことは、今は私のためだったとしても、無駄にはならないのではありませんか」
「それはそうだが」
エンバーの人柄も知っており、娘と婚約したいために努力したと言われれば、どうにかしてやりたいところではあったが、メリーナの考えも間違っていない。
「お断りしてください、私はどこか利のある相手に嫁ぎたいのです」
「うーん」
礼儀なマナーは合格を貰っているが、家庭教師が本格的についた頃から、勉強は振るわず、メリーナはこれでは当主は務まらないと言うようになった。
努力していないのなら、やりなさいと言えるが、遅い時間まで机に向かっている娘に、もう休みなさいという以外掛ける言葉がなかった。
「ハイラード伯爵家には叔母様が嫁いで、ご子息が御継ぎになるのでしょう?」
「そうだな」
「でしたら、もう縁を繋いでも利があるとは思えません。勉強は出来ませんが、社交をして、お役に立てるような方と結婚いたします。私に当主は無理ですから…」
「分かった」
エンバーとの婚約は、スペンサ侯爵によって断られることになった。
「すまないが、メリーナはやはり嫁ぎたいと言っておってな」
「支えることは」
「そうなれば、当主が無能だと思われるだけだと、エンバーなら大事にしてくれるとは分かっているが、あの子が劣等感を抱えたままになるのも、忍びないのだよ」
「それは」
エンバーが努力しなければ良かったことは絶対ないが、メリーナにとって劣等感を抱く存在になってしまったのは、誤算であった。
「エンバーならいい相手が見付かるだろう」
「分かりました」
逆だったら何か支えに、それこそ礼儀などはしっかりしているのだから、問題はなかったかもしれないが、爵位を継ぐのはメリーナであるために叶わない。
エンバーが騎士爵、男爵などにもしなっても、そうなると侯爵家の令嬢を娶ることは難しい。
可哀想だが、エンバーには事実を話すしかない。
「スペンサ侯爵家から婚約は断られた」
「そんな…」
「やはり、メリーナ嬢は嫁ぎたいとおっしゃっているようでね」
「それは…私では支えらないと思われているのですか」
「そうじゃない、メリーナ嬢は勉強が振るわないことに劣等感を抱いてらっしゃる、だから自分が当主になっても、馬鹿にされることを心配されている」
「そんなこと、私がさせません」
エンバーなら守ることは出来るだろうが、劣等感は拭えるだろうか。
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