39 / 44
亀川梨沙(ニホン)6
しおりを挟む
「塔子ちゃん」
「梨沙ちゃん」
「聞いたよ、ビックリした」
「だよね」
塔子は困ったように笑い、大きな決断だっただろうと思った。
梨沙は会社を辞めていなかったが、塔子は辞めることになった。どちらにせよ、道は違えていたのかなと思うくらいだった。
「悩んだの?」
「うーん、そうだね。でもいい話だとは思ってね」
「英語は?」
「……今、英会話教室に行っているの」
業務上必要なこともあったために、多少は話せるがという状態だった塔子と柏木は、取り急ぎで通うことになった。
「大変」
「辞めても、また連絡とか、来ることもあるだろうから、よろしくね」
「そっか、頑張ってね。向こうに行っても、連絡してもいい?」
「うん、時差?があるらしいから、メールとかだと有難いかな」
「そうだよね、メール送るね」
それから梨沙は塔子に会えば、別れを惜しむように、話をするようにしていた。
塔子は引き継ぎなどはあったが、チームで行っていたために、割り振りが変わることになって、指導をするくらいであった。
「彼氏とか友人とかご家族は?反対されなかった?」
「彼氏はいないし、友人は遊びに行くからって言ってくれてるよ。家族はね、前にも話したことあったかもしれないけど、あまり仲が良くなくてね」
「ああ、そうだった……ような」
梨沙はその話を聞いたのがいつだったか覚えておらず、曖昧に答えた。
「だから、家族のことは考えなくてもいいかなって感じ」
「そっか、色々あるもんね」
前の梨沙なら根掘り葉掘り聞いていたかもしれないが、余計なことをしないようにと思っていた。
それから行ったり来たりもしていたが、本格的に塔子が旅立って行き、梨沙は運命が変わったのではないかと、願わずにはいられなかった。
実は梨沙は戻る前の世界で、美也子と映美に会っていた。塔子から家族とは上手くいっていないと聞き、お金も渡している様子であったことを知っていた。
二人に会ったのは偶然だった。
お金をたかろうと、忙しいと捕まらない美也子と映美が会社の前で待っており、梨沙はたまたま声を掛けられた。
梨沙だったのは、同じくらいの年だと思われたのだろう。
『敷田塔子はまだ会社にいるかしら?』
『あっ、どうでしょうか』
『あなた、塔子とお知り合い?』
『まあ』
『あの子のは母親と、この子は妹なんだけど、話があるのに忙しい忙しいって、捕まらなくて、こんなところまで来させてもらったの』
これが姉と妹かと思ったが、何だか下品な顔をしているなと感じた。
詳しい時期は覚えていないが、塔子とは疎遠になり、何か評価されて、持ち上げられていたことも面白くなくて、仕返しをしたつもりであった。
『塔子ちゃんは忙しいですから、その分高給取りですからね。無理もありませんよ。羨ましい限りですよね、ご家族も自慢でしょう?』
その言葉に美也子と映美は、にやりとさらに下品に口角を上げた。
『まあ、そう。そうなのね』
『もう少し待ってみたらどうでしょうか』
『ええ、そうさせてもらいます』
またたかられるのだろうなと思ったが、困らされて、私の辛さを分かればいいとしか考えていなかった。その後、塔子がどうなったかは知らない。
疎遠になっていたので、会ったことを塔子に話すこともなかった。
梨沙にとっては些細なことで、塔子の友人が気になる男性と付き合い出したこと、隆二を特別におもっていたわけではないが、自分ではなく塔子が目当てであることも面白くなかったのである。
それから塔子のことを気にすることもなく、寿退社して、結婚が駄目になって生きていた。
だが、塔子が首を吊って、自殺をしたことをクリスマス・ナンバー制度に選ばれる八年前に、まだ会社にいる後輩が同期でしょうと連絡をしてくれたのである。
どうしてなのかと思わず聞いていた。
「梨沙ちゃん」
「聞いたよ、ビックリした」
「だよね」
塔子は困ったように笑い、大きな決断だっただろうと思った。
梨沙は会社を辞めていなかったが、塔子は辞めることになった。どちらにせよ、道は違えていたのかなと思うくらいだった。
「悩んだの?」
「うーん、そうだね。でもいい話だとは思ってね」
「英語は?」
「……今、英会話教室に行っているの」
業務上必要なこともあったために、多少は話せるがという状態だった塔子と柏木は、取り急ぎで通うことになった。
「大変」
「辞めても、また連絡とか、来ることもあるだろうから、よろしくね」
「そっか、頑張ってね。向こうに行っても、連絡してもいい?」
「うん、時差?があるらしいから、メールとかだと有難いかな」
「そうだよね、メール送るね」
それから梨沙は塔子に会えば、別れを惜しむように、話をするようにしていた。
塔子は引き継ぎなどはあったが、チームで行っていたために、割り振りが変わることになって、指導をするくらいであった。
「彼氏とか友人とかご家族は?反対されなかった?」
「彼氏はいないし、友人は遊びに行くからって言ってくれてるよ。家族はね、前にも話したことあったかもしれないけど、あまり仲が良くなくてね」
「ああ、そうだった……ような」
梨沙はその話を聞いたのがいつだったか覚えておらず、曖昧に答えた。
「だから、家族のことは考えなくてもいいかなって感じ」
「そっか、色々あるもんね」
前の梨沙なら根掘り葉掘り聞いていたかもしれないが、余計なことをしないようにと思っていた。
それから行ったり来たりもしていたが、本格的に塔子が旅立って行き、梨沙は運命が変わったのではないかと、願わずにはいられなかった。
実は梨沙は戻る前の世界で、美也子と映美に会っていた。塔子から家族とは上手くいっていないと聞き、お金も渡している様子であったことを知っていた。
二人に会ったのは偶然だった。
お金をたかろうと、忙しいと捕まらない美也子と映美が会社の前で待っており、梨沙はたまたま声を掛けられた。
梨沙だったのは、同じくらいの年だと思われたのだろう。
『敷田塔子はまだ会社にいるかしら?』
『あっ、どうでしょうか』
『あなた、塔子とお知り合い?』
『まあ』
『あの子のは母親と、この子は妹なんだけど、話があるのに忙しい忙しいって、捕まらなくて、こんなところまで来させてもらったの』
これが姉と妹かと思ったが、何だか下品な顔をしているなと感じた。
詳しい時期は覚えていないが、塔子とは疎遠になり、何か評価されて、持ち上げられていたことも面白くなくて、仕返しをしたつもりであった。
『塔子ちゃんは忙しいですから、その分高給取りですからね。無理もありませんよ。羨ましい限りですよね、ご家族も自慢でしょう?』
その言葉に美也子と映美は、にやりとさらに下品に口角を上げた。
『まあ、そう。そうなのね』
『もう少し待ってみたらどうでしょうか』
『ええ、そうさせてもらいます』
またたかられるのだろうなと思ったが、困らされて、私の辛さを分かればいいとしか考えていなかった。その後、塔子がどうなったかは知らない。
疎遠になっていたので、会ったことを塔子に話すこともなかった。
梨沙にとっては些細なことで、塔子の友人が気になる男性と付き合い出したこと、隆二を特別におもっていたわけではないが、自分ではなく塔子が目当てであることも面白くなかったのである。
それから塔子のことを気にすることもなく、寿退社して、結婚が駄目になって生きていた。
だが、塔子が首を吊って、自殺をしたことをクリスマス・ナンバー制度に選ばれる八年前に、まだ会社にいる後輩が同期でしょうと連絡をしてくれたのである。
どうしてなのかと思わず聞いていた。
448
あなたにおすすめの小説
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
皇帝の命令で、側室となった私の運命
佐藤 美奈
恋愛
フリード皇太子との密会の後、去り行くアイラ令嬢をアーノルド皇帝陛下が一目見て見初められた。そして、その日のうちに側室として召し上げられた。フリード皇太子とアイラ公爵令嬢は幼馴染で婚約をしている。
自分の婚約者を取られたフリードは、アーノルドに抗議をした。
「父上には数多くの側室がいるのに、息子の婚約者にまで手を出すつもりですか!」
「美しいアイラが気に入った。息子でも渡したくない。我が皇帝である限り、何もかもは我のものだ!」
その言葉に、フリードは言葉を失った。立ち尽くし、その無慈悲さに心を打ちひしがれた。
魔法、ファンタジー、異世界要素もあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる