【完結】クリスマス・ナンバー・ナイト

野村にれ

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亀川梨沙(ニホン)6

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「塔子ちゃん」
「梨沙ちゃん」
「聞いたよ、ビックリした」
「だよね」

 塔子は困ったように笑い、大きな決断だっただろうと思った。

 梨沙は会社を辞めていなかったが、塔子は辞めることになった。どちらにせよ、道は違えていたのかなと思うくらいだった。

「悩んだの?」
「うーん、そうだね。でもいい話だとは思ってね」
「英語は?」
「……今、英会話教室に行っているの」

 業務上必要なこともあったために、多少は話せるがという状態だった塔子と柏木は、取り急ぎで通うことになった。

「大変」
「辞めても、また連絡とか、来ることもあるだろうから、よろしくね」
「そっか、頑張ってね。向こうに行っても、連絡してもいい?」
「うん、時差?があるらしいから、メールとかだと有難いかな」
「そうだよね、メール送るね」

 それから梨沙は塔子に会えば、別れを惜しむように、話をするようにしていた。

 塔子は引き継ぎなどはあったが、チームで行っていたために、割り振りが変わることになって、指導をするくらいであった。

「彼氏とか友人とかご家族は?反対されなかった?」
「彼氏はいないし、友人は遊びに行くからって言ってくれてるよ。家族はね、前にも話したことあったかもしれないけど、あまり仲が良くなくてね」
「ああ、そうだった……ような」

 梨沙はその話を聞いたのがいつだったか覚えておらず、曖昧に答えた。

「だから、家族のことは考えなくてもいいかなって感じ」
「そっか、色々あるもんね」

 前の梨沙なら根掘り葉掘り聞いていたかもしれないが、余計なことをしないようにと思っていた。

 それから行ったり来たりもしていたが、本格的に塔子が旅立って行き、梨沙は運命が変わったのではないかと、願わずにはいられなかった。

 実は梨沙は戻る前の世界で、美也子と映美に会っていた。塔子から家族とは上手くいっていないと聞き、お金も渡している様子であったことを知っていた。

 二人に会ったのは偶然だった。

 お金をたかろうと、忙しいと捕まらない美也子と映美が会社の前で待っており、梨沙はたまたま声を掛けられた。

 梨沙だったのは、同じくらいの年だと思われたのだろう。

『敷田塔子はまだ会社にいるかしら?』
『あっ、どうでしょうか』
『あなた、塔子とお知り合い?』
『まあ』
『あの子のは母親と、この子は妹なんだけど、話があるのに忙しい忙しいって、捕まらなくて、こんなところまで来させてもらったの』

 これが姉と妹かと思ったが、何だか下品な顔をしているなと感じた。

 詳しい時期は覚えていないが、塔子とは疎遠になり、何か評価されて、持ち上げられていたことも面白くなくて、仕返しをしたつもりであった。

『塔子ちゃんは忙しいですから、その分高給取りですからね。無理もありませんよ。羨ましい限りですよね、ご家族も自慢でしょう?』

 その言葉に美也子と映美は、にやりとさらに下品に口角を上げた。

『まあ、そう。そうなのね』
『もう少し待ってみたらどうでしょうか』
『ええ、そうさせてもらいます』

 またたかられるのだろうなと思ったが、困らされて、私の辛さを分かればいいとしか考えていなかった。その後、塔子がどうなったかは知らない。

 疎遠になっていたので、会ったことを塔子に話すこともなかった。

 梨沙にとっては些細なことで、塔子の友人が気になる男性と付き合い出したこと、隆二を特別におもっていたわけではないが、自分ではなく塔子が目当てであることも面白くなかったのである。

 それから塔子のことを気にすることもなく、寿退社して、結婚が駄目になって生きていた。

 だが、塔子が首を吊って、自殺をしたことをクリスマス・ナンバー制度に選ばれる八年前に、まだ会社にいる後輩が同期でしょうと連絡をしてくれたのである。

 どうしてなのかと思わず聞いていた。
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