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終わりのお別れ
ベルアンジュ・マリクワンの葬儀は、晴天というわけではなかったが、優しい日差しの日だった。
最期の最期まで、自棄になることもなく、何か出来ることをと言い続け、温かさを持ったベルアンジュによく似合っていた。
諦めてしまったとも言えるが、最期に幸せだったと言ってくれただけでも、ルイフォードは一緒にいた価値があったと思いたかった。
見つめていた時間の方が長かった。
ベルアンジュを見初めて本当に良かった。図書館で、ずっと一人の時間を過ごしているのに、彼女はとても輝いていた。
結婚してからと思わずに、婚約してから、もっと時間を作れば良かった。色んな所へ行けば良かった。
後悔はたくさんあるが、凝縮した時間だったと思えば、心は少し軽くなる。
葬儀には両親とパウラ叔母様、使用人、リランダ医師と、お世話になった病院関係者もやって来て、ラオルス公爵は夫人と嫡男と共に参列してくれた。
パウラとベルアンジュは何度も会っており、仕事で離れた場所に行っていたが、慌てて戻り、ギリギリ葬儀には間に合った。
ベルーナにも亡くなったことは伝えた。参列出来るような状態ではないだろうが、ベルーナは経つ前にルイフォードに話していた。
「言葉にはしたくないですが、妊娠が上手くいけば、葬儀には参列は出来ないと思います。それはベルアンジュの最期を見られないこと…」
「そうなってしまうな…」
ルイフォードも折角、二人が会えて楽しそうにしているのに、引き離すことに戸惑いはあった。
だが、こちらで妊娠するのは、誰かに会ってしまったり、漏れてしまったり、ご両親のこともあるために、リスクが高い。
「でもいいのって、言葉も使いたくはないですが、私はベルアンジュが死ぬところは見たくない…まだしばらく信じたくないのです」
そう言って、ベルーナは涙を流した。
ルイフォードと結婚して、幸せになって欲しいと願った自分と同い年の従妹が亡くなるなんて、まだ受け入れられないのだろう。
だからこそ、ベルーナは未来に託す選択を考えたのかもしれない。
「会えなくなることは辛くないか?」
「会いたい、そうは思います。でも私の中で、ベルアンジュも、ベルアンジュとルイフォード様の子どもも生き続ける、そう思おうと思います。ベルアンジュがいなくなっても、大事にしてくれますよね?」
ルイフォードのベルアンジュへの気持ちは知っていても、子どもへの気持ちは、どこまでなのかは確認しておきたかった。
「当たり前だ…上手く出来るかは分からないが、ベルアンジュの分も必ず大切にする。彼女の生きた証だからな」
「そうですか、ちゃんと叱ったりもしてくださいね」
ルイフォードは嘘は言わない、どちらかと言うと、嘘を付けない人だ。
「まだ気は早いですけど、お願いしますね」
「約束する」
「はい、ですので私の気持ちは気にしないでください。落ち着く日が来たら、お墓参りだけさせて欲しいです」
「勿論だ」
きっと、遠くの地でベルーナは私たちの子どもを大事に抱えて、離れた地で、信じられなくとも、真摯に受け止めているはずだ。
ルイフォードとイサードは、心に焼き付けるように努めた。マイルダは堪えきれず、泣き出してしまったが、ベルアンジュの葬儀は、穏やかに終わった。
邸に戻り、ベルアンジュの部屋に行くと、一気に喪失感が襲って来て、一人だったこともあり、涙を堪えることは出来なかった。
そのまま膝をついて、部屋を見渡した。ベットにいることが多かったが、ベルアンジュはそこから笑ってくれていた。あの笑顔は、もう見ることは出来ない。
「ベルアンジュ…」
部屋にはベルアンジュの物は最低限しかなかったが、間違いなく、彼女の生きていた欠片がある。
ベルアンジュが生きれなかった分も、しっかり生きていかなければいけない。
結局、まだ王家から通達は来ていないはずなのに、ソアリ伯爵家から葬儀が何時からかという連絡すらなかった。
最期の最期まで、自棄になることもなく、何か出来ることをと言い続け、温かさを持ったベルアンジュによく似合っていた。
諦めてしまったとも言えるが、最期に幸せだったと言ってくれただけでも、ルイフォードは一緒にいた価値があったと思いたかった。
見つめていた時間の方が長かった。
ベルアンジュを見初めて本当に良かった。図書館で、ずっと一人の時間を過ごしているのに、彼女はとても輝いていた。
結婚してからと思わずに、婚約してから、もっと時間を作れば良かった。色んな所へ行けば良かった。
後悔はたくさんあるが、凝縮した時間だったと思えば、心は少し軽くなる。
葬儀には両親とパウラ叔母様、使用人、リランダ医師と、お世話になった病院関係者もやって来て、ラオルス公爵は夫人と嫡男と共に参列してくれた。
パウラとベルアンジュは何度も会っており、仕事で離れた場所に行っていたが、慌てて戻り、ギリギリ葬儀には間に合った。
ベルーナにも亡くなったことは伝えた。参列出来るような状態ではないだろうが、ベルーナは経つ前にルイフォードに話していた。
「言葉にはしたくないですが、妊娠が上手くいけば、葬儀には参列は出来ないと思います。それはベルアンジュの最期を見られないこと…」
「そうなってしまうな…」
ルイフォードも折角、二人が会えて楽しそうにしているのに、引き離すことに戸惑いはあった。
だが、こちらで妊娠するのは、誰かに会ってしまったり、漏れてしまったり、ご両親のこともあるために、リスクが高い。
「でもいいのって、言葉も使いたくはないですが、私はベルアンジュが死ぬところは見たくない…まだしばらく信じたくないのです」
そう言って、ベルーナは涙を流した。
ルイフォードと結婚して、幸せになって欲しいと願った自分と同い年の従妹が亡くなるなんて、まだ受け入れられないのだろう。
だからこそ、ベルーナは未来に託す選択を考えたのかもしれない。
「会えなくなることは辛くないか?」
「会いたい、そうは思います。でも私の中で、ベルアンジュも、ベルアンジュとルイフォード様の子どもも生き続ける、そう思おうと思います。ベルアンジュがいなくなっても、大事にしてくれますよね?」
ルイフォードのベルアンジュへの気持ちは知っていても、子どもへの気持ちは、どこまでなのかは確認しておきたかった。
「当たり前だ…上手く出来るかは分からないが、ベルアンジュの分も必ず大切にする。彼女の生きた証だからな」
「そうですか、ちゃんと叱ったりもしてくださいね」
ルイフォードは嘘は言わない、どちらかと言うと、嘘を付けない人だ。
「まだ気は早いですけど、お願いしますね」
「約束する」
「はい、ですので私の気持ちは気にしないでください。落ち着く日が来たら、お墓参りだけさせて欲しいです」
「勿論だ」
きっと、遠くの地でベルーナは私たちの子どもを大事に抱えて、離れた地で、信じられなくとも、真摯に受け止めているはずだ。
ルイフォードとイサードは、心に焼き付けるように努めた。マイルダは堪えきれず、泣き出してしまったが、ベルアンジュの葬儀は、穏やかに終わった。
邸に戻り、ベルアンジュの部屋に行くと、一気に喪失感が襲って来て、一人だったこともあり、涙を堪えることは出来なかった。
そのまま膝をついて、部屋を見渡した。ベットにいることが多かったが、ベルアンジュはそこから笑ってくれていた。あの笑顔は、もう見ることは出来ない。
「ベルアンジュ…」
部屋にはベルアンジュの物は最低限しかなかったが、間違いなく、彼女の生きていた欠片がある。
ベルアンジュが生きれなかった分も、しっかり生きていかなければいけない。
結局、まだ王家から通達は来ていないはずなのに、ソアリ伯爵家から葬儀が何時からかという連絡すらなかった。
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