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お花畑に住めなくなった家族6
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チェイスとノーマは、いくらキャリーヌの子どもでも、相手の素性が分からないような子どもは育てられない、養子に出そうと考えていた。
二人は没落しそうにも関わらず、差別的考えを持っており、キャリーヌは貴族の子どもだと言ったが、さすがに孤児の傭兵が貴族の子どもとは思えず、平民との子をソアリ伯爵家に入れるなんてあり得ないと思っていた。
「マリクワン侯爵家が養子を取る前だったらな」
「そうね、養子が必要ならキャリーヌの子どもなんて、ピッタリじゃない!援助もして貰えたでしょうし」
もし他家が平民の血の混ざった子どもを養子に取ったと聞けば、信じられない!何なら気持ち悪いくらい言う癖に、受け入れると思っている。
そして、自分たちには血の繋がりがあるのだからと、援助を要求することだろう。
「惜しいことをしたな…」
「養子を取ったってことは、再婚する気がないのではなくて?キャリーヌが罪を償ってから、再婚ってこともあったかもしれないわよ?」
そんなわけはないのだが、離れたことで現実を見るわけでもなく、結局はキャリーヌは可愛い娘であると二人は思っている。
「そうなったら、一番良かったな」
「もう一人くらいいてもいいんじゃないかしら?」
「生まれてから、持ち掛けてみるか…」
マリクワン侯爵家が受け入れるはずはなく、他の貴族でも子どもに罪はないとしても、虐待をしていたソアリ伯爵家に関わりたくもなければ、病弱売りの阿婆擦れ罪人の子どもを引き取ろうなんて家はない。
孫であるはずのソアリ伯爵夫妻が育てないのに、誰が求めるというのだろうか。
そうして、二度発作はあったが、キャリーヌは出産の日を迎えた。
痛い痛い、もう止める、産めないと大騒ぎして、生まれたのはカイザーの褐色の肌を持つ女児であった。
チェイスとノーマも駆け付けたが、国では珍しい褐色の肌に驚き、愕然とした。差別的な意味ではなく、良くも悪くも注目されてしまうことにであった。
「可愛いでしょう?メロリーヌって名前にするわ」
顔立ちは精悍なカイザーではなく、素朴なキャリーヌに似ていたが、今のところはよく似ているというわけでもない。
「キャリーヌには育てられないだろう」
「そんなことないわ」
特に理由はないが、否定されて腹を立てて言っただけであった。子どもの世話も看護師にやらせており、子どもが可哀想だからという理由で看護師も行っている。
「刑務所で育てられない」
「私の子どもなのよ?」
「刑が終わるまで孤児院に行くことになるだろう」
両親が引き取れば孤児院にはいかなくていいが、二人は育てる気も、赤子を育てる人を雇う余裕もなかった。
「はあ?お父様たちがカイザーが迎えに来るまで育ててよ」
「迎えに来るのか…?」
「当たり前じゃない、妻子が待っているのよ!」
すっかり夫婦気分のキャリーヌではあるが、体調が回復次第、労働刑に戻ることになっている。
結局、キャリーヌには伝えないまま、メロリーヌは孤児院に行くことになった。
ソアリ伯爵家に無理矢理渡したところで、虐待するような親であるために、その方がいいだろうとも判断された。キャリーヌはソアリ伯爵家で育てられていると思い込んでいるので、敢えてそのままにしている。
ある日、チェイスは王城でルイフォードを見付けて、声を掛けた。声を掛ける方がどうかしているのだが、チェイスには理解が出来ない。
「ルイフォード殿!」
ルイフォードはその声に驚き、隠しきれない嫌悪感を向けた。
「何の用ですか」
「いや~お久しぶりですね、なかなかこちらも忙しくしておりまして、申し訳ない。それで、養子を取られたとお聞きしまして」
「何ですか」
「いえ、もしまた取られるようであれば、伝手がありますので、いつでもおっしゃってください」
考えなしという人間は恐ろしいことで、あわよくばメロリーヌを養子にして貰えたらいいと、伝えて置こうと思っただけである。
二人は没落しそうにも関わらず、差別的考えを持っており、キャリーヌは貴族の子どもだと言ったが、さすがに孤児の傭兵が貴族の子どもとは思えず、平民との子をソアリ伯爵家に入れるなんてあり得ないと思っていた。
「マリクワン侯爵家が養子を取る前だったらな」
「そうね、養子が必要ならキャリーヌの子どもなんて、ピッタリじゃない!援助もして貰えたでしょうし」
もし他家が平民の血の混ざった子どもを養子に取ったと聞けば、信じられない!何なら気持ち悪いくらい言う癖に、受け入れると思っている。
そして、自分たちには血の繋がりがあるのだからと、援助を要求することだろう。
「惜しいことをしたな…」
「養子を取ったってことは、再婚する気がないのではなくて?キャリーヌが罪を償ってから、再婚ってこともあったかもしれないわよ?」
そんなわけはないのだが、離れたことで現実を見るわけでもなく、結局はキャリーヌは可愛い娘であると二人は思っている。
「そうなったら、一番良かったな」
「もう一人くらいいてもいいんじゃないかしら?」
「生まれてから、持ち掛けてみるか…」
マリクワン侯爵家が受け入れるはずはなく、他の貴族でも子どもに罪はないとしても、虐待をしていたソアリ伯爵家に関わりたくもなければ、病弱売りの阿婆擦れ罪人の子どもを引き取ろうなんて家はない。
孫であるはずのソアリ伯爵夫妻が育てないのに、誰が求めるというのだろうか。
そうして、二度発作はあったが、キャリーヌは出産の日を迎えた。
痛い痛い、もう止める、産めないと大騒ぎして、生まれたのはカイザーの褐色の肌を持つ女児であった。
チェイスとノーマも駆け付けたが、国では珍しい褐色の肌に驚き、愕然とした。差別的な意味ではなく、良くも悪くも注目されてしまうことにであった。
「可愛いでしょう?メロリーヌって名前にするわ」
顔立ちは精悍なカイザーではなく、素朴なキャリーヌに似ていたが、今のところはよく似ているというわけでもない。
「キャリーヌには育てられないだろう」
「そんなことないわ」
特に理由はないが、否定されて腹を立てて言っただけであった。子どもの世話も看護師にやらせており、子どもが可哀想だからという理由で看護師も行っている。
「刑務所で育てられない」
「私の子どもなのよ?」
「刑が終わるまで孤児院に行くことになるだろう」
両親が引き取れば孤児院にはいかなくていいが、二人は育てる気も、赤子を育てる人を雇う余裕もなかった。
「はあ?お父様たちがカイザーが迎えに来るまで育ててよ」
「迎えに来るのか…?」
「当たり前じゃない、妻子が待っているのよ!」
すっかり夫婦気分のキャリーヌではあるが、体調が回復次第、労働刑に戻ることになっている。
結局、キャリーヌには伝えないまま、メロリーヌは孤児院に行くことになった。
ソアリ伯爵家に無理矢理渡したところで、虐待するような親であるために、その方がいいだろうとも判断された。キャリーヌはソアリ伯爵家で育てられていると思い込んでいるので、敢えてそのままにしている。
ある日、チェイスは王城でルイフォードを見付けて、声を掛けた。声を掛ける方がどうかしているのだが、チェイスには理解が出来ない。
「ルイフォード殿!」
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「いや~お久しぶりですね、なかなかこちらも忙しくしておりまして、申し訳ない。それで、養子を取られたとお聞きしまして」
「何ですか」
「いえ、もしまた取られるようであれば、伝手がありますので、いつでもおっしゃってください」
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