魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ

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第18話

彼女の友人2

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「正直ね、解消しようかって話になってるの。あとカイラン前夫人がお怒りなの。あの娘の母親が現カイラン伯爵に懸想して、本当にしつこかったらしくて。それで今度は娘がカイラン令息に懸想しているというわけ。血は争えないっていうのかしらね」

 令息であるハルリット・カイランは、精悍な顔立ちで、学園でも度々主席を取るほどの青年である。そもそもカイラン家自体が、爵位が上がるだろうと言われているほどの名家である。

「それは余計に腹立たしいというところね、それこそアドノのお母様とお祖母様なら取り巻きが似合うと思うけど」

 アドノの母は伯爵家から嫁いでおり、カイラン前夫人は祖母となる。アドノ母、祖母はまさにセナリアンが想像した皆が湧き上がるような妖艶なご婦人たちである。ただ二人とも見かけとは違い、非常に逞しい女性でさっぱりした性格をしている。

 アドノに誘われて、リクアとセナリアンが訪ねた時は、フランクリン家もカイラン家も、あれもこれもとお土産を持たされるのが定番である。

「確かに二人はまさにね!素で話し出すと薄れて来るけど」

 リクアもアドノと婚約前から親交があり、初対面は気後れするほどだったが、話し始めると思ったのと違うとなるのだ。

「しかもあの娘、相手にされていないのに、自分が誘えば喜んで受けると思っているみたいで、どんだけいい女だと思ってんのって話で。男性を侍らしながら、別の男性に踊って差し上げますわって声掛けるのよ、もはや怖いでしょう?」
「うわ…だったら身持ちが悪くなる前に、上を狙えば良かったじゃない?」
「そこは勝てない相手がいるのに、行くわけないでしょう」
「ああ、戦う場所が違うなんて、都合の良い解釈をしているということね」

 伯爵家なので魔力差はあまりに多くなければ、伯爵家より上でも可能だろう。それよりも問題は本人の身持ちの悪さと質であるようだ。

「あの様子だと相手にされなかったでしょうけどね、だって令嬢の友人がいないのよ?社交が一切出来ないと言っているようなものでしょう?」
「私も友人はあまりいないし、社交もしてないわよ?」
「セナ様はご友人レベルではないんです!社交もしないのではなく、する暇がないんです!」

 リクアも友人ではあるが、少しセナリアン過激派になりつつある。

 ちなみにリクアの見た目は髪色はブロンド寄りのブラウンで、ダークブラウンの瞳、ちょっぴり吊り上がっているので、猫ような愛らしい顔立ちである。おかげで猫好きのコルロンド姉妹にまあ、可愛いと大絶賛されている。

「まあ、そうね。で、どうするのが気なの?嫌味でも言えば、庇護欲?っていうの見れるかしら?」
「そこは見なくてもいいけど、どうしてやろうかと思ってるところ。正直、関わって来ないのなら放置でいいんだけど、はぁ…」

 リクアも義妹・サーラは可愛い、どうにかしてやりたいところである。

「グロー公爵家に喧嘩を売ってもらう?多分、今日この場で一番爵位が高いの私じゃないかしら?」
「そもそも、爵位どころの騒ぎじゃないわよ」
「ほほほ!ハルリット・カイランは、あの女性は?」
「あれは、確か従妹だったはず」
「ノエルと知り合いのはずだから、あの子に頼んで、ちょっと巻き添えを食わないようにさせて、いいところで戻ってもらうわ。爵位はこういう時に使わないと使うことないから、ねっ!」
「ねっ!って、どうするつもり?」
「私の顔なんて知らないだろうし、私がハルリット・カイランといたら、さっきみたいに突っ込んで来るんじゃない?」

 既に先ほど、ミディアーナがカイランに踊りましょうと突っ込んで来ていたのだ。カイランは従妹のアリソンと踊るからと断られていた。

「それでノエルにいいところで入って来てもらうわ、そうすれば、グロー公爵家とルージエ、それに王家も背後に見えるんじゃない?」
「それ以上のものも見える気がするけど、やめとくわ」
「任せなさい!傲慢で高慢ちきなご婦人を見せてやるわ」
「何か、偏ってそうだけど、まあいいか」

 ふふふんと軽やかな足取りで去っていくのを見送るしかなかったが、セナリアンに任せて悪い方に転がることは絶対にないと絶大なる信頼があった。
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