【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
121 / 131

グルダイヤ侯爵1

しおりを挟む
 一方、ルスデン王国との話し合いの後、コーランド王国でも立場の悪くなった者がいた。

「グルダイヤ侯爵、分かっておるな?」

 ダズベルトとオーバンは、何かしたわけではないために、罰を与えることは出来ないが、混乱を招き、調子に乗ったことは明らかであり、グルダイヤ侯爵にも釘を刺して置くことにした。

「ですが、私は悪いことをしたわけでは」
「ああ、だが、後見人はそなただろう?」
「それはそうですが…」
「そなたが、こんなことしなければ、ここまで大きくはならなかった」

 披露することは、グルダイヤ侯爵が言い出したことだが、ルスデン王国も、アリナ本人も乗り気であったからである。

「私は信じていたのです」
「だから何だ?もし、解読が出来ていたら、これからは偉そうな顔が出来ると思っていたのだろう?」
「そ、そのようなことは」
「だが、今回のことで学者たちにも、色々言っていたそうじゃないか」
「それは…」

 グルダイヤ侯爵は、学者にもアリナは素晴らしいと力説し、これからはアリナが主軸となっていくだろうとまで話していた。

 だが、それは泡となって消えた。

「今回の件で、ルスデン王国に事業を置く者は撤退する者もいるかもしれない」
「それは…」
「責任を感じるべきだろう」
「ですが、私も知らなかったのです」
「そんなものが言い訳になるか!」
「っ、ですが、私も信じていて…教師だって出来ていると」

 解読を唖然として見ながらも、グルダイヤ侯爵は始めは出来ていたはずなのに、なぜだと思っていたが、ヨルレアンの説明に、ふざけるなという気持ちに変わっていた。

 確かにアリナは、未解読の文はしていなかったことに気付いた。だが、未解読となると、教師も答えが分からないので、合っているかも分からない。

 しかも、彼女は習っている状況であったために、解読を初見で出来たわけではない。

 これはこう解読するということを学んでいたに過ぎない、よく考えれば文献を短時間で答えを出すことは難しい。だが、アリナは出来ると言った。

 アリナも出来ないとすら思っていないことで、ただ多少記憶力が良い男爵令嬢というのが、現実の姿となった。

「それがどうした!学者たちを馬鹿にしたことには変わりないわ!」
「馬鹿になど…」
「もういい、二度とこのようなことは認めない。いいな?」
「…はい」

 グルダイヤ侯爵が邸に戻ると、アリナたちが帰り支度を終えたところで、ラリオ王太子と外交大臣がやって来た。

「侯爵、この度は…」
「はい、お互いなかったことにした方がよろしいでしょう」

 ルスデン王国の王家も、グルダイヤ侯爵と狙いは同じであった。聖女と呼ばれるアリナを、上手く使おうと考えていた。

 ゆえに、お互いを責めることは出来ず、ただただ残念に思うだけであった。

 グルダイヤ侯爵も、今回のことで立場が悪くなることは想定しており、ラリオ王太子は妻のこともあるために、もっと大変なことになるだろうと痛ましく思った。

「ええ、お世話になりました」
「いえ」

 こうして、アリナとファミラを連れて、ルスデン王国に帰って行った。見送っていると、息子が声を掛けて来た。

「父上…」
「ああ、見込み違いであった」
「そのようですね」
「すまなかったな…」
「いえ…」

 息子にはアリナのことを妻にしろ!とは言っておらず、気に掛けてやって欲しいとだけ言っていたことだけは良かった。

 だが、調子に乗って、必死になっていた父親は滑稽だっただろう。

 表向きは変わらない者もいたが、『残念でしたね』という言葉を掛けて来る者もおり、『見込み違いだったようで、お恥ずかしいことです』と、苦笑いするしかなかった。

 解読の学者たちには一応は、謝罪をさせて貰ったが、その視線は冷たいものであった。

 そして、数か月が経つ頃、驚きのニュースが飛び込んで来た。

「両親と妹さんが亡くなった?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との
恋愛
離婚したいのですか?  喜んでお受けします。 でも、本当に大丈夫なんでしょうか? 伯爵様・・自滅の道を行ってません? まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。 収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。 (父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる) ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路

今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。 すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。 ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。 それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。 そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ…… ※短い……はず

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

処理中です...