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グルダイヤ侯爵2
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「殺されたようです…」
知らせて来たのは、長年グルダイヤ侯爵家に仕えてくれている執事であった。丁度、外出時に耳にして、ルスデン王国の新聞を買って来た。
「なん、だと…?なぜ…」
「ルスデン王国の工場が撤退したことで、仕事を失い、病気の妻の薬が買えず、そのことを恨んでの犯行だったようです」
「っな」
「こちらに事件のことは書いてあります」
グルダイヤ侯爵は、その記事を読み終えたが、そこには平民男性によって、ハッソ男爵邸が放火され、男爵夫妻とアリナの妹であるミーナが亡くなったとあり、犯行動機は私的な恨みだとだけ書かれていた。
アリナのことは知っている者は知っているが、公表されているわけではないので、今回も記事には書かれていない。
「ですが、犯人の狙いは王太子妃、王子妃、アリナ・ハッソだったそうです」
「だが、公表されていないはずだ」
「どうやら、本当はその工場の役員を殺そうとしたそうですが、殺されたくないあまり、彼は事情を知っていたので、話してしまったそうです」
「っ」
確かに殺されるという状況であれば、私のせいではないと言いたくなる気持ちも分からなくはない。
「王太子妃も王子妃も幽閉されておりますので、手を出すのは難しい」
「だから、アリナ嬢に向いたと?」
「はい、ですがアリナ嬢は寮に住んでおり、犯人は知らずにハッソ男爵領にまで行き、邸に放火をしたそうです。邸にいなかったアリナは無事で、家族だけが亡くなることとなったようです」
グルダイヤ侯爵は、生唾をのみ込んだ。
「アリナ嬢は無事ということだな?」
「はい、そのようです」
騙された気持ちにもなったが、グルダイヤ侯爵は気付かなかった責任も感じるようになっていた。
幸せにとまでは思えないが、無事にルスデン王国で過ごして欲しいくらいは思っていた。王家にも責任があるのだから、まだ学生のアリナに、厳しい罰ということもないだろうと考えていた。
だが、また数週間後、執事が続報を持って来た。
「アリナ嬢は姿を消したそうです」
「っな」
「ご両親と妹君は、放火から逃げなかったようです」
「…は?」
「謝罪に行った、ルエルフ王国でもアリナ嬢は不用意な発言をして、ご両親は随分、責められていたようです」
「不用意な発言?」
謝罪の場で、どのような不用意な発言をするというのだろうか。
「詳しくは分かりませんでしたが、女王を怒らせたことは間違いないでしょう」
「理解していなかったのか?」
あれだけ大勢の前で出来ないことが分かり、ヨルレアンが説明をし、コーランド王国の王子のどちらかと結婚をするなどと嘘だったことを陛下に突き付けられても、分かっていなかったのか?
「そのようですね…自分で自分の首を絞め、その尻拭いをすることになったのは、ご両親だったのではないでしょうか」
「それで、彼女も姿を消したのか?」
「そのようです、もしかしたらようやく理解をしたのかもしれません」
「そのような理解の出来ない子であったか?」
自分の能力も理解が出来ていなかったことは、自分も含めて、周りも分からなかったのだからと納得した。
王子と結婚すると言われたのも、男爵令嬢で聖女と呼ばれるようになって、雲の上の存在である王太子妃や王子妃に言われて、夢見てしまったのだろうと納得した。
「本質というものは、分かり辛い場合もございますので」
「本質…」
「普通に生きていれば、彼女はちょっと記憶力がいい男爵令嬢として生きて来れたのではと思ってしまいます」
「ああ…」
執事はアリナが周りに踊らされ、彼女自身も踊りに向いており、その中の一人に自分もいることを忘れてはならないと言いたいのだろうと思った。
せめて、何か支援をするべきだったと後悔したが、もう遅い。
息子に婚約者を作り、安定したら、早めに引退しようと決めた瞬間であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。
こちらのお話は今月中に完結いたします。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
知らせて来たのは、長年グルダイヤ侯爵家に仕えてくれている執事であった。丁度、外出時に耳にして、ルスデン王国の新聞を買って来た。
「なん、だと…?なぜ…」
「ルスデン王国の工場が撤退したことで、仕事を失い、病気の妻の薬が買えず、そのことを恨んでの犯行だったようです」
「っな」
「こちらに事件のことは書いてあります」
グルダイヤ侯爵は、その記事を読み終えたが、そこには平民男性によって、ハッソ男爵邸が放火され、男爵夫妻とアリナの妹であるミーナが亡くなったとあり、犯行動機は私的な恨みだとだけ書かれていた。
アリナのことは知っている者は知っているが、公表されているわけではないので、今回も記事には書かれていない。
「ですが、犯人の狙いは王太子妃、王子妃、アリナ・ハッソだったそうです」
「だが、公表されていないはずだ」
「どうやら、本当はその工場の役員を殺そうとしたそうですが、殺されたくないあまり、彼は事情を知っていたので、話してしまったそうです」
「っ」
確かに殺されるという状況であれば、私のせいではないと言いたくなる気持ちも分からなくはない。
「王太子妃も王子妃も幽閉されておりますので、手を出すのは難しい」
「だから、アリナ嬢に向いたと?」
「はい、ですがアリナ嬢は寮に住んでおり、犯人は知らずにハッソ男爵領にまで行き、邸に放火をしたそうです。邸にいなかったアリナは無事で、家族だけが亡くなることとなったようです」
グルダイヤ侯爵は、生唾をのみ込んだ。
「アリナ嬢は無事ということだな?」
「はい、そのようです」
騙された気持ちにもなったが、グルダイヤ侯爵は気付かなかった責任も感じるようになっていた。
幸せにとまでは思えないが、無事にルスデン王国で過ごして欲しいくらいは思っていた。王家にも責任があるのだから、まだ学生のアリナに、厳しい罰ということもないだろうと考えていた。
だが、また数週間後、執事が続報を持って来た。
「アリナ嬢は姿を消したそうです」
「っな」
「ご両親と妹君は、放火から逃げなかったようです」
「…は?」
「謝罪に行った、ルエルフ王国でもアリナ嬢は不用意な発言をして、ご両親は随分、責められていたようです」
「不用意な発言?」
謝罪の場で、どのような不用意な発言をするというのだろうか。
「詳しくは分かりませんでしたが、女王を怒らせたことは間違いないでしょう」
「理解していなかったのか?」
あれだけ大勢の前で出来ないことが分かり、ヨルレアンが説明をし、コーランド王国の王子のどちらかと結婚をするなどと嘘だったことを陛下に突き付けられても、分かっていなかったのか?
「そのようですね…自分で自分の首を絞め、その尻拭いをすることになったのは、ご両親だったのではないでしょうか」
「それで、彼女も姿を消したのか?」
「そのようです、もしかしたらようやく理解をしたのかもしれません」
「そのような理解の出来ない子であったか?」
自分の能力も理解が出来ていなかったことは、自分も含めて、周りも分からなかったのだからと納得した。
王子と結婚すると言われたのも、男爵令嬢で聖女と呼ばれるようになって、雲の上の存在である王太子妃や王子妃に言われて、夢見てしまったのだろうと納得した。
「本質というものは、分かり辛い場合もございますので」
「本質…」
「普通に生きていれば、彼女はちょっと記憶力がいい男爵令嬢として生きて来れたのではと思ってしまいます」
「ああ…」
執事はアリナが周りに踊らされ、彼女自身も踊りに向いており、その中の一人に自分もいることを忘れてはならないと言いたいのだろうと思った。
せめて、何か支援をするべきだったと後悔したが、もう遅い。
息子に婚約者を作り、安定したら、早めに引退しようと決めた瞬間であった。
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本日もお読みいただきありがとうございます。
本日は1日2話、投稿させていただきます。
いつもの17時にも1話、投稿します。
こちらのお話は今月中に完結いたします。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
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