病める時も、健やかではない時も

野村にれ

文字の大きさ
7 / 252

振るわない成績

しおりを挟む
「そのようなことはありません」
「聞いている時は分かるのだけど、応用となると苦手みたい」

 モリーはブランクはあったが、いくら授業を聞いていなくとも、高等部の授業も試験は二度も受けている。何もしないとは言っても、ありのまま解答することは良い成績を取ることになり、避けたかった。

 始めの試験は上手く行ったが、これからどう成績を維持しようかと考えていた。

 馬鹿過ぎるのも面倒事が増えそうで、授業はちゃんと受け、記録に残る試験だけは下位である必要があった。

 明らかに分かっていないと不自然な解答を先に書き、応用問題や点数の高そうな問題などを間違えることにしたのである。

「そういったことはございます」

 ペイリーは才女というわけではなかったが、40位以内には必ず入っていた。

 今回はたまたまなのだろうと、皆が思っていた。

 だが、モリーの試験の結果だけは僅かに上がって、ブレフォスの言ったように二桁にはなったものの、80位台か90位台のままであった。

 ブレフォスは、さすがに頭を抱えることになった。

 カリーナはロレインに付きっきりであるために、彼女が何かしてこのような状況になっているわけではないことも、分かっていた。

「幼い頃は神童と呼ばれておいででしたのに」

 頭を抱えるブレフォスに、執事であるエルソンが悲しげに声を掛けた。

「ああ…」

 幼い頃からモリーは賢く、礼儀やマナーは既に完璧と言っていい。

 魔力はないが、当時の家庭教師からも神童だと言われていたこともあった。

 愛人を引き込んだ私への当てつけなのではないかとすら思ったが、そんなことをして恥をかくのはモリーであり、ブレフォスが恥ずかしい思いをすることはない。

 ブレフォスを馬鹿にして、命知らずのようなことをする者はいない。

 言語も学ばせており、家庭教師にも理解をしているか確認をして貰ったが、授業で行ったことは分かってらっしゃいますと言い、試しに簡単な試験をして貰ったが、理解が出来ているようだった。

 だが、数日前の復習をすると、困った顔をすることはあったそうだ。

 それでも、家庭教師も勉強が出来ないとは思えないと言い、モリー自身もどうしてなのかしらと悩んでいるようだったということから、試験になると実力が出ないのかもしれないという結論になった。

「だがな、勉強もさせていて、これだと…」
「分かっていないわけではないのでございますから、期待し過ぎたところもあったのではございませんか」
「ああ…確かに、当然のように成績はいいはずだと思っていた」
「それが、良くなかったことで、余計に落胆されたのではありませんか」
「ああ…そうだな」

 カリーナはロレインの教育に励んでいるようだが、モリーの方が賢いと思っていた。どこかで、ロレインに入れ込むカリーナに当てつけで、モリーには及ばないと思いたかったのではないか。

「もしかしたら、これからかもしれませんよ。伸びしろはあるはずです」
「そうだな」

 ブレフォスは問題を起こしたわけではないのだから、モリーの成績のことは、これ以上、考えるのは止めようと思った。

 学園でもモリーは、賢くないという認識に変わった。

 公爵令嬢ということもあり、表立って馬鹿にするようなことはないが、こういった場合も高位貴族だからと攻められ易いことになる。

 リークレア・ダンサム公爵令嬢は、15位前後の順位であったが、同じ公爵令嬢として、頭の良い公爵令嬢と頭の悪い公爵令嬢と呼ばれることを、そんなことを言うものではないと言いながら、心の中で笑っていた。

 知る由もないが、一度目はまるっきり逆で呼ばれていた。

 モリーはリークレアとは友人ではないために、話をすることはないが、リークレアが考えていることは手に取るように分かっていた。

 だが、何もしない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

【完結】馬車の行く先【短編】

青波鳩子
恋愛
王命による婚約を、破棄すると告げられたフェリーネ。 婚約者ヴェッセルから呼び出された学園の予備室で、フェリーネはしばらく動けずにいた。 同級生でありフェリーネの侍女でもあるアマリアと、胸の苦しさが落ち着くまで静かに話をする。 一方、ヴェッセルは連れてきた恋の相手スザンナと、予備室のドアの外で中の様子を伺っている。 フェリーネとアマリアの話を聞いている、ヴェッセルとスザンナは……。 *ハッピーエンドではありません *荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。 *他サイトでも公開しています

婚約破棄まで死んでいます。

豆狸
恋愛
婚約を解消したので生き返ってもいいのでしょうか?

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

賭けで付き合った2人の結末は…

しあ
恋愛
遊び人な先輩に告白されて、3ヶ月お付き合いすることになったけど、最終日に初めて私からデートに誘ったのに先輩はいつも通りドタキャン。 それどころか、可愛い女の子と腕を組んで幸せそうにデートしている所を発見してしまう。 どうせ3ヶ月って期間付き関係だったもんね。 仕方ない…仕方ないのはわかっているけど涙が止まらない。 涙を拭いたティッシュを芽生え始めた恋心と共にゴミ箱に捨てる。 捨てたはずなのに、どうして先輩とよく遭遇しそうになるんですか…?とりあえず、全力で避けます。 ※魔法が使える世界ですが、文明はとても進んでとても現代的な設定です。スマホとか出てきます。

[完結]アタンなんなのって私は私ですが?

シマ
恋愛
私は、ルルーシュ・アーデン男爵令嬢です。底辺の貴族の上、天災で主要産業である農業に大打撃を受けて貧乏な我が家。 我が家は建て直しに家族全員、奔走していたのですが、やっと領地が落ちついて半年振りに学園に登校すると、いきなり婚約破棄だと叫ばれました。 ……嫌がらせ?嫉妬?私が貴女に? さっきから叫ばれておりますが、そもそも貴女の隣の男性は、婚約者じゃありませんけど? 私の婚約者は…… 完結保証 本編7話+その後1話

処理中です...