病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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思惑

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 ドレスは褒められるばかりだったが、モリーも才能があるなどと自惚れることはなく、15歳だからだろうと感じていた。

 だから、お世辞も含まれていると思われたが、ブレフォスの必死さに何だかむず痒い気持ちになったが、何か思惑があるのかとハッとした。

 こんなことがなかったので、一体どんな意図があるのか、どう反応するのが正しいのかも分からなかった。

 何とも言えない雰囲気のまま公爵邸に着き、二人はようやく別れた。

 モリーはペイリーと合流して、ようやく今日の怒涛の出来事をお互いに労わることになった。

 モリーとブレフォスの帰った王家でも今日のことについて、話されていた。

「護衛ではないと思いましたが」
「ええ」

 ケリーとレルスは殺意までは感じなかったが、怪しいと察して、動きがあれば拘束する気でもいた。

「まさかお針子さんだったなんて!執事も失礼だわ!」

 エリーはモリーを馬鹿にしたレベンナに怒り、そのようなことになった執事に怒っていた。

「ええ」
「執事はモリー嬢が、実はドレスを作っていないと疑って、お針子を雇ったわけではありませんよね?」
「公爵がそうではないと分かっている様子でしたから、それはないでしょう。ただ、良く見せようとしたのか、侮っていたのは確かでしょうね」
「でも完成しているのに、どうするつもりだったのでしょうか?」
「難癖を付けて、自分の作ったドレスを持って来て、売り込もうとでも思っていたのではないかしら?」
「ああ……」

 デザイナーなど足の引っ張り合いがある世界で、王女のドレスなどチャンスと考えたのだろう。だが、礼儀もなっていない者を護衛だと公爵令嬢にも、王家にも嘘を付いた責任は重い。

「陥れようとしたのは、その執事だったのではないの!」
「何のために?」

 公爵家のためを全面的に信じるわけではないが、上等な物を作ろうと欲を出したのだろうと思う。それでも、悪意がなかったとは言えない。だが、ならば目的は何だと言うのか、エリーの意見が聞いてみたかった。

「親子関係を悪くするためとか?」
「愛人側の人間だったってことか?」
「うーん、でも愛人って平民なんでしょう?だったら、モリー様の持ち物とかなら別だけど、奪うことなんて出来るかしら?」
「ん?」
「元々持っていないのだから、奪えるものではないでしょう?」

 確かにモリーから奪うというのは、奪える立場にある人間だけだろう。そもそもの立場の違う二人は、立つ部隊が違うのである。

「そうか、確か養子にもなっていないのですよね」
「ええ、まさに囲っているだけの状況ね。でないと、親族がさすがに許さないわ」

 弁えている立場ならということで、放置されている状態である。だが、いびつであることに変わりはない。モリーが達観しているのも、環境の影響も大きいだろう。

 だが、ブレフォスの対応を見る限り、蔑ろにしている様子ではなかった。

 彼なりに子どもたちには、愛情は持っているのかもしれない。

「芸術祭で見なかったの?」
「見ていません。いや、気にしていなかっただけかもしれませんね。だって、オブレオサジュールではないのでしょう?」
「そうね、平民の名前まで覚えていないわよね」

 マキュレアリリージュは当然、認識されていると思っているが、レルスからは認識すらされていなかった。

「でもお母様、モリー様をお茶会に呼んでくださるのでしょう?」
「お茶会ではなく、おそらく公爵がどういう対処をしたか説明に来るでしょうから、その際にモリー嬢も連れて来てもらうように言うつもりよ」
「そうだったわね、その方が良いわね」

 公爵が娘を王宮に連れて来ることは問題ない。万が一、疑われるようなことになっても、理由が答えられ、嘘でもない。

 そのブレフォスを、迎えたのはエルソンの父で、前執事、オーリス・ツーラン子爵であった。
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