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返事
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「ああ、王妃の話を聞いたのだろう。我が身を優先する国とは取引は遠慮したいとのことだ」
「そんな…もう薬もないのですよね?」
バトワスの元へも薬がどうしてないのかと、問い合わせがあった。オイスラッドに報告を上げていたが、答えは貰っていなかった。
「そうだ、ペアー王国も薬を開発したとあるが」
「だったら、ペアー王国から輸入すればいいじゃない」
居たたまれないシンバリアは、他国から輸入が出来れば、自分の責任を回避できると思い、声を上げた。
「あの国は独自の文化がある、薬の安全性も分からない。高額で、それ以上に何を要求されるか分からないとしてもか?お前が払うのか?お前が責任を持つのか?」
「…それは」
シンバリアはこれまで王妃として、常に尊敬される存在であった。
だが、バトワスが起こしたとも言えるフォンターナ家が出て行った際には、夫人たちに表立って責められることはなかったが、誘いを断られることも多くなり、一番の問題はアニバーサリーの閉店であった。
化粧品、ドレス、食べ物も手に入らなくなった。その上、天候が変わり、美を保てなくなった者も多い。
だが、それもようやく時間が経って、風化していた頃だった。
ゆえに責められることに慣れておらず、どうにか自分の落ち度をなかったことにしたいとしか、考えられないでいた。
「独自の薬草などを使っていると、聞いたことがあります」
「薬には効果あるとしても、何が起こるか分からない。カイニー王国ですら、何名か副作用もあっただろう」
「はい…」
「他の国が開発しても、輸入が出来るか分からない。我が国はまだ出来そうにもない」
研究チームは開発を進めているが、自国の物だけでは、足りないものも多く、輸入も出来ないので、開発には程遠い。
「良い返事が来ればいいが、難しいだろうと考えている」
バトワスは思わず、シンバリアを見たが、息子にそのような目で見られたこともなかったシンバリアは、サッと目を逸らした。
「私が自ら赴こうと思っていたが、規制もあるから、時間は掛かるだろう」
「収束する可能性は…」
「収束はしていくだろうとのことだが、薬が必要がないということではない」
「そうですよね…」
収束しても、もう二度と起こらないわけではない。薬はこれからも確保して置かなくてはならない。
「今も薬を欲している者がいるんだ、どうにか出来ずに何が国王だ…王妃を同席させたことを、後悔している」
オイスラッドもシンバリアを見たが、ついに下を向いてしまった。
「もし、交渉の席があれば、王妃は同席させない。それ以前に、出来るかどうか」
「私も、カイニー王国とオルタナ王国について調べてみます。後は、パベルにも手紙を書いてみましょう」
「パベルか…」
パベルはアーカス王国に留学したままだが、他国にもアーカス王国から短期留学にも行っており、薬の開発も信頼を得て教えて貰っていた。
「はい、あの子は賢いですから、何か打開策を持っているかもしれません」
「そうだな、だが動く前に相談に来なさい」
「はい、承知しております」
バトワスはエルム・フォンターナの件から、動く前に報告を上げることを義務付けられている。
「シンバリアは何もせず、大人しくして置きなさい」
「…っな」
「カイニー王国に謝罪に行く気もないのだろう?自分の責任で薬がないことから、民に合わせる顔もないはずだ」
「…」
バトワスはすぐにパベルにシンバリアのことも包み隠さず、事情を書いて、薬の輸入のことで何かいい案はないかと、手紙を出した。
バトワスがパベルの返事を待っている間に、カイニー王国からは前にも書いた通りだと返事が来た。
そして、数日後、オルタナ王国から返事が来た。
そこには、使者を送るから、話を聞かせていただくとあった。
「ああ…交渉の場を設けてくれるのか、有難い」
「そんな…もう薬もないのですよね?」
バトワスの元へも薬がどうしてないのかと、問い合わせがあった。オイスラッドに報告を上げていたが、答えは貰っていなかった。
「そうだ、ペアー王国も薬を開発したとあるが」
「だったら、ペアー王国から輸入すればいいじゃない」
居たたまれないシンバリアは、他国から輸入が出来れば、自分の責任を回避できると思い、声を上げた。
「あの国は独自の文化がある、薬の安全性も分からない。高額で、それ以上に何を要求されるか分からないとしてもか?お前が払うのか?お前が責任を持つのか?」
「…それは」
シンバリアはこれまで王妃として、常に尊敬される存在であった。
だが、バトワスが起こしたとも言えるフォンターナ家が出て行った際には、夫人たちに表立って責められることはなかったが、誘いを断られることも多くなり、一番の問題はアニバーサリーの閉店であった。
化粧品、ドレス、食べ物も手に入らなくなった。その上、天候が変わり、美を保てなくなった者も多い。
だが、それもようやく時間が経って、風化していた頃だった。
ゆえに責められることに慣れておらず、どうにか自分の落ち度をなかったことにしたいとしか、考えられないでいた。
「独自の薬草などを使っていると、聞いたことがあります」
「薬には効果あるとしても、何が起こるか分からない。カイニー王国ですら、何名か副作用もあっただろう」
「はい…」
「他の国が開発しても、輸入が出来るか分からない。我が国はまだ出来そうにもない」
研究チームは開発を進めているが、自国の物だけでは、足りないものも多く、輸入も出来ないので、開発には程遠い。
「良い返事が来ればいいが、難しいだろうと考えている」
バトワスは思わず、シンバリアを見たが、息子にそのような目で見られたこともなかったシンバリアは、サッと目を逸らした。
「私が自ら赴こうと思っていたが、規制もあるから、時間は掛かるだろう」
「収束する可能性は…」
「収束はしていくだろうとのことだが、薬が必要がないということではない」
「そうですよね…」
収束しても、もう二度と起こらないわけではない。薬はこれからも確保して置かなくてはならない。
「今も薬を欲している者がいるんだ、どうにか出来ずに何が国王だ…王妃を同席させたことを、後悔している」
オイスラッドもシンバリアを見たが、ついに下を向いてしまった。
「もし、交渉の席があれば、王妃は同席させない。それ以前に、出来るかどうか」
「私も、カイニー王国とオルタナ王国について調べてみます。後は、パベルにも手紙を書いてみましょう」
「パベルか…」
パベルはアーカス王国に留学したままだが、他国にもアーカス王国から短期留学にも行っており、薬の開発も信頼を得て教えて貰っていた。
「はい、あの子は賢いですから、何か打開策を持っているかもしれません」
「そうだな、だが動く前に相談に来なさい」
「はい、承知しております」
バトワスはエルム・フォンターナの件から、動く前に報告を上げることを義務付けられている。
「シンバリアは何もせず、大人しくして置きなさい」
「…っな」
「カイニー王国に謝罪に行く気もないのだろう?自分の責任で薬がないことから、民に合わせる顔もないはずだ」
「…」
バトワスはすぐにパベルにシンバリアのことも包み隠さず、事情を書いて、薬の輸入のことで何かいい案はないかと、手紙を出した。
バトワスがパベルの返事を待っている間に、カイニー王国からは前にも書いた通りだと返事が来た。
そして、数日後、オルタナ王国から返事が来た。
そこには、使者を送るから、話を聞かせていただくとあった。
「ああ…交渉の場を設けてくれるのか、有難い」
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