【完結】悪意か、善意か、破滅か

不愉快な王女への罰３

「謝罪すれば、罰が変わるの？」
「謝罪したいという気持ちではなく、そんな風に考えるのか？」

　明らかに打算による謝罪をするような言い方に、今の国の状況からさせられるはずがない。そんなことも分からないのかと、両親も責任を取る気はあるが、寄り添う気はない気持ちが分かる気がした。

「そ、そうじゃないわ」
「なら、どういう意味だい？王女として最後に迷惑を掛けた謝罪をするか？」
「でも誤解だったの」
「さすがにメーリン、その言葉は聞き飽きたよ」
「っ」

　ルークアにとって、たった一人のきょうだいで、こんな結果を望んでいたわけではないが、さすがに同じことを繰り返すメーリンに苦言を呈した。

「相手の年も知らずに求婚するなど、異常なことなんだよ…」
「でも、お兄様も会ったら分かるわ」
「そういう話ではないと言っただろう。相手が悪かったことは間違いないが、メーリンは相手が分かった上でそのようなことを言ったのだろう？」

　何か同情すべき点を挙げるとすれば、相手が悪かったという点だろう。相手をメーリンは知らなかったのなら、まだどうにか出来たかもしれない。

　だが、メーリンはレオラッド大公閣下の子息だから、フォンターナ家の縁者だから、求婚するようなことを言ったのだ。

「彼と結婚すれば、研究の力にもなれると思ったの…」
「それが叶う可能性はなかったのに、言わなければ、ここまでのことにはならなかった。メーリンは自分で、人生を閉ざすことになったんだ。せめて、ちゃんと理解しなさい」
「私は国のためを思って」

　いつもならメーリンがそう言えば、皆が理解を示してくれていた。

　王女殿下は国のためを思っている、本当にそう思ってもいたが、そう思われることも大事であった。

「それも事実だろうが、言動が伴っていない。こちらは頼む立場なのに、傲慢な態度を取り続けて、オルタナ王国で反感を買い、アジェル王国にも押し掛けて事件を起こし、オルタナ王国をさらに怒らせたんだ。それとも、ハビット王国を窮地に追い込みたいのか？」
「そんなはずないじゃない！」
「ならば、反省して生きて行くことがメーリンに出来ることだろう？」
「私はそんなために」
「そんな生き方をしたくないのなら、なぜこんなことをしたんだ…」

　ルークアは悲痛な声で、項垂れた。

「そ、それは…」
「どんな国でも王族というだけで、自分に価値があると、どこへ行っても敬って貰えると勘違いしたのか？ハビット王国にはそんな力はないと言っただろう？輸入のことだってあるのに、分かっているような顔をして、何も分かっていなかったのか？」
「…」

　王族という者はそういうものだろうと、メーリンは思っていた。

　希望は通るのもので、通らない方がおかしい。だが、そのせいでメーリンは窮地に陥っている。

「これは伝える気はなかったが…父上はハビット王国を守るために、許されることではないと、死罪を望んだのだ」
「死罪？死ねってこと？」
「それほど罪深いことをしたのだ、カイニー王国に薬を止められたら？オルタナ王国やアジェル王国に払えないほどの賠償金を請求されたら？メーリンにどうにか出来るのか？」
「そんなはず…」
「話をしても無駄だったな。時間は沢山あるのだから、しっかり自分と向き合いなさい。送って行こう」

　ルークアはジラルダ刑務所に、メーリンと共に向かった。

　このままでは本当に刑務所に入れられると、メーリンは反省すると叫び始めたが、ルークアは首を振るだけで、っもう会話をする気はなかった。

　主要大臣たちにも許可を得ており、ジラルダ刑務所には準備が整っており、メーリンは無理矢理に独房に入れられた。

　まずは生活についての冊子を読み、生活をするように言われたが、メーリンは泣き喚くだけで、理不尽だとしか、まだ思っていなかった。