180 / 196
ミート・アゲイン3
しおりを挟む
「エルム、子息の離縁された元妻は、別の男の子どもを婚姻中に二人産み、しかも離縁の際にも妊娠していた」
「は、い?」
エルムはジェフとシャーリンが離縁したことは、ゴシップ誌にも載っていたので知っていた。だが、子どものことは初耳であった。
「そう、なの?」
「ああ、事実だよ」
「えっ、そんなことになっていたの?」
エルムは毅然とした態度でハイリーと話していたが、初めて動揺した。
「何それ、気持ち悪い…どうなっているの?おかしいじゃない」
「ああ、考えられないな」
エルムはハイリーを驚愕の目で見つめていた。
「あれはシャーリンが悪いのよ!ジェフは悪くないわ」
ついにエルムの聞きたくもない名前である、ジェフとシャーリンが発された。
「誰の子なの?」
「男娼らしい」
ハイリーはビクリとしたが、エルムはメイリクスが勝手に処理したり、把握していることはいつものことなので、想定内であった。
「嘘でしょ…」
「不貞行為を行い、托卵を行い、どうなっているんだろうな」
「信じられないわ」
「あれは、シャーリンがおかしいのよ!」
エルムも落ち着いてから、ジェフの調査書を読んでいた。
シャーリンもおかしいのは明らかだが、二人とも貴族が結婚前から子作りをしていたというのだから、おかしいことは元からだろうとエルムは冷めた気持ちでいた。
「どうでもいいですけど、おかしいのは元からでしょう?」
「そうよ!そうなの、おかしかったのよ!」
「ご子息も十分、おかしいと思いますわよ?」
「違うわ!ジェフは被害者なの!」
「私にとっては加害者でしたわよ?」
「それは…」
ハイリーも呆けていないので、エルムが何も悪くなかったことは分かっている。
だが、出て行けと言ったわけでもないのに、責められることが理不尽だと感じ続けていたのである。
「それなのに、謝りもしなかった。人としておかしいでしょう?」
「謝罪しようとしたわ」
「全てが露呈してからでしょう?怒られたから謝るなんてことは、幼子ではないのだから、遅いということくらいお分かりになるでしょう?」
オルダもエルムも商売をしているために、タイミングを重要視している。マクローズ伯爵家は、完全に後手に回り過ぎたのである。
「で、でも孫たちは、何も悪くないわ!あなただって、母親ならそう思うでしょう?」
「はあ…」
「本当にいい子たちなの、会って貰ったら分かるの」
エルムも何も知らない生まれただけの子に親の罪を背負えとは言わないが、ジェフとシャーリンの子どもというだけで、エルムには嫌悪するのは当然のことであった。
子どもに罪はなくとも、親のことを言われて苦労するのは本人である。
「もう結構ですわ、私たちは去りますので、後はお好きにどうぞ」
エルムはメイリクスに目配せをして、去ることにした。
「待って、じゃあ、商会だけでも戻してくださらない?ずっと責められているのよ、お母様もきっとお喜びになるでしょう?」
ハイリーは今は呼ばれることもなくなったが、茶会やパーティーで商会の話が出る度に、責められる生活をしていた。
「親なら責任を取るべきでは?」
「商売でしょう?お母様に言ってくださらない?」
「いいえ、こちらにディールの商会が戻ることは、二度とありません」
「ディール?」
「ええ、アニバーサリーはディールの商会でしたの」
ハイリーもディールのことは知っており、アジェル王国にも来てくれないかと思っていた。
「…そんな」
「ディールはアジェル王国をあなた方のせいで見限ったのですよ。ですから、責められるのは当然と言えば、当然ではありませんか?」
「…え」
「アジェル王国にディールの商会が出来ることは絶対にないということです」
「…あ、えっ、そんな」
「奥様っ」
ショックが強すぎたのか、ハイリーは崩れ落ちてしまった。
「は、い?」
エルムはジェフとシャーリンが離縁したことは、ゴシップ誌にも載っていたので知っていた。だが、子どものことは初耳であった。
「そう、なの?」
「ああ、事実だよ」
「えっ、そんなことになっていたの?」
エルムは毅然とした態度でハイリーと話していたが、初めて動揺した。
「何それ、気持ち悪い…どうなっているの?おかしいじゃない」
「ああ、考えられないな」
エルムはハイリーを驚愕の目で見つめていた。
「あれはシャーリンが悪いのよ!ジェフは悪くないわ」
ついにエルムの聞きたくもない名前である、ジェフとシャーリンが発された。
「誰の子なの?」
「男娼らしい」
ハイリーはビクリとしたが、エルムはメイリクスが勝手に処理したり、把握していることはいつものことなので、想定内であった。
「嘘でしょ…」
「不貞行為を行い、托卵を行い、どうなっているんだろうな」
「信じられないわ」
「あれは、シャーリンがおかしいのよ!」
エルムも落ち着いてから、ジェフの調査書を読んでいた。
シャーリンもおかしいのは明らかだが、二人とも貴族が結婚前から子作りをしていたというのだから、おかしいことは元からだろうとエルムは冷めた気持ちでいた。
「どうでもいいですけど、おかしいのは元からでしょう?」
「そうよ!そうなの、おかしかったのよ!」
「ご子息も十分、おかしいと思いますわよ?」
「違うわ!ジェフは被害者なの!」
「私にとっては加害者でしたわよ?」
「それは…」
ハイリーも呆けていないので、エルムが何も悪くなかったことは分かっている。
だが、出て行けと言ったわけでもないのに、責められることが理不尽だと感じ続けていたのである。
「それなのに、謝りもしなかった。人としておかしいでしょう?」
「謝罪しようとしたわ」
「全てが露呈してからでしょう?怒られたから謝るなんてことは、幼子ではないのだから、遅いということくらいお分かりになるでしょう?」
オルダもエルムも商売をしているために、タイミングを重要視している。マクローズ伯爵家は、完全に後手に回り過ぎたのである。
「で、でも孫たちは、何も悪くないわ!あなただって、母親ならそう思うでしょう?」
「はあ…」
「本当にいい子たちなの、会って貰ったら分かるの」
エルムも何も知らない生まれただけの子に親の罪を背負えとは言わないが、ジェフとシャーリンの子どもというだけで、エルムには嫌悪するのは当然のことであった。
子どもに罪はなくとも、親のことを言われて苦労するのは本人である。
「もう結構ですわ、私たちは去りますので、後はお好きにどうぞ」
エルムはメイリクスに目配せをして、去ることにした。
「待って、じゃあ、商会だけでも戻してくださらない?ずっと責められているのよ、お母様もきっとお喜びになるでしょう?」
ハイリーは今は呼ばれることもなくなったが、茶会やパーティーで商会の話が出る度に、責められる生活をしていた。
「親なら責任を取るべきでは?」
「商売でしょう?お母様に言ってくださらない?」
「いいえ、こちらにディールの商会が戻ることは、二度とありません」
「ディール?」
「ええ、アニバーサリーはディールの商会でしたの」
ハイリーもディールのことは知っており、アジェル王国にも来てくれないかと思っていた。
「…そんな」
「ディールはアジェル王国をあなた方のせいで見限ったのですよ。ですから、責められるのは当然と言えば、当然ではありませんか?」
「…え」
「アジェル王国にディールの商会が出来ることは絶対にないということです」
「…あ、えっ、そんな」
「奥様っ」
ショックが強すぎたのか、ハイリーは崩れ落ちてしまった。
3,782
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる