【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ

文字の大きさ
90 / 118

真実4

「事実なの?覚えているんでしょう?」
「6歳の時に何かあったのか?」

 マトムはおかしなことを言い出す頃に、何かあったのだろうと察した。だが、アレクスは口を開かない。

「アレクス様、ユーリに後悔の気持ちがあるのならば、ご自身で仰ってください。素直に話してくだされば、伯爵家に戻ることを考えてもいいと思っています」

 サイラは最後の手段だと取って置いた手段を使うことにした。そして、グラーフ伯爵家にいた頃のようにアレクスに優しく話し掛けた。

「メ、メルベールに言われたんだ。ユーリはお父様を嫌っている、話もしたくなくて、苦しそうだと…だからあまり構わないで欲しいと」
「っな、そんなこと、お父様、そんなこと私は言ってないわ!酷い!」

 メルベールはまさか自分のこと言われるとは思っておらず、声を荒げた。

「メルベール、黙りなさい」
「黙っていられないわ、冤罪じゃない!」
「ユーリの書いていたことも概ね、同じです。メルベールがお父様に私が嫌っている、話したくもないと言っているのを聞いたと」
「そんなこと言っていないわ!6歳?そんなの覚えていないわ!」

 アレクスはメルベールを驚いた顔で見つめた。

「お父様に違うと言いたかったけど、いつ言えばいいのか分からない。その間にも、またメルベールが言っていたのを聞いた、違うと入っては行けなかった。そして、大公閣下夫妻に言ったようなことを、言われるようになったと…そこからはそうなのだと思うようにしたと」
「何てことだ…そんな前から…」

 元々静かな子だと思っていたが、そんな風に言われていたのならば、何も言いたくはなくなるだろう。我慢してずっと耐えて、アレクスの言ったことを信じていたわけではなくても、そう生きることが、沁みついていたのかもしれない。

「アレクス!信じたというのか?」
「いや、子どもの言うことだと、始めは信じなかった。ユーリは内向的で、あまり話してはくれなかった」
「それぞれの性格だろう?」
「ああ、だが、ユーリが書いていたように、何度も何度もユーリと話そうとすると、メルベールに言われたんだ。ユーリはお父様を嫌っている。構われることが辛いのだと…確かにユーリは自ら話すことはあまりなかった、嫌がっているのだと…どんどん思うようになっていった。メルベール、本当に覚えていないのか?」

 あんなに何度も言って来たことだ、始めは構って貰いたいのかと可愛く思ったが、同時にユーリのオドオドした様子も気に入らなくなり、何をしても苛立つようになった。

 でもユーリは上手く伝えられなかっただけだったのかもしれない。

「覚えていないわよ!そんなこと信じることがおかしいんじゃないの!」
「…そうだな…おかしい、おかしいよな」
「それでメルベールだけがいればいいと思って、あんなことを?」
「そうだ、私のことを嫌っているユーリにぶつけることで、気分がスッとした…嫌われているが、構ってやると言う気持ちだった…」
「ほら!おかしいのはお父様じゃない!」

 メルベールは勝ち誇ったような顔をしていたが、何にも勝っていない。

「メルベール!いい加減にしろ…本当に覚えていないのか?」

 怒鳴ったのはキリアムだった、まさかアレクスの態度までがメルベールのせいだとは思わなかった。ただ訳もなく、メルベールが可愛いだけなのかと思っていた。

「覚えていないわ!子どもの言ったことよ?構って欲しくて言ったんじゃない?」
「いくら子どもの言ったことでも、アベリーが許されない様に、君も許されることではないだろう」
「アベリーは関係ないでしょう!」

 関係がないわけがない、アベリーもおかしいと思っていたが、メルベールはおかしいまま成長していたのだ。

あなたにおすすめの小説

【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです

唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。 すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。 「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて―― 一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。 今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

【完結】名無しの物語

ジュレヌク
恋愛
『やはり、こちらを貰おう』 父が借金の方に娘を売る。 地味で無表情な姉は、21歳 美人で華やかな異母妹は、16歳。     45歳の男は、姉ではなく妹を選んだ。 侯爵家令嬢として生まれた姉は、家族を捨てる計画を立てていた。 甘い汁を吸い付くし、次の宿主を求め、異母妹と義母は、姉の婚約者を奪った。 男は、すべてを知った上で、妹を選んだ。 登場人物に、名前はない。 それでも、彼らは、物語を奏でる。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。