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バートロ伯爵家の罪3
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フォリッチ公爵に呼ばれたマスタール侯爵はフォリッチ公爵邸に着き、トワス・ビイズが案内すると、そこには公爵とアイレットがいた。
「アイレット?失礼いたしました、ディオス・マスタールでございます」
「驚いただろうが、掛けてくれ」
「はい、なぜ娘がいるのでしょうか」
父は娘に釘付けになりながら、席に着いた。
「お嬢さんの話を聞いて欲しい」
「お父様、あなたは正義ですよね?」
「何を聞くんだ、当たり前だろう」
なぜフォリッチ公爵の前で、娘から正義を問われなければならないのだ。
「昔からバートロ伯爵家のお話をよくされていましたよね、それで私も詳細を読んでみたいと思い、先生に頼みましたら、フォリッチ公爵様が力を貸してくれました」
「私に言ってくれれば」
「私は誰の意見もない調査を見たかったのです。お父様の調査だと、主観がお父様でしょう?」
「それはそうだな、まさか冤罪とでも言うのか?あり得ないぞ」
「冤罪が含まれているかもしれないということです」
「そんなことはあり得ない」
邸は焼け落ちてしまって、書類などは燃えてしまったが、仕入れ先や輸入先、使用人から話を聞き、残された物で調べられるだけ調べたはずだ。
「ワインの密輸はどうでしたか?」
「確か安いワインのラベルに張り替えて、高級ワインを密輸していたと」
「どう調査されましたか」
「確か、焼け落ちたワイン貯蔵庫に、割れたワインの瓶の欠片があって、その後に別の倉庫から残ったワインが出て来て、輸入したワインとは違うラベルが張り替えられており、密輸されていたと。ただ売った先までは分からなかった」
輸入先はすぐ分かったが、売った先までは分からない上に、名乗り出て来ることもなかった。
「見付かったワインは少なかったのではありませんか」
「ああ、10本もなかったと思う。これが冤罪だというのか?」
「きっかけはバートロ伯爵家の仕入れから、ワインを好んでいるように思えなかったことです。そして使用人の証言で、夫妻はワインを好まないこと、ワイン貯蔵庫などなかったことが分かりました」
「なかった?」
どういうことだ、確かにワインがあったと調べにあったはずだ。
「バートロ伯爵家にはワイン貯蔵庫は存在していなかったそうだ。建てた際の確認も取れている。そのワインのあった部屋というのは使っていない部屋で、物置として使っていたそうだ。そんなところに高級ワインを置くなんて、まず考えられない」
「使用人に聞けば分かることですが、邸は焼け落ち、どこに何があったか分からないのに、わざわざその部屋をワイン貯蔵庫とした者がいるということです。必要だったから、ではないでしょうか」
私も邸のあった場所に行ったが、何がどこにあったかは分からないほどであった。おそらく間取り図から、ワイン貯蔵庫だったとされたのではないか。だが、存在していないとすれば、適当に書いたか、意図的に書かれたか。
「意図的にワイン貯蔵庫としたと言いたいのだな?」
「はい、後は貴族の邸にはワイン貯蔵庫があるという思い込みです」
「まあ、大きな邸にはあるだろうからな。そして使用人によると、酒類は食料貯蔵庫にあったそうだ。キッチンのすぐ側で、人の出入りも激しい。誰かがこっそり潜ませるのは難しい上に、気付かれる可能性も高いからな。あと新事実だが、どうやらバートロ伯爵家は先祖にワインで亡くなった方がいたらしい。それでワインはご法度とされていたそうだ」
「そうだったのですね」
アイレットはどこかくすぐったい、妙な気持ちになった。
本来ならアイレットも心は加害者である、クーデターを起こされるほどの罪が、1つ冤罪だったところで他の罪が消えるわけではないのは分かっている。だが、罪の中に罪を隠し、拡大するのならば防がなくてはならない。
だが、同時にこれでマスタール侯爵家に生まれた意味、そして責任は取れるのではないかと感じていた。
「アイレット?失礼いたしました、ディオス・マスタールでございます」
「驚いただろうが、掛けてくれ」
「はい、なぜ娘がいるのでしょうか」
父は娘に釘付けになりながら、席に着いた。
「お嬢さんの話を聞いて欲しい」
「お父様、あなたは正義ですよね?」
「何を聞くんだ、当たり前だろう」
なぜフォリッチ公爵の前で、娘から正義を問われなければならないのだ。
「昔からバートロ伯爵家のお話をよくされていましたよね、それで私も詳細を読んでみたいと思い、先生に頼みましたら、フォリッチ公爵様が力を貸してくれました」
「私に言ってくれれば」
「私は誰の意見もない調査を見たかったのです。お父様の調査だと、主観がお父様でしょう?」
「それはそうだな、まさか冤罪とでも言うのか?あり得ないぞ」
「冤罪が含まれているかもしれないということです」
「そんなことはあり得ない」
邸は焼け落ちてしまって、書類などは燃えてしまったが、仕入れ先や輸入先、使用人から話を聞き、残された物で調べられるだけ調べたはずだ。
「ワインの密輸はどうでしたか?」
「確か安いワインのラベルに張り替えて、高級ワインを密輸していたと」
「どう調査されましたか」
「確か、焼け落ちたワイン貯蔵庫に、割れたワインの瓶の欠片があって、その後に別の倉庫から残ったワインが出て来て、輸入したワインとは違うラベルが張り替えられており、密輸されていたと。ただ売った先までは分からなかった」
輸入先はすぐ分かったが、売った先までは分からない上に、名乗り出て来ることもなかった。
「見付かったワインは少なかったのではありませんか」
「ああ、10本もなかったと思う。これが冤罪だというのか?」
「きっかけはバートロ伯爵家の仕入れから、ワインを好んでいるように思えなかったことです。そして使用人の証言で、夫妻はワインを好まないこと、ワイン貯蔵庫などなかったことが分かりました」
「なかった?」
どういうことだ、確かにワインがあったと調べにあったはずだ。
「バートロ伯爵家にはワイン貯蔵庫は存在していなかったそうだ。建てた際の確認も取れている。そのワインのあった部屋というのは使っていない部屋で、物置として使っていたそうだ。そんなところに高級ワインを置くなんて、まず考えられない」
「使用人に聞けば分かることですが、邸は焼け落ち、どこに何があったか分からないのに、わざわざその部屋をワイン貯蔵庫とした者がいるということです。必要だったから、ではないでしょうか」
私も邸のあった場所に行ったが、何がどこにあったかは分からないほどであった。おそらく間取り図から、ワイン貯蔵庫だったとされたのではないか。だが、存在していないとすれば、適当に書いたか、意図的に書かれたか。
「意図的にワイン貯蔵庫としたと言いたいのだな?」
「はい、後は貴族の邸にはワイン貯蔵庫があるという思い込みです」
「まあ、大きな邸にはあるだろうからな。そして使用人によると、酒類は食料貯蔵庫にあったそうだ。キッチンのすぐ側で、人の出入りも激しい。誰かがこっそり潜ませるのは難しい上に、気付かれる可能性も高いからな。あと新事実だが、どうやらバートロ伯爵家は先祖にワインで亡くなった方がいたらしい。それでワインはご法度とされていたそうだ」
「そうだったのですね」
アイレットはどこかくすぐったい、妙な気持ちになった。
本来ならアイレットも心は加害者である、クーデターを起こされるほどの罪が、1つ冤罪だったところで他の罪が消えるわけではないのは分かっている。だが、罪の中に罪を隠し、拡大するのならば防がなくてはならない。
だが、同時にこれでマスタール侯爵家に生まれた意味、そして責任は取れるのではないかと感じていた。
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