19 / 67
バートロ伯爵家の罪4
しおりを挟む
「ですが、好まなくてもお金のために密輸したということも」
「可能性はあります。だが、他にも似たような事案が2件。1つは同じ手口でした、もう1つはワインの中に麻薬が隠されていた」
「麻薬?」
「ああ、カットリーオ商会の人身売買の事件ですよ。シガーの密輸もありましたが、ワインもあり、麻薬が発見されたでしょう?ボトルのラベルで巧妙に隠して」
ワインボトルの中に麻薬を入れて、丁度見えないようにラベルで隠してあった。おそらく麻薬を売るためのワインだろうということだった。
「はい、確か10グラム見付かりました」
「どちらもマスタール侯爵家が調査に入った事案だ。そして、バートロ伯爵は亡くなっているから聞けないが、ワインの密輸はやっていないと言っている。どれも重大事件の影にひっそりと置かれている罪状だと思わないか?」
「まさか、私が行ったとでも言うのですか」
さすがに正義を掲げて来たマスタールにあってはならないことだ。
「いや、違う。見付かったのは10グラムだったが、これが別の人間が行っていたのなら、もっと麻薬が流通しているかもしれないということなんだよ」
「そ、それは…そうです」
安いワインと偽る高級ワインよりも、麻薬の方がお金になる。そして同じ手は何度も使えない。それよりも見付かっていない麻薬があるとしたら大変なことだ。
麻薬の事件はなくならないのが現状だ。
「アイレット嬢がね、ある家のお金の流れを調べて欲しいと言った。調べると確かに妙だった。収入よりも遥かにいい暮らしをしていた。今現在もです」
「どこの家ですか」
「ソック伯爵家だ」
「っな!」
ソック伯爵家はハービスの妻でリリンナの実家である。そしてマスタールの遠縁でもあり、監査を共にして来た信頼すべき家だ。
「私はお兄様に恨まれるでしょうけど、正義のマスタールは見逃すことは出来ませんでしょう?ただソック伯爵家だけとも限りません」
「でもなぜだ」
「リリンナ嬢が私に言ったのです。実家より裕福な暮らしが出来ると思ったのに、全然出来ないじゃない。貧乏だったのねと」
「そんなことを…」
「侯爵家を貧乏だというのならば、リリンナ嬢はどれだけいい暮らしをして来たのだろうと思いました。ですが、ハービスお兄様が、伯爵家ではお目に掛かれないだろうと言っていたことがありまして、リリンナが顔を引き攣らせていたのを見たのです」
「リリンナも知っているということか?」
ハービスがリリンナがパーティーがあるわけでもないのに、ドレスを新調しようとして困っていると言っていた。まさか、そういう意味だったのか。てっきり、贅沢が出来ると思って、我儘を言っているのだと思っていた。
「それは分かりませんが、何となく把握しているのではないでしょうか」
アイレットの前世がまさにそうだった。領民の声を聞いたわけではないが、父が怒っていて、何も知らないとは言えない境遇にあった。何かあったのかもしれないと思いながらも、何も出来ないことをよく知っている。
「調べたら、真っ当なワインの輸入を行っている。量も多いから、紛れ込ませることは出来るだろう」
「確かに贈って貰ったりしていました」
「真っ当な物なら問題はない。だがね、簡単に調べただけでも、娘は頻繁にドレスを作ったり、宝石を買ったりしていた。夫人も、息子も、本人も同じような贅沢をしている。収入が増えたわけでもない、もしかしたら現在もワインの密輸を行っているか、別の物にしている可能性すらある」
「そんな…」
ソック伯爵家のリリンナの父である現在の当主マットとは、旧知の仲だ。贅沢な暮らしをしていると思ったことはなかったが、頻繁に服や靴を新調しており、このくらいしか楽しみがないですからと言っていた。
父親同士も仲が良い、もしバートロ伯爵家の件が事実なら、父親の方も不正を行っていた可能性がある。
「お父様が率先して調べるべきではありませんか」
「ああ…そうだな」
「うちの者を使うといい、どこに仲間がいるか分からない」
「ありがとうございます」
「可能性はあります。だが、他にも似たような事案が2件。1つは同じ手口でした、もう1つはワインの中に麻薬が隠されていた」
「麻薬?」
「ああ、カットリーオ商会の人身売買の事件ですよ。シガーの密輸もありましたが、ワインもあり、麻薬が発見されたでしょう?ボトルのラベルで巧妙に隠して」
ワインボトルの中に麻薬を入れて、丁度見えないようにラベルで隠してあった。おそらく麻薬を売るためのワインだろうということだった。
「はい、確か10グラム見付かりました」
「どちらもマスタール侯爵家が調査に入った事案だ。そして、バートロ伯爵は亡くなっているから聞けないが、ワインの密輸はやっていないと言っている。どれも重大事件の影にひっそりと置かれている罪状だと思わないか?」
「まさか、私が行ったとでも言うのですか」
さすがに正義を掲げて来たマスタールにあってはならないことだ。
「いや、違う。見付かったのは10グラムだったが、これが別の人間が行っていたのなら、もっと麻薬が流通しているかもしれないということなんだよ」
「そ、それは…そうです」
安いワインと偽る高級ワインよりも、麻薬の方がお金になる。そして同じ手は何度も使えない。それよりも見付かっていない麻薬があるとしたら大変なことだ。
麻薬の事件はなくならないのが現状だ。
「アイレット嬢がね、ある家のお金の流れを調べて欲しいと言った。調べると確かに妙だった。収入よりも遥かにいい暮らしをしていた。今現在もです」
「どこの家ですか」
「ソック伯爵家だ」
「っな!」
ソック伯爵家はハービスの妻でリリンナの実家である。そしてマスタールの遠縁でもあり、監査を共にして来た信頼すべき家だ。
「私はお兄様に恨まれるでしょうけど、正義のマスタールは見逃すことは出来ませんでしょう?ただソック伯爵家だけとも限りません」
「でもなぜだ」
「リリンナ嬢が私に言ったのです。実家より裕福な暮らしが出来ると思ったのに、全然出来ないじゃない。貧乏だったのねと」
「そんなことを…」
「侯爵家を貧乏だというのならば、リリンナ嬢はどれだけいい暮らしをして来たのだろうと思いました。ですが、ハービスお兄様が、伯爵家ではお目に掛かれないだろうと言っていたことがありまして、リリンナが顔を引き攣らせていたのを見たのです」
「リリンナも知っているということか?」
ハービスがリリンナがパーティーがあるわけでもないのに、ドレスを新調しようとして困っていると言っていた。まさか、そういう意味だったのか。てっきり、贅沢が出来ると思って、我儘を言っているのだと思っていた。
「それは分かりませんが、何となく把握しているのではないでしょうか」
アイレットの前世がまさにそうだった。領民の声を聞いたわけではないが、父が怒っていて、何も知らないとは言えない境遇にあった。何かあったのかもしれないと思いながらも、何も出来ないことをよく知っている。
「調べたら、真っ当なワインの輸入を行っている。量も多いから、紛れ込ませることは出来るだろう」
「確かに贈って貰ったりしていました」
「真っ当な物なら問題はない。だがね、簡単に調べただけでも、娘は頻繁にドレスを作ったり、宝石を買ったりしていた。夫人も、息子も、本人も同じような贅沢をしている。収入が増えたわけでもない、もしかしたら現在もワインの密輸を行っているか、別の物にしている可能性すらある」
「そんな…」
ソック伯爵家のリリンナの父である現在の当主マットとは、旧知の仲だ。贅沢な暮らしをしていると思ったことはなかったが、頻繁に服や靴を新調しており、このくらいしか楽しみがないですからと言っていた。
父親同士も仲が良い、もしバートロ伯爵家の件が事実なら、父親の方も不正を行っていた可能性がある。
「お父様が率先して調べるべきではありませんか」
「ああ…そうだな」
「うちの者を使うといい、どこに仲間がいるか分からない」
「ありがとうございます」
932
あなたにおすすめの小説
私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる