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バートロ伯爵家の罪4
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「ですが、好まなくてもお金のために密輸したということも」
「可能性はあります。だが、他にも似たような事案が2件。1つは同じ手口でした、もう1つはワインの中に麻薬が隠されていた」
「麻薬?」
「ああ、カットリーオ商会の人身売買の事件ですよ。シガーの密輸もありましたが、ワインもあり、麻薬が発見されたでしょう?ボトルのラベルで巧妙に隠して」
ワインボトルの中に麻薬を入れて、丁度見えないようにラベルで隠してあった。おそらく麻薬を売るためのワインだろうということだった。
「はい、確か10グラム見付かりました」
「どちらもマスタール侯爵家が調査に入った事案だ。そして、バートロ伯爵は亡くなっているから聞けないが、ワインの密輸はやっていないと言っている。どれも重大事件の影にひっそりと置かれている罪状だと思わないか?」
「まさか、私が行ったとでも言うのですか」
さすがに正義を掲げて来たマスタールにあってはならないことだ。
「いや、違う。見付かったのは10グラムだったが、これが別の人間が行っていたのなら、もっと麻薬が流通しているかもしれないということなんだよ」
「そ、それは…そうです」
安いワインと偽る高級ワインよりも、麻薬の方がお金になる。そして同じ手は何度も使えない。それよりも見付かっていない麻薬があるとしたら大変なことだ。
麻薬の事件はなくならないのが現状だ。
「アイレット嬢がね、ある家のお金の流れを調べて欲しいと言った。調べると確かに妙だった。収入よりも遥かにいい暮らしをしていた。今現在もです」
「どこの家ですか」
「ソック伯爵家だ」
「っな!」
ソック伯爵家はハービスの妻でリリンナの実家である。そしてマスタールの遠縁でもあり、監査を共にして来た信頼すべき家だ。
「私はお兄様に恨まれるでしょうけど、正義のマスタールは見逃すことは出来ませんでしょう?ただソック伯爵家だけとも限りません」
「でもなぜだ」
「リリンナ嬢が私に言ったのです。実家より裕福な暮らしが出来ると思ったのに、全然出来ないじゃない。貧乏だったのねと」
「そんなことを…」
「侯爵家を貧乏だというのならば、リリンナ嬢はどれだけいい暮らしをして来たのだろうと思いました。ですが、ハービスお兄様が、伯爵家ではお目に掛かれないだろうと言っていたことがありまして、リリンナが顔を引き攣らせていたのを見たのです」
「リリンナも知っているということか?」
ハービスがリリンナがパーティーがあるわけでもないのに、ドレスを新調しようとして困っていると言っていた。まさか、そういう意味だったのか。てっきり、贅沢が出来ると思って、我儘を言っているのだと思っていた。
「それは分かりませんが、何となく把握しているのではないでしょうか」
アイレットの前世がまさにそうだった。領民の声を聞いたわけではないが、父が怒っていて、何も知らないとは言えない境遇にあった。何かあったのかもしれないと思いながらも、何も出来ないことをよく知っている。
「調べたら、真っ当なワインの輸入を行っている。量も多いから、紛れ込ませることは出来るだろう」
「確かに贈って貰ったりしていました」
「真っ当な物なら問題はない。だがね、簡単に調べただけでも、娘は頻繁にドレスを作ったり、宝石を買ったりしていた。夫人も、息子も、本人も同じような贅沢をしている。収入が増えたわけでもない、もしかしたら現在もワインの密輸を行っているか、別の物にしている可能性すらある」
「そんな…」
ソック伯爵家のリリンナの父である現在の当主マットとは、旧知の仲だ。贅沢な暮らしをしていると思ったことはなかったが、頻繁に服や靴を新調しており、このくらいしか楽しみがないですからと言っていた。
父親同士も仲が良い、もしバートロ伯爵家の件が事実なら、父親の方も不正を行っていた可能性がある。
「お父様が率先して調べるべきではありませんか」
「ああ…そうだな」
「うちの者を使うといい、どこに仲間がいるか分からない」
「ありがとうございます」
「可能性はあります。だが、他にも似たような事案が2件。1つは同じ手口でした、もう1つはワインの中に麻薬が隠されていた」
「麻薬?」
「ああ、カットリーオ商会の人身売買の事件ですよ。シガーの密輸もありましたが、ワインもあり、麻薬が発見されたでしょう?ボトルのラベルで巧妙に隠して」
ワインボトルの中に麻薬を入れて、丁度見えないようにラベルで隠してあった。おそらく麻薬を売るためのワインだろうということだった。
「はい、確か10グラム見付かりました」
「どちらもマスタール侯爵家が調査に入った事案だ。そして、バートロ伯爵は亡くなっているから聞けないが、ワインの密輸はやっていないと言っている。どれも重大事件の影にひっそりと置かれている罪状だと思わないか?」
「まさか、私が行ったとでも言うのですか」
さすがに正義を掲げて来たマスタールにあってはならないことだ。
「いや、違う。見付かったのは10グラムだったが、これが別の人間が行っていたのなら、もっと麻薬が流通しているかもしれないということなんだよ」
「そ、それは…そうです」
安いワインと偽る高級ワインよりも、麻薬の方がお金になる。そして同じ手は何度も使えない。それよりも見付かっていない麻薬があるとしたら大変なことだ。
麻薬の事件はなくならないのが現状だ。
「アイレット嬢がね、ある家のお金の流れを調べて欲しいと言った。調べると確かに妙だった。収入よりも遥かにいい暮らしをしていた。今現在もです」
「どこの家ですか」
「ソック伯爵家だ」
「っな!」
ソック伯爵家はハービスの妻でリリンナの実家である。そしてマスタールの遠縁でもあり、監査を共にして来た信頼すべき家だ。
「私はお兄様に恨まれるでしょうけど、正義のマスタールは見逃すことは出来ませんでしょう?ただソック伯爵家だけとも限りません」
「でもなぜだ」
「リリンナ嬢が私に言ったのです。実家より裕福な暮らしが出来ると思ったのに、全然出来ないじゃない。貧乏だったのねと」
「そんなことを…」
「侯爵家を貧乏だというのならば、リリンナ嬢はどれだけいい暮らしをして来たのだろうと思いました。ですが、ハービスお兄様が、伯爵家ではお目に掛かれないだろうと言っていたことがありまして、リリンナが顔を引き攣らせていたのを見たのです」
「リリンナも知っているということか?」
ハービスがリリンナがパーティーがあるわけでもないのに、ドレスを新調しようとして困っていると言っていた。まさか、そういう意味だったのか。てっきり、贅沢が出来ると思って、我儘を言っているのだと思っていた。
「それは分かりませんが、何となく把握しているのではないでしょうか」
アイレットの前世がまさにそうだった。領民の声を聞いたわけではないが、父が怒っていて、何も知らないとは言えない境遇にあった。何かあったのかもしれないと思いながらも、何も出来ないことをよく知っている。
「調べたら、真っ当なワインの輸入を行っている。量も多いから、紛れ込ませることは出来るだろう」
「確かに贈って貰ったりしていました」
「真っ当な物なら問題はない。だがね、簡単に調べただけでも、娘は頻繁にドレスを作ったり、宝石を買ったりしていた。夫人も、息子も、本人も同じような贅沢をしている。収入が増えたわけでもない、もしかしたら現在もワインの密輸を行っているか、別の物にしている可能性すらある」
「そんな…」
ソック伯爵家のリリンナの父である現在の当主マットとは、旧知の仲だ。贅沢な暮らしをしていると思ったことはなかったが、頻繁に服や靴を新調しており、このくらいしか楽しみがないですからと言っていた。
父親同士も仲が良い、もしバートロ伯爵家の件が事実なら、父親の方も不正を行っていた可能性がある。
「お父様が率先して調べるべきではありませんか」
「ああ…そうだな」
「うちの者を使うといい、どこに仲間がいるか分からない」
「ありがとうございます」
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