20 / 67
バートロ伯爵家の罪5
しおりを挟む
「調査はマスタール侯爵の方が上手だろうからね、私は調べにくいだろうから、引き続きソック伯爵家を調べよう。アイレット嬢は私が送るよ、我が家と関りがあると思わせておいた方が都合がいい」
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
マスタール侯爵はフォリッチ公爵の力を借りて、調査に乗り出すことになった。内部に仲間がいるかもしれないということで、慎重に動く必要がある。
バートロ伯爵家に関しては証拠も少なく、アイレットが言ったことが全てであったが、他の2件に関しては再調査が必要だ。微罪とは言い難いが、フォリッチ公爵が言うように大きな事件の裏に隠してあるように感じる。
1つはバートロ伯爵家のクーデター、1つはカットリーオ商会の人身売買。そしてもう1つはサオン子爵家の麻薬の製造と密売、まさに麻薬の事件であった。
ディオス・マスタールは邸ではなく、王宮の自身の執務室で、トワス・ビイズとこれからの調査について話し合い、方針を固めた。事実ならば、責任を取らなくてはいけない立場だ、無論、隠そうという気はない。
フォリッチ公爵なら秘密裏に調べることが出来ただろうが、見付けたのがアイレットで良かった。アイレットは事情を知っているが、むやみに誰かに話すことはない。それよりも、アイレットとこんなにも言葉を交わしたこと自体が初めてであった。
きっかけは違和感だったのだろうが、探れば探るほど、疑わしい。事実でなければいいと思うが、心証としては疑わざる得ない。
トワスに指示を出し、疲労困憊で邸に戻り、お茶を飲んでいると、ようやくアイレットも帰って来た。フォリッチ公爵と話でもしていたのだろう。
「フォリッチ公爵様に送って貰ったのか?」
「いえ、トレース様とパルシエ様が送ってくださいました」
「そうか」
パルシエ様とアイレットは同じ年だったはずだ、面識があったのだろうか。
「知り合いだったのか?」
「パルシエ様とは学園で挨拶はしたことがありますが、トレース様は初めてお会いしました」
「そうだったのか」
「どういうこと!」
面倒な者に見付かってしまった、扉を開けたまま話していたので、アデリーナに聞こえてしまったようだ。
「何でアイレットがトレース様なんて言ってるの!」
「お姉様、私は妹君のパルシエ様に招かれただけです。そこにトレース様がいらっしゃっただけです」
「どうして名前呼んでいるのよ!」
「それはフォリッチ公爵令息様と呼ぶのは長いから、そう呼んでくれとおっしゃったからです。そう言われて、呼ばない方が失礼ではありませんか」
「そう言って、トレース様が自分を好きだなんて思っていないでしょうね?ああ、恥ずかしい。お子様は勘違いしない方が身のためよ」
名前を呼ぶ許可を貰って、浮かれているんじゃないの!イライラする。
「アデリーナ、お前がとやかく言うことではない」
「でも、なんであんたがフォリッチ公爵家と関わる必要があるのよ!」
一時は自分が嫁ぐはずだった場所にアイレットが行っていたことが許せない。あの時、余計なことを言わなければ、もう嫁いでいたかもしれない。そもそも、アイレットなんていなければ良かったのにとすら思っている。
「ですからパルシエ様に招かれたと申し上げています」
「じゃあ、私を褒めてくれたの!変なこと言ってないでしょうね」
「アデリーナ!いい加減にしなさい、お前は何を言っているんだ!」
ふんと言いながら、アデリーナは去って行った。
「前にトレース様と縁談があったのだが、上手くいかなかったんだ」
「そうでしたか、もう部屋に戻ってよろしいですか」
「アイレット、今日はありがとう」
「いえ、全ては偶然ですから」
夕食でもアデリーナは面白くなかったようで、アイレットを見ては睨み付けており、父はこれでは縁談など来るはずないと感じた。
「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」
マスタール侯爵はフォリッチ公爵の力を借りて、調査に乗り出すことになった。内部に仲間がいるかもしれないということで、慎重に動く必要がある。
バートロ伯爵家に関しては証拠も少なく、アイレットが言ったことが全てであったが、他の2件に関しては再調査が必要だ。微罪とは言い難いが、フォリッチ公爵が言うように大きな事件の裏に隠してあるように感じる。
1つはバートロ伯爵家のクーデター、1つはカットリーオ商会の人身売買。そしてもう1つはサオン子爵家の麻薬の製造と密売、まさに麻薬の事件であった。
ディオス・マスタールは邸ではなく、王宮の自身の執務室で、トワス・ビイズとこれからの調査について話し合い、方針を固めた。事実ならば、責任を取らなくてはいけない立場だ、無論、隠そうという気はない。
フォリッチ公爵なら秘密裏に調べることが出来ただろうが、見付けたのがアイレットで良かった。アイレットは事情を知っているが、むやみに誰かに話すことはない。それよりも、アイレットとこんなにも言葉を交わしたこと自体が初めてであった。
きっかけは違和感だったのだろうが、探れば探るほど、疑わしい。事実でなければいいと思うが、心証としては疑わざる得ない。
トワスに指示を出し、疲労困憊で邸に戻り、お茶を飲んでいると、ようやくアイレットも帰って来た。フォリッチ公爵と話でもしていたのだろう。
「フォリッチ公爵様に送って貰ったのか?」
「いえ、トレース様とパルシエ様が送ってくださいました」
「そうか」
パルシエ様とアイレットは同じ年だったはずだ、面識があったのだろうか。
「知り合いだったのか?」
「パルシエ様とは学園で挨拶はしたことがありますが、トレース様は初めてお会いしました」
「そうだったのか」
「どういうこと!」
面倒な者に見付かってしまった、扉を開けたまま話していたので、アデリーナに聞こえてしまったようだ。
「何でアイレットがトレース様なんて言ってるの!」
「お姉様、私は妹君のパルシエ様に招かれただけです。そこにトレース様がいらっしゃっただけです」
「どうして名前呼んでいるのよ!」
「それはフォリッチ公爵令息様と呼ぶのは長いから、そう呼んでくれとおっしゃったからです。そう言われて、呼ばない方が失礼ではありませんか」
「そう言って、トレース様が自分を好きだなんて思っていないでしょうね?ああ、恥ずかしい。お子様は勘違いしない方が身のためよ」
名前を呼ぶ許可を貰って、浮かれているんじゃないの!イライラする。
「アデリーナ、お前がとやかく言うことではない」
「でも、なんであんたがフォリッチ公爵家と関わる必要があるのよ!」
一時は自分が嫁ぐはずだった場所にアイレットが行っていたことが許せない。あの時、余計なことを言わなければ、もう嫁いでいたかもしれない。そもそも、アイレットなんていなければ良かったのにとすら思っている。
「ですからパルシエ様に招かれたと申し上げています」
「じゃあ、私を褒めてくれたの!変なこと言ってないでしょうね」
「アデリーナ!いい加減にしなさい、お前は何を言っているんだ!」
ふんと言いながら、アデリーナは去って行った。
「前にトレース様と縁談があったのだが、上手くいかなかったんだ」
「そうでしたか、もう部屋に戻ってよろしいですか」
「アイレット、今日はありがとう」
「いえ、全ては偶然ですから」
夕食でもアデリーナは面白くなかったようで、アイレットを見ては睨み付けており、父はこれでは縁談など来るはずないと感じた。
941
あなたにおすすめの小説
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる