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王太子
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喪が明けて、15歳のユリウス、14歳のマイノスから婚約者を決めようかという話にようやくなった。
アンセムの場合はアイリーンが降りて、アンセムしかいなかったが、六人もいるので、誰が王太子になってもいいと考えているが、ユリウスに問題がない限りは、王太子とすると話してもあった。
アンセムは二人を呼び出して、改めて話をすることにした。
「やっぱり私が王太子ですか…」
「私も兄上が良いと思うけど?」
「マイノスは、王弟として支えていくか、大公となるか、婿に行くか」
「私は兄上が決まってから考えます」
「ずるいぞ!私も支える方があっているんですよね…」
二人のどちらでも問題はないが、一緒に訓練をしていたり、兄弟仲もいいので、争うようなことがなくていいのだが、二人ともが煮え切らない状態である。
「正直、カイルスでもいいと思っています」
カイルスはまだ2歳、相変わらずソアリスを追いかけ回している。
「それは、破天荒な王になりそうじゃないか?」
「ああ、それだ。母上を支えなくてはという気持ちが強いのだと思います。だからカイルスを支えてもいいと思っているんだ」
「そうかも…」
「ソアリスを?」
「はい、支える方に慣れてしまって、支えられる考えが浮かばないと言うか」
マイノスも横でうんうんと頷いており、確かにソアリスを子どもたちがフォローしているのを、何度か見掛けている。
「母上も公の場では仕出かすわけではないのですけど、仕出かすんじゃないかという思考に憑りつかれているのだと思います」
「分かる」
「それは確かに分かる、だがソアリスは放って置いても意外と大丈夫だ」
「それも分かってはいるんです」
母親が規格外過ぎて、世話焼き体質にしてしまったのか。
「婚約者にしたい相手はいないのか?」
「はい、ですので、もう少し考えたいです」
「私もです」
皆、教育はきちんと受けており、申し分ないため、慌てて決めることではないが、結局決まらないまま、先延ばしにすることになった。
おかげで、12歳のアリルの方が先に縁談が訪れてしまった。
リズ・バーセム公爵夫人。ソアリスの同級生で友人である。ソアリスの本性も知っている人間で、軟禁されるまで王太子妃になりたくないと暴れまくって、愚痴をこぼした相手でもある。王宮からも近いため、公爵邸にもよく訪れては、居座っている。
そしてアリルより一つ年上にリズの長男である、ルーシュ・バーセムが、アリルと婚約したいと申し出た。
子どもの頃から付き合いもあり、爵位も問題なく、ルーシュたっての希望だそうで、ソアリスはアリルが良いと言えばいいんじゃないかと思ったが、アンセムは眉間に皺を寄せていた。
アンセムも申し分ない縁談だが、どうしても王女三人は王子とは違って、奪われるような気持ちになってしまう。
「良き縁談だとは思うが…」
「ええ、ルーシュなら、何かあってもリズが見張ってくれますし」
「バーセム公爵も良い人だとは思うが…」
「ええ、りんごを片手で潰せるそうですわ」
「りんごを?」
「ええ、是非、屈強な筋肉でりんごジュースを絞って頂きたいのですが、いつも断られてしまって」
さすがに王妃に自分が絞ったりんごジュースを飲ませる訳にはいかないだろう。
「りんごはいい」
「ええ、何の問題もないと思いますが?」
「ああ、これは私の問題だな」
「ではアリルが良いと言えばいいですね?」
「ああ」
アリルにルーファのことを話すと、頬を赤らめたため、ソアリスは問題ないと判断し、二人の婚約が決まった。きょうだいもルーファの人柄を知っているので、良かったじゃないかと賛成し、アンセムだけがもにょもにょと認めていないようだったが、聞こえていないことになった。
そして、婚約の顔合わせとなり、リズは泣いて喜び、見たこともない小躍りまで披露していた。そしてよくやったわ!とルーファの腕をぶんぶんと振り回した。
その様子にソアリスも変な踊りだとけらけら笑い、アリルもその様子を楽しそうに見ていた。
アンセムの場合はアイリーンが降りて、アンセムしかいなかったが、六人もいるので、誰が王太子になってもいいと考えているが、ユリウスに問題がない限りは、王太子とすると話してもあった。
アンセムは二人を呼び出して、改めて話をすることにした。
「やっぱり私が王太子ですか…」
「私も兄上が良いと思うけど?」
「マイノスは、王弟として支えていくか、大公となるか、婿に行くか」
「私は兄上が決まってから考えます」
「ずるいぞ!私も支える方があっているんですよね…」
二人のどちらでも問題はないが、一緒に訓練をしていたり、兄弟仲もいいので、争うようなことがなくていいのだが、二人ともが煮え切らない状態である。
「正直、カイルスでもいいと思っています」
カイルスはまだ2歳、相変わらずソアリスを追いかけ回している。
「それは、破天荒な王になりそうじゃないか?」
「ああ、それだ。母上を支えなくてはという気持ちが強いのだと思います。だからカイルスを支えてもいいと思っているんだ」
「そうかも…」
「ソアリスを?」
「はい、支える方に慣れてしまって、支えられる考えが浮かばないと言うか」
マイノスも横でうんうんと頷いており、確かにソアリスを子どもたちがフォローしているのを、何度か見掛けている。
「母上も公の場では仕出かすわけではないのですけど、仕出かすんじゃないかという思考に憑りつかれているのだと思います」
「分かる」
「それは確かに分かる、だがソアリスは放って置いても意外と大丈夫だ」
「それも分かってはいるんです」
母親が規格外過ぎて、世話焼き体質にしてしまったのか。
「婚約者にしたい相手はいないのか?」
「はい、ですので、もう少し考えたいです」
「私もです」
皆、教育はきちんと受けており、申し分ないため、慌てて決めることではないが、結局決まらないまま、先延ばしにすることになった。
おかげで、12歳のアリルの方が先に縁談が訪れてしまった。
リズ・バーセム公爵夫人。ソアリスの同級生で友人である。ソアリスの本性も知っている人間で、軟禁されるまで王太子妃になりたくないと暴れまくって、愚痴をこぼした相手でもある。王宮からも近いため、公爵邸にもよく訪れては、居座っている。
そしてアリルより一つ年上にリズの長男である、ルーシュ・バーセムが、アリルと婚約したいと申し出た。
子どもの頃から付き合いもあり、爵位も問題なく、ルーシュたっての希望だそうで、ソアリスはアリルが良いと言えばいいんじゃないかと思ったが、アンセムは眉間に皺を寄せていた。
アンセムも申し分ない縁談だが、どうしても王女三人は王子とは違って、奪われるような気持ちになってしまう。
「良き縁談だとは思うが…」
「ええ、ルーシュなら、何かあってもリズが見張ってくれますし」
「バーセム公爵も良い人だとは思うが…」
「ええ、りんごを片手で潰せるそうですわ」
「りんごを?」
「ええ、是非、屈強な筋肉でりんごジュースを絞って頂きたいのですが、いつも断られてしまって」
さすがに王妃に自分が絞ったりんごジュースを飲ませる訳にはいかないだろう。
「りんごはいい」
「ええ、何の問題もないと思いますが?」
「ああ、これは私の問題だな」
「ではアリルが良いと言えばいいですね?」
「ああ」
アリルにルーファのことを話すと、頬を赤らめたため、ソアリスは問題ないと判断し、二人の婚約が決まった。きょうだいもルーファの人柄を知っているので、良かったじゃないかと賛成し、アンセムだけがもにょもにょと認めていないようだったが、聞こえていないことになった。
そして、婚約の顔合わせとなり、リズは泣いて喜び、見たこともない小躍りまで披露していた。そしてよくやったわ!とルーファの腕をぶんぶんと振り回した。
その様子にソアリスも変な踊りだとけらけら笑い、アリルもその様子を楽しそうに見ていた。
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