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療養
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「お祖母様?」
説明を求めようとミランに話し掛けようとしたアイリーンだったが、ソアリスに気付かれてしまった。
「あら、ガルヴェート公爵夫人。ご無沙汰しております」
アイリーンは、現在ゾル王国、アイリーン・ガルヴェート公爵夫人であるが、ソアリスにとってはいつまでも、アイリーン王女殿下が抜けない。
ソアリスはいつも会うような澄ました顔で、カーテシーを行おうとしたが、ぐうと言いながら、元の姿勢に戻った。侍女が両手をばたつかせて、あわあわしている。
「失礼しました、臨月なのを忘れておりました。会釈で失礼します」
ソアリスはぺこりと、アイリーンに頭を下げた。アイリーンも常に敬意を払っているソアリスしか見たことがない。
「ソアリス王妃陛下…」
「ソアリス、さすがにそのお腹でカーテシーは無理よ」
「王女殿下への癖で、つい」
ミランに向かって、お腹をポーンと叩きながら、へへへっと笑うソアリスに、面白くなってしまった。
「あはははは!こんな子だったの?おっかしい。もう座って頂戴、そんなお腹でカーテシーなんてされたと知られたら、私が大変だわ。椅子を用意して頂戴」
ばたつかせていた侍女が素早く椅子を用意した。
「いけると思ったんですけどね、ちょっと腹が限界ですね」
「予定日は?」
「一週間後です」
「まあ、それなのに動いているの?まさか公務も?」
「いいえ、年なのにとぶちぶちと陛下に言ったら、ほとんど変わってくれたので、遊んで過ごしております」
ソアリスは王妃なのに遊んでいるのだぞ!と言わんばかりに、とても誇らしそうに胸を張っている。
「嘘よ、子どもたちの勉強を看ているくせに」
「では、訂正いたしまして、ほぼ遊んで過ごしております。あとはここへ来て、お祖父様を鍛えております」
「あれは鍛えているのね」
「口と脳を鍛えて、今世に引き戻しております」
「それは、ありがとう」
孫には優しい面もあったが、厳しい祖父が、孫の妻に弄ばれて、でも皆が笑っている姿に、アイリーンは帰省して良かったと心から思った。
「ソアリスには敵わん」
「その割にはお祖父様、的確に言い返していたわ」
「鍛えられておるからな」
アイリーンは夫からもゆっくりして来たらいいと言われてはいたが、安定していると言うので、一旦子どもたちも戻すために戻ったが、そうは言っても祖父も長くないことで、やるべきことだけ済ませてから再び、一人で帰省した。
戻った頃にはカイルスも生まれており、ソアリスは産後のリハビリ中であった。
「お疲れ様」
「ありがとうございます。ミラン様に似てなくて…」
「弟にそっくりだったわ、もう怖いくらい」
「私も分裂したのかと思いまして、陛下を確認しましたわ」
「あはははは!本当ね」
前の滞在で、ミランの言った通り、すっかり仲良くなったソアリスとアイリーン。
「カイルスを1日1回、アローク様のところに運んでいるので、今日はアイリーン様にお願いしてもいいですか?」
「ええ、勿論よ」
ソアリスが行くこともあるが、産後であるため玄孫たちと、一緒に誰かがアロークのところまで、カイルスを連れて行って、アロークに見せている。
生まれた時は間に合って良かったと思ったが、会ったことで気が抜けて、ぽっくり逝かない様にソアリスが毎日連れて行かせている。
そして、アローク・グレンバレンは、カイルスが生まれて、約一ヶ月後に穏やかに息を引き取った。
さすがのソアリスも最期は怒鳴るようなことはなく、お疲れ様でした、ありがとうございましたと、見送った。
アイリーンも祖父を看取り、葬儀にはガルヴェート公爵もやって来て、一緒に国に戻った。帰り際にソアリスにいつでも力になるからと、実姉には恵まれなかったが、義姉には恵まれたようである。
説明を求めようとミランに話し掛けようとしたアイリーンだったが、ソアリスに気付かれてしまった。
「あら、ガルヴェート公爵夫人。ご無沙汰しております」
アイリーンは、現在ゾル王国、アイリーン・ガルヴェート公爵夫人であるが、ソアリスにとってはいつまでも、アイリーン王女殿下が抜けない。
ソアリスはいつも会うような澄ました顔で、カーテシーを行おうとしたが、ぐうと言いながら、元の姿勢に戻った。侍女が両手をばたつかせて、あわあわしている。
「失礼しました、臨月なのを忘れておりました。会釈で失礼します」
ソアリスはぺこりと、アイリーンに頭を下げた。アイリーンも常に敬意を払っているソアリスしか見たことがない。
「ソアリス王妃陛下…」
「ソアリス、さすがにそのお腹でカーテシーは無理よ」
「王女殿下への癖で、つい」
ミランに向かって、お腹をポーンと叩きながら、へへへっと笑うソアリスに、面白くなってしまった。
「あはははは!こんな子だったの?おっかしい。もう座って頂戴、そんなお腹でカーテシーなんてされたと知られたら、私が大変だわ。椅子を用意して頂戴」
ばたつかせていた侍女が素早く椅子を用意した。
「いけると思ったんですけどね、ちょっと腹が限界ですね」
「予定日は?」
「一週間後です」
「まあ、それなのに動いているの?まさか公務も?」
「いいえ、年なのにとぶちぶちと陛下に言ったら、ほとんど変わってくれたので、遊んで過ごしております」
ソアリスは王妃なのに遊んでいるのだぞ!と言わんばかりに、とても誇らしそうに胸を張っている。
「嘘よ、子どもたちの勉強を看ているくせに」
「では、訂正いたしまして、ほぼ遊んで過ごしております。あとはここへ来て、お祖父様を鍛えております」
「あれは鍛えているのね」
「口と脳を鍛えて、今世に引き戻しております」
「それは、ありがとう」
孫には優しい面もあったが、厳しい祖父が、孫の妻に弄ばれて、でも皆が笑っている姿に、アイリーンは帰省して良かったと心から思った。
「ソアリスには敵わん」
「その割にはお祖父様、的確に言い返していたわ」
「鍛えられておるからな」
アイリーンは夫からもゆっくりして来たらいいと言われてはいたが、安定していると言うので、一旦子どもたちも戻すために戻ったが、そうは言っても祖父も長くないことで、やるべきことだけ済ませてから再び、一人で帰省した。
戻った頃にはカイルスも生まれており、ソアリスは産後のリハビリ中であった。
「お疲れ様」
「ありがとうございます。ミラン様に似てなくて…」
「弟にそっくりだったわ、もう怖いくらい」
「私も分裂したのかと思いまして、陛下を確認しましたわ」
「あはははは!本当ね」
前の滞在で、ミランの言った通り、すっかり仲良くなったソアリスとアイリーン。
「カイルスを1日1回、アローク様のところに運んでいるので、今日はアイリーン様にお願いしてもいいですか?」
「ええ、勿論よ」
ソアリスが行くこともあるが、産後であるため玄孫たちと、一緒に誰かがアロークのところまで、カイルスを連れて行って、アロークに見せている。
生まれた時は間に合って良かったと思ったが、会ったことで気が抜けて、ぽっくり逝かない様にソアリスが毎日連れて行かせている。
そして、アローク・グレンバレンは、カイルスが生まれて、約一ヶ月後に穏やかに息を引き取った。
さすがのソアリスも最期は怒鳴るようなことはなく、お疲れ様でした、ありがとうございましたと、見送った。
アイリーンも祖父を看取り、葬儀にはガルヴェート公爵もやって来て、一緒に国に戻った。帰り際にソアリスにいつでも力になるからと、実姉には恵まれなかったが、義姉には恵まれたようである。
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