私のバラ色ではない人生

野村にれ

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復讐

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 少し離れた場所にお待ちくださいと言いながら、騒いでいる集団が見える。

 ケイトは少し歩けるようになったのだが、ハイハイの方が早いと分かっているようで、移動は相変わらず高速ハイハイでやって来る。

「リベル殿下はさすがに不味いわ…」

 ソアリスがキョロキョロと見渡すと、ああ!と閃いた顔をした。

「ちょうどいい兄様がいるじゃない」
「え?」

 ソアリスはケイトが、あと僅かなところまでやって来ている瞬間に指令を出した。

「ケイト!そこの母様と同じ髪色のおっさんならいいわ!」
「え?」

 ケイトは初めて見る相手なのに、きちんとサイラスに思い切り突っ込んで、サイラスを利用して足元で立ち上がっている。

 遠目でしか見ていなかった姪にサイラスは嬉しさも勿論あったが、突然だったことで気持ちが付いていかなった。

「兄様、抱き上げなさい!復讐を行うわ」
「え?」

 もはや、サイラスはえ?しか言っていないが、困惑しながら、言われた通りに姪を抱き上げると、心なしか悪そうな顔をしている。

「初めまして。ケ、ケイト殿下…私は、」

 娘は結婚したが、まだ孫のいないサイラスは、久し振りの赤子である可愛い姪に、自己紹介をしようと思っていたサイラスだったが、その言葉はソアリスによって、あっさりと取り上げられた。

「ケイト!やってしまいなさい!」
「え?」

 ケイトは両手を広げて、拳を作り、勢いよくサイラスの両頬をグリグリし始めた。

「ひゃ、ひゃ、でんぐぁ…」
「ざまあみろ!」

 ソアリスは結局、サイラスに怒鳴ってすらいない。故に、お得意の幼い子どものやったことだから、許されるだろうという技である。

「ひゃ、こりゃれはどうりゃたら、ひゃ、ひゃ」
「ばふふ」

 ソアリスはやってしまえと言った口で、まあまあと上品に笑っており、可愛い復讐のように見えるが、頬は真っ赤になって、腕の力強いので結構痛いのである。

 ケイトの最近のお気に入りの遊びである。抱き上げたら最後、止めろと言えずに、飽きるまで続けられてしまい、終わった頃にはすっかりやつれてしまう。

 本気で怒って、やり返したのはソアリスだけだった。故にケイトは、ソアリスには二度とやらない。

 リベル以外は、あーあ可哀想にという有様で、その姿を見届けている。ソアリスが許可を出した以上、誰も止めることは出来ない。

「ちょ、ぐぅ、ちょ、ああ…」
「にしし」
「でんぐぁ、はあ、ああ…ぐぉ」

 ケイトは相手が嫌がれば嫌がるほど喜ぶので、キャッキャと喜んでおり、もはや狂気である。

 ようやく飽きて終わった頃にはサイラスの頬は真っ赤になっており、やつれたサイラスはゆっくりとケイトを下ろすと、ソアリスに向かって抱っこのポーズをしているので、ヒョイと抱き上げた。

「実にいい働きでした」
「う~む」

 経緯が分からない者が見たら、なぜと問われるところだが、サイラスも自覚があり、アンセムも知っているので、無理もないと思われている。

「き、貴重な経験をありがとうございました」

 頬を真っ赤に染めたサイラスは、ケイトに頭を下げた。

「う~む」
「王妃陛下によく似ていらっしゃる」
「やはりそうですか?」
「はい、私が幼いソアリスを無理矢理に抱き上げた際に、どこか痛かったのでしょうね、無言で睨まれて、バチンと叩かれましたから」

 アンセムはソアリスをほらみろと言いたそうな顔で見たが、ソアリスは澄ました顔をしている。

「言葉は早かったのか?」
「早くはなかったと思いますが、急にペラペラと喋り出しました。同じならば、色んな言葉を今、貯め込んでいるのだと思います」
「へ、へえ、そうなのですか」

 似ているとすれば、一体、何を言い出すのか怖くもなり、ケイトを見たが、ソアリスに褒められて嬉しいのか、ソアリスに抱き着いたままである。
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