私のバラ色ではない人生

野村にれ

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「なぜだ?」
「分かりません。足取りすら分からないのです。ですが、いくら王家を除籍されていても、ゾル王国には伝えて、ご納得いただいておりますので、陛下にもこのままご納得いただければと思います」
「だが」

 トルソイド公爵が知らせたのかと、ゾル王国には黙って置けば気付かれなかったのにと、忌々しく思った。せめて、私に言ってくれていたらとは思ったが、話をしていないために言うはずもない。

 伝えて置けば良かったかと思ったが、今の状況で、脅してお金を貰っていたことは言えない。いや、知られていない方が良かったかもしれない。

「責任問題を問われないだけでも、良かったと思っているのです。これ以上、王家も問題を抱えたくはないでしょう」
「それはそうだが…」
「エスザール王国に加えて、ゾル王国ともなったら、どうなってしまうのか。本当に国同士の問題にならなくて良かったと思っているのです。そう思いませんか?」
「あ、ああ…」

 だが、賠償金をどうすればいいのか、そればかりが頭を占領していた。

「いくら除籍されていても、あちらもお辛いと思います。ご配慮ください」
「ああ」

 デオリスは脅すことはもう出来ないことを、さすがに察した。賠償金は払えると言ったために、どうにか用意しなければならない。

 返事を書かずにいると、どこを探してくれたのか、見付けてくれるのかという催促まで届くようになり、さらには亡骸でもいいから見付けて欲しいと書かれていた。

 シシリーヌのことを公にしたところで、国王夫妻はバッシングを受けるかもしれないが、お金が入って来るとは思えない。

 しかも、亡くなっているとしたら、さらに責任を追及されるかもしれない。脅されていたことも、話されれば、バッシグを自分も受けるかもしれないと考え、探していないが、探してみているとだけ返事をした。

 両親は既に亡くなっており、母の実家とも関係は希薄で、人望もないので、他に頼る相手もなく、どうしようかと思っていると、サブリナがデオリスに問い掛けた。

「お金は用意、出来たのですか?」

 エスザール王国に謝罪に向かう予定を組んでいる最中であるために、早く用意しなくてはならない。

「それが…」
「足りないのですか?」
「ああ、そうなんだ」
「ビリリーとフローラはどうする気ですか?」
「離宮に」

 どうせ使えないのだから、二人は離宮に閉じ込めてしまえばいいと考えていた。

「ご一緒に住まわれるのですね?」
「っな」
「離宮はあなたも住むでしょう?」
「いや、フローラは病院に入れ、ビリリーは実家に帰す」
「そうですか」
「慰謝料も大変でしょうけどね」

 当たり前だが、フローラの賠償金、慰謝料、治療費は国のお金は使えないために、デオリスとビリリーが私費で支払うことになる。

 賠償金はフローラは支払えないために、親であるデオリスが三分の二、三分の一はビリリー、慰謝料と治療費はデオリスとビリリーで折半とすることに決まった。

「兄があなたが今後、大人しくしているのなら、用意してくれるかもしれませんよ」
「本当か!」
「ええ、だが兄も怒っておりますので、約束を破るようならすぐに返して貰うと」

 サブリナはようやく実家に話をして、父は亡くなっていたが、母にも、兄である侯爵にもどうして頼らなかったのかと言われたくらいである。

 しかも、ただで用意する気はない。しっかりと条件を付けると言ってくれた。

 ようやく、ソアリスに言われた様に中途半端なプライドなど、早く捨てれば良かったと思った。

 ソアリスも兄・サイラスに、『金を用意しろ』で、用意して貰うことは可能だろうが、状況は全く異なるだろう。

「ああ、勿論だ」
「では、兄と話をしてください」

 侯爵に離宮で大人しくしていること、子どもたちの邪魔をせず、宰相の言うことに従うことを条件に賠償金、慰謝料、治療費を肩代わりではなく借りることになった。
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