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兄1
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「妹なのだから、構わない。見たことはあっただろう?」
以前、ソアリスが意図的にケイトをサイラスに襲わせた際に、肩車をしているのを見ているはずである。
「はい、でもまだしていたのですね」
「ああ、子どもが生まれて、孫が生まれて、ずっとしている」
「ずっと…?」
いくら四つ年下となる妹であっても、サイラスは体力がある方ではないので、そういったことをしたこともなかった。
「それで、無事であることは間違いだろう?」
サイラスは慌てて駆け付けたが、アンセムに事情を聞き、ソアリスの無事な姿だけを確認したいとやって来たのであった。
「ソアリス!」
ソアリスは呼ぶ声の方を見たが、なんだ陛下かとしか思わなかった。渋々という顔で近付いては来ているが、駆け付けようとも思わない。
「私はお休みを貰い、孫と遊んでいるのですけど、何かありましたの?」
嫌味たっぷりで返答され、レブランと楽しそうに遊んでいる姿に、アンセムもそうだろうなと思った。
「ロアンスラー公爵が心配で駆け付けたそうだ」
ソアリスはレブランを乗せたまま、サイラスの前にやって来た。
「お兄様、無事ですわよ?レブラン、可愛いでございましょう?」
その目には残念ながら無事ですけど、何をしに来たんだという意味を含んでいた。
だが、久し振りにお兄様と呼ばれて、嬉しい気持ちも感じていた。ソアリスは孫たちに不仲を見せるわけにはいかないために、お兄様と呼んだにしか過ぎない。
「無事で良かった…レブラン殿も、遊んでいるところすまない」
レブランにとっては大伯父に当たるのだが、関わっていないので、誰だろうかと首を傾げている。
ソアリスも覚えなくていいと思っているので、紹介をしようともしない。
「心配だなんて」
「当然じゃないか」
サイラスはソアリスが襲われたと聞き、飛び出していた。
逞しい妹で、今では尊敬に値する王妃である。命を奪われては何も出来ないではないかと、動機が収まらなかった。
「では、折角の休みに孫と遊ぶ妹の邪魔をしないでくださいませ」
「ああ、すまなかった」
サイラスは話をしたいと望んでいたわけではないので納得し、ソアリスも先ほどの外の見える窓の方へさっさと戻って行った。
「陛下、ありがとうございました。皆様も、お邪魔いたしました」
頭を下げて、サイラスは部屋を後にすることにしたが、一応は義兄となるために声を掛けることにした。
「少し、話をするか?」
「…はい」
アンセムとサイラスは、ソアリスのこともあって、じっくりと話すよう間柄ではないままであった。
「心配は消えたか?」
「はい、ご無理を言って申し訳ありませんでした。あの子、いえ、王妃陛下は」
「私だけなのだから、ソアリスでいい」
「はい…私は一生許さなくてもいいと思っているのです。でも、先に死ぬようなことはあってはならないと、私が先に死んで、罵ってくれればいいと…」
「さすがに、亡くなった人間に鞭を打つことは…どうだろうか」
アンセムも、ソアリスのロアンスラー公爵家への恨みは正直、全てを知っているわけではないので、どこまでのものかは分からない。
ゆえに、ないとは言い切れないところであった。
「いいのです、それほどのことを私たち家族はしました。両親も駆け付けたかったようで、足が縺れて、母は転倒していましたが、放って来ました」
「ああ、それは…ソアリスなら太っているからだと言いそうだな」
ソアリスに話せば、太っているから足も言うことを聞かないのだと、樽だからそのまま転がったのではない?と、笑いそうなものである。
「あの子は、体形を気にしていますよね?」
「ああ、恐ろしいほどに自分に厳しくな」
「あの子はよく食べますから、ララシャに毎日、毎日、そんなに太ってと言われていたのです。不愉快だったと思います。私は母親を見てみろよと思っていましたが…」
サイラスも暴言を吐いていたように、あまり性根は良くない。
以前、ソアリスが意図的にケイトをサイラスに襲わせた際に、肩車をしているのを見ているはずである。
「はい、でもまだしていたのですね」
「ああ、子どもが生まれて、孫が生まれて、ずっとしている」
「ずっと…?」
いくら四つ年下となる妹であっても、サイラスは体力がある方ではないので、そういったことをしたこともなかった。
「それで、無事であることは間違いだろう?」
サイラスは慌てて駆け付けたが、アンセムに事情を聞き、ソアリスの無事な姿だけを確認したいとやって来たのであった。
「ソアリス!」
ソアリスは呼ぶ声の方を見たが、なんだ陛下かとしか思わなかった。渋々という顔で近付いては来ているが、駆け付けようとも思わない。
「私はお休みを貰い、孫と遊んでいるのですけど、何かありましたの?」
嫌味たっぷりで返答され、レブランと楽しそうに遊んでいる姿に、アンセムもそうだろうなと思った。
「ロアンスラー公爵が心配で駆け付けたそうだ」
ソアリスはレブランを乗せたまま、サイラスの前にやって来た。
「お兄様、無事ですわよ?レブラン、可愛いでございましょう?」
その目には残念ながら無事ですけど、何をしに来たんだという意味を含んでいた。
だが、久し振りにお兄様と呼ばれて、嬉しい気持ちも感じていた。ソアリスは孫たちに不仲を見せるわけにはいかないために、お兄様と呼んだにしか過ぎない。
「無事で良かった…レブラン殿も、遊んでいるところすまない」
レブランにとっては大伯父に当たるのだが、関わっていないので、誰だろうかと首を傾げている。
ソアリスも覚えなくていいと思っているので、紹介をしようともしない。
「心配だなんて」
「当然じゃないか」
サイラスはソアリスが襲われたと聞き、飛び出していた。
逞しい妹で、今では尊敬に値する王妃である。命を奪われては何も出来ないではないかと、動機が収まらなかった。
「では、折角の休みに孫と遊ぶ妹の邪魔をしないでくださいませ」
「ああ、すまなかった」
サイラスは話をしたいと望んでいたわけではないので納得し、ソアリスも先ほどの外の見える窓の方へさっさと戻って行った。
「陛下、ありがとうございました。皆様も、お邪魔いたしました」
頭を下げて、サイラスは部屋を後にすることにしたが、一応は義兄となるために声を掛けることにした。
「少し、話をするか?」
「…はい」
アンセムとサイラスは、ソアリスのこともあって、じっくりと話すよう間柄ではないままであった。
「心配は消えたか?」
「はい、ご無理を言って申し訳ありませんでした。あの子、いえ、王妃陛下は」
「私だけなのだから、ソアリスでいい」
「はい…私は一生許さなくてもいいと思っているのです。でも、先に死ぬようなことはあってはならないと、私が先に死んで、罵ってくれればいいと…」
「さすがに、亡くなった人間に鞭を打つことは…どうだろうか」
アンセムも、ソアリスのロアンスラー公爵家への恨みは正直、全てを知っているわけではないので、どこまでのものかは分からない。
ゆえに、ないとは言い切れないところであった。
「いいのです、それほどのことを私たち家族はしました。両親も駆け付けたかったようで、足が縺れて、母は転倒していましたが、放って来ました」
「ああ、それは…ソアリスなら太っているからだと言いそうだな」
ソアリスに話せば、太っているから足も言うことを聞かないのだと、樽だからそのまま転がったのではない?と、笑いそうなものである。
「あの子は、体形を気にしていますよね?」
「ああ、恐ろしいほどに自分に厳しくな」
「あの子はよく食べますから、ララシャに毎日、毎日、そんなに太ってと言われていたのです。不愉快だったと思います。私は母親を見てみろよと思っていましたが…」
サイラスも暴言を吐いていたように、あまり性根は良くない。
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