3 / 4
番外編【ルルの受難】
しおりを挟む
余の名前は、アルルウェルだ。年は十九。家名は持たない。神子である余には、必要の無いものだからな。余を生み出した親という存在はあるが、余が家名を名乗ったところで争いしか生まぬ。だから、余はアルルウェルなのだ。
さて、余はな。先ほども申したが、神子である。各国に信仰されている精霊教会の教主でもある。
各国だけではなく、教会が拠点を置くディーン王国の国王ですら、時として余に頭を垂れる事がある。
何が言いたいかというとな、余とっても偉いという事だ。とってもだ。大事な事だからな、繰り返したぞ。
しかし、だ。至高なる余であっても、苦手な存在はあるのだ。
そやつは、余の幼少の頃から側に居り余を守ってきたのだが、無表情で何を考えておるのか分からんし、直ぐ睨んでくるし、笑わないし、仕事に手を抜かんしで、余は苦手なのだ。
少しぐらい手を抜いてくれれば、教会を抜け出し余だって市井の者と交流が持てたかもしれぬのに。
いや、愚痴はよそう。悟られたら、後が怖い。
なにせ今、目の前に件の人物がおるのだから。
「……以上が、次の会議での我が騎士団の守備編成です」
「う、うむ。分かった」
淡々と、無表情で報告するそやつの名は、ジーナヴァルス。余を守る、神護騎士団の団長である。齢四十を超えたというのに、服の上からも分かるぐらいに引き締まった体をしておる。まだまだ現役だな。
ジーナヴァルスの話を、余は真剣に聞く振りをする。
実は、あまり頭に入ってないのだ。
余、どうしてもジーナヴァルスの後ろが気になって、気になって。執務どころではないのだよ。
なんせ、ジーナヴァルスが神子の間に入って来てから、ずっと気になっておったのだ。
ジーナヴァルスが連れてきた人物は、尋常じゃない殺気を余に放って、おる。ごくり。
ジーナヴァルスよ。何故、彼を連れてきた。そして、彼は何故、余に殺気を放っておるのだ。解せぬ。
余、何かしたのか?
「アルルウェル様、聞いておられますか」
「う、うむ。勿論だ」
聞いてはいなかったがな!
なに、バレなければ構うまい。余は、ビクつきながらも机の上の書類を見ている振りをする。殺気が怖くて、集中などできん。
ジーナヴァルスよ、何故そなたは気付かんのだ。余でも、分かるぞ! 分かっちゃったぞ!
なのに、何故そなたは分からぬのだ!
いや、分からぬ筈がない。ジーナヴァルスは、有能な騎士団長だ。気付いている筈だ。
つまり、そなた。気付きながらも、後ろに居る人物を放っておるのか。そうなのか。事と次第によっては、余と全面戦争だぞ。勝てる気はせんがな!
ジーナヴァルスの後ろに居る人物は、金色の髪以外は、驚くほどに面差しがジーナヴァルスに似ておる。彼は、ジーナヴァルスの長男に違いない。名は確か、アルトディアスだったか。年は、二十四歳だったか。ジェイドから話は、聞いておる。
大精霊シルヴァーンと、シルディ・ナーラしておる未来の騎士団長様だ。
そんな彼に、何故余は、射殺さんばかりに睨まれておるのだ! 分からぬ、分からぬよ!
余は、アルトディアスの睨みが恐ろしい。何故か、ジーナヴァルスに睨まれている気になるのだ。体が、震える。
「アルルウェル様、どうかなさいましたか」
「い、いや! 何でもないぞ! そ、それより、ジーナヴァルス。後ろに控えておるのは、その……」
余は、恐る恐る尋ねた。
「……ああ、紹介がまだでしたね」
ジーナヴァルスが、後ろを振り返る。途端に、殺気が霧散する。
ちっとばかし、露骨過ぎやせんか。
「もうご存知かとは思いますが、この者は、私の息子です。名は、アルトディアス。私が退いた後の後任になります」
「そ、そうか……」
その息子は、余に何か恨みがあるのか。
改めて紹介されたアルトディアスは、にこりともせずに一歩踏み出し騎士の敬礼を余に見せる。
「騎士団長よりご紹介に預かりました、アルトディアスです。以後、よろしくお願いいたします」
「う、うむ。余はアルルウェルだ。よろしく頼む」
「はっ!」
な、なんだ。思ったよりも普通だ。
余、警戒し過ぎたか。
「アルルウェル様、一つよろしいでしょうか」
余が胸を撫で下ろした時、アルトディアスが発言の許可を求めてきた。
「な、なんだ」
何を言われるのだ。さっきの、恐ろしい視線を思い出し、余は身震いする。
「……妹は、巫女様は幸せですか」
真剣な眼差し、声音に余は息を呑む。
アルトディアスの妹──巫女は、余の大事な存在だ。
それは、アルトディアスにとってもそうなのだろう。
余は、姿勢を正した。アルトディアスの問い掛けに、真摯に答えたいと思ったからだ。
「巫女……リリアンナは、余が全身全霊をもって幸せにする」
リリアンナとは、幼い頃に出会った。魂の状態ならば、生まれる前からの付き合いだといえる。
リリアンナの前世であるナナオの頃から、余は慈しみの思いを持っていた。淡い恋だったのかもしれぬ。
しかし、余の世界で生まれたリリアンナと出会い、余の思いは強くなっていった。大事にしたい。守りたい。側に居て欲しい。欲深い思いも、持つようになった。
余の母は、他人の夫を奪った。愛する男さえ不幸にした。余の母は、魂が幼すぎたのやもしれぬ。
だが、そんな一言で済ますには、やり過ぎた。業の深き魂だ。
余は、そんな母を見て恋をする事が恐ろしくなった。母の血を継ぐ余も、愛する人を不幸にするのではと思ったのだ。
そんな弱い余を、リリアンナは救ってくれた。余に、愛する素晴らしさを教えてくれた。
余は、リリアンナが好きだ。愛している。誰よりも。守らねばならぬ世界よりも、思いは強いかもしれぬ。
そんなリリアンナが、余の巫女となってくれた。
巫女は狭き門だ。リリアンナが、どれだけ頑張ってくれたか。それが、とても嬉しい。愛おしい。
「余は、リリアンナを大事にする」
真剣に、余は答えた。
アルトディアスは、俯いている。余の言葉は、伝わっただろうか。
じっと、余はアルトディアスを見つめた。
すると、アルトディアスは顔を上げた。その顔は、笑顔だった。なのに、背筋に嫌な汗が流れる。何故だ。
「アルルウェル様」
「な、なんだ?」
おかしい。余は、物凄く偉い筈なのに。この神子の間に居る中で、一番偉い筈なのに。目の前に居る、アルトディアスが恐ろしくて仕方ないのだが。何故だ。分からぬ。
「リリアンナは、幸せなのですね?」
「う、うむ」
幸せの筈だ。余と共に居る時のリリアンナは、いつも笑顔を浮かべているからな!
「……ちっ」
舌打ちしたぞ!
アルトディアス、笑顔のまま、舌打ちしたぞ!
「幸せ、なんですか……」
何だ、その至極残念そうな顔は!
リリアンナの兄として、妹の幸せを喜べぬとは何事か! 余、怒るぞ!
……と、言えたら良かったのだがな。アルトディアスを見ていると、どうしても体が震えるのだ。
ジーナヴァルスと顔が似過ぎているのが、原因かもしれぬな。アルトディアスを見ていると、ジーナヴァルスに睨まれている気になるのだ。
当のジーナヴァルスは、無表情のまま、息子を諫めることなく、我らの会話を聞いている。いや、注意せぬのか! 何度も言うが、余は一番偉いのだぞ!
「その、なんだ。アルトディアスよ。リリアンナが幸せな事に、何か不都合でもあるのか?」
余、勇気を出した! 勇気を出して、聞いてみたよ!
「いえ。巫女様がもしも不遇な境遇にありましたら、問答無用で連れ帰ろうと思っただけですよ」
余の問い掛けに、アルトディアスは笑顔を崩さぬまま、言ってのけた。
連れ帰るって、言ったか?
「そ、それは、駄目だ!」
余は叫んだ。リリアンナを連れ帰る? そんな事、認められるか!
余が叫んだ事に驚いたのか、アルトディアスは目を軽く見張っている。驚いたのだろう。
そして、アルトディアスはまた笑みを浮かべた。今度のは、先ほどのとは違い、温かみのある笑みだった。
「そうですか。アルルウェル様は、そこまで妹の事を思って下さっているのですね」
「当たり前だ」
リリアンナは余にとって、かけがえのない存在だ。誰にも、渡せない。
アルトディアスは、ジーナヴァルスを見た。息子の視線を受け、ジーナヴァルスは頷き返している。何だ? 何を目配せしておるのだ。
「アルルウェル様」
今度は、ジーナヴァルスが余の名を呼んだ。
「……なんだ」
恐る恐る、余は返事する。
ジーナヴァルスは、淡々と言葉を発した。
「リリアンナを、よろしくお願いします」
驚いた。余、心底驚いた。
ジーナヴァルスが、余にリリアンナを託したのだ。
アルトディアスは、少し寂しそうな顔をしていた。
「妹は、斜め上をいく子ですが、本当に大事にしてください」
あれほど、余に殺気を放っていたアルトディアスまでもが、余を認めたのだ。驚きだ。
「う、うむ。余に、任せよ」
余は、リリアンナの家族に認められたのか。そう思うと、嬉しくて涙が出そうだった。
「では、我らはこれで」
「うむ、ご苦労であった」
話は終わったのか、二人は退室していこうとする。うむ、仕事もリリアンナも余に任せておくがいいぞ。
そう思っていると、アルトディアスが立ち止まって振り向いた。
「……妹が、少しでも不幸になったら、その時は覚えておいてくださいね」
低い声でそう言われ、余の胃はキュッとなった。
その後、余は瞬く間に執務を終えて、リリアンナに会いに行った。
リリアンナ。そなたの兄は、恐ろしい奴だ。
さて、余はな。先ほども申したが、神子である。各国に信仰されている精霊教会の教主でもある。
各国だけではなく、教会が拠点を置くディーン王国の国王ですら、時として余に頭を垂れる事がある。
何が言いたいかというとな、余とっても偉いという事だ。とってもだ。大事な事だからな、繰り返したぞ。
しかし、だ。至高なる余であっても、苦手な存在はあるのだ。
そやつは、余の幼少の頃から側に居り余を守ってきたのだが、無表情で何を考えておるのか分からんし、直ぐ睨んでくるし、笑わないし、仕事に手を抜かんしで、余は苦手なのだ。
少しぐらい手を抜いてくれれば、教会を抜け出し余だって市井の者と交流が持てたかもしれぬのに。
いや、愚痴はよそう。悟られたら、後が怖い。
なにせ今、目の前に件の人物がおるのだから。
「……以上が、次の会議での我が騎士団の守備編成です」
「う、うむ。分かった」
淡々と、無表情で報告するそやつの名は、ジーナヴァルス。余を守る、神護騎士団の団長である。齢四十を超えたというのに、服の上からも分かるぐらいに引き締まった体をしておる。まだまだ現役だな。
ジーナヴァルスの話を、余は真剣に聞く振りをする。
実は、あまり頭に入ってないのだ。
余、どうしてもジーナヴァルスの後ろが気になって、気になって。執務どころではないのだよ。
なんせ、ジーナヴァルスが神子の間に入って来てから、ずっと気になっておったのだ。
ジーナヴァルスが連れてきた人物は、尋常じゃない殺気を余に放って、おる。ごくり。
ジーナヴァルスよ。何故、彼を連れてきた。そして、彼は何故、余に殺気を放っておるのだ。解せぬ。
余、何かしたのか?
「アルルウェル様、聞いておられますか」
「う、うむ。勿論だ」
聞いてはいなかったがな!
なに、バレなければ構うまい。余は、ビクつきながらも机の上の書類を見ている振りをする。殺気が怖くて、集中などできん。
ジーナヴァルスよ、何故そなたは気付かんのだ。余でも、分かるぞ! 分かっちゃったぞ!
なのに、何故そなたは分からぬのだ!
いや、分からぬ筈がない。ジーナヴァルスは、有能な騎士団長だ。気付いている筈だ。
つまり、そなた。気付きながらも、後ろに居る人物を放っておるのか。そうなのか。事と次第によっては、余と全面戦争だぞ。勝てる気はせんがな!
ジーナヴァルスの後ろに居る人物は、金色の髪以外は、驚くほどに面差しがジーナヴァルスに似ておる。彼は、ジーナヴァルスの長男に違いない。名は確か、アルトディアスだったか。年は、二十四歳だったか。ジェイドから話は、聞いておる。
大精霊シルヴァーンと、シルディ・ナーラしておる未来の騎士団長様だ。
そんな彼に、何故余は、射殺さんばかりに睨まれておるのだ! 分からぬ、分からぬよ!
余は、アルトディアスの睨みが恐ろしい。何故か、ジーナヴァルスに睨まれている気になるのだ。体が、震える。
「アルルウェル様、どうかなさいましたか」
「い、いや! 何でもないぞ! そ、それより、ジーナヴァルス。後ろに控えておるのは、その……」
余は、恐る恐る尋ねた。
「……ああ、紹介がまだでしたね」
ジーナヴァルスが、後ろを振り返る。途端に、殺気が霧散する。
ちっとばかし、露骨過ぎやせんか。
「もうご存知かとは思いますが、この者は、私の息子です。名は、アルトディアス。私が退いた後の後任になります」
「そ、そうか……」
その息子は、余に何か恨みがあるのか。
改めて紹介されたアルトディアスは、にこりともせずに一歩踏み出し騎士の敬礼を余に見せる。
「騎士団長よりご紹介に預かりました、アルトディアスです。以後、よろしくお願いいたします」
「う、うむ。余はアルルウェルだ。よろしく頼む」
「はっ!」
な、なんだ。思ったよりも普通だ。
余、警戒し過ぎたか。
「アルルウェル様、一つよろしいでしょうか」
余が胸を撫で下ろした時、アルトディアスが発言の許可を求めてきた。
「な、なんだ」
何を言われるのだ。さっきの、恐ろしい視線を思い出し、余は身震いする。
「……妹は、巫女様は幸せですか」
真剣な眼差し、声音に余は息を呑む。
アルトディアスの妹──巫女は、余の大事な存在だ。
それは、アルトディアスにとってもそうなのだろう。
余は、姿勢を正した。アルトディアスの問い掛けに、真摯に答えたいと思ったからだ。
「巫女……リリアンナは、余が全身全霊をもって幸せにする」
リリアンナとは、幼い頃に出会った。魂の状態ならば、生まれる前からの付き合いだといえる。
リリアンナの前世であるナナオの頃から、余は慈しみの思いを持っていた。淡い恋だったのかもしれぬ。
しかし、余の世界で生まれたリリアンナと出会い、余の思いは強くなっていった。大事にしたい。守りたい。側に居て欲しい。欲深い思いも、持つようになった。
余の母は、他人の夫を奪った。愛する男さえ不幸にした。余の母は、魂が幼すぎたのやもしれぬ。
だが、そんな一言で済ますには、やり過ぎた。業の深き魂だ。
余は、そんな母を見て恋をする事が恐ろしくなった。母の血を継ぐ余も、愛する人を不幸にするのではと思ったのだ。
そんな弱い余を、リリアンナは救ってくれた。余に、愛する素晴らしさを教えてくれた。
余は、リリアンナが好きだ。愛している。誰よりも。守らねばならぬ世界よりも、思いは強いかもしれぬ。
そんなリリアンナが、余の巫女となってくれた。
巫女は狭き門だ。リリアンナが、どれだけ頑張ってくれたか。それが、とても嬉しい。愛おしい。
「余は、リリアンナを大事にする」
真剣に、余は答えた。
アルトディアスは、俯いている。余の言葉は、伝わっただろうか。
じっと、余はアルトディアスを見つめた。
すると、アルトディアスは顔を上げた。その顔は、笑顔だった。なのに、背筋に嫌な汗が流れる。何故だ。
「アルルウェル様」
「な、なんだ?」
おかしい。余は、物凄く偉い筈なのに。この神子の間に居る中で、一番偉い筈なのに。目の前に居る、アルトディアスが恐ろしくて仕方ないのだが。何故だ。分からぬ。
「リリアンナは、幸せなのですね?」
「う、うむ」
幸せの筈だ。余と共に居る時のリリアンナは、いつも笑顔を浮かべているからな!
「……ちっ」
舌打ちしたぞ!
アルトディアス、笑顔のまま、舌打ちしたぞ!
「幸せ、なんですか……」
何だ、その至極残念そうな顔は!
リリアンナの兄として、妹の幸せを喜べぬとは何事か! 余、怒るぞ!
……と、言えたら良かったのだがな。アルトディアスを見ていると、どうしても体が震えるのだ。
ジーナヴァルスと顔が似過ぎているのが、原因かもしれぬな。アルトディアスを見ていると、ジーナヴァルスに睨まれている気になるのだ。
当のジーナヴァルスは、無表情のまま、息子を諫めることなく、我らの会話を聞いている。いや、注意せぬのか! 何度も言うが、余は一番偉いのだぞ!
「その、なんだ。アルトディアスよ。リリアンナが幸せな事に、何か不都合でもあるのか?」
余、勇気を出した! 勇気を出して、聞いてみたよ!
「いえ。巫女様がもしも不遇な境遇にありましたら、問答無用で連れ帰ろうと思っただけですよ」
余の問い掛けに、アルトディアスは笑顔を崩さぬまま、言ってのけた。
連れ帰るって、言ったか?
「そ、それは、駄目だ!」
余は叫んだ。リリアンナを連れ帰る? そんな事、認められるか!
余が叫んだ事に驚いたのか、アルトディアスは目を軽く見張っている。驚いたのだろう。
そして、アルトディアスはまた笑みを浮かべた。今度のは、先ほどのとは違い、温かみのある笑みだった。
「そうですか。アルルウェル様は、そこまで妹の事を思って下さっているのですね」
「当たり前だ」
リリアンナは余にとって、かけがえのない存在だ。誰にも、渡せない。
アルトディアスは、ジーナヴァルスを見た。息子の視線を受け、ジーナヴァルスは頷き返している。何だ? 何を目配せしておるのだ。
「アルルウェル様」
今度は、ジーナヴァルスが余の名を呼んだ。
「……なんだ」
恐る恐る、余は返事する。
ジーナヴァルスは、淡々と言葉を発した。
「リリアンナを、よろしくお願いします」
驚いた。余、心底驚いた。
ジーナヴァルスが、余にリリアンナを託したのだ。
アルトディアスは、少し寂しそうな顔をしていた。
「妹は、斜め上をいく子ですが、本当に大事にしてください」
あれほど、余に殺気を放っていたアルトディアスまでもが、余を認めたのだ。驚きだ。
「う、うむ。余に、任せよ」
余は、リリアンナの家族に認められたのか。そう思うと、嬉しくて涙が出そうだった。
「では、我らはこれで」
「うむ、ご苦労であった」
話は終わったのか、二人は退室していこうとする。うむ、仕事もリリアンナも余に任せておくがいいぞ。
そう思っていると、アルトディアスが立ち止まって振り向いた。
「……妹が、少しでも不幸になったら、その時は覚えておいてくださいね」
低い声でそう言われ、余の胃はキュッとなった。
その後、余は瞬く間に執務を終えて、リリアンナに会いに行った。
リリアンナ。そなたの兄は、恐ろしい奴だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる