ドラゴンハンター

ことは

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第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴

2-8

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「ねぇ、話ってなに?」

 先を歩く圭吾を、ルイが小走りで追いかける。体育館の裏で、圭吾が立ち止まる。

 美鈴は二人に少し遅れて歩きながら、それを見ていた。

「ルイちゃんは、ドラゴンに寄生されているんだ」

 圭吾が冷静な表情で言った。

 ルイが首をかしげている。

 美鈴もようやく二人に追いついた。

 圭吾が張りつめた表情を見せた。

「美鈴ちゃん、見てて。これがドラゴンハンターの仕事だ」

 圭吾はルイを見つめたまま言った。

 圭吾は、ふざけている感じではなかった。少し大人っぽい表情に、美鈴はドクンと胸がなった。

 美鈴は、空気の質が変わった気がした。熱い空気が、さらに熱を帯びていくようだった。 

 何かが起こる。美鈴はそう確信して、つばをのみこんだ。

「サリュー、来い!」

 圭吾が鋭く叫ぶ。

 圭吾のTシャツの首から、青い目のドラゴンが飛び出した。

「きゃっ」

 美鈴は思わず悲鳴をあげた。

 ドラゴンは、ガラスのビンに入っていない。自由に宙を舞っている。

 きっとルイも驚いているに違いない。美鈴はルイを見た。

 しかしルイは、圭吾を見つめたまま動かない。宙を飛ぶドラゴンには、気づいていないみたいだ。いや、そうではない。ルイには見えていないのだ。

 美鈴は今、やっとわかった。ドラゴンは見える人と見えない人がいる。圭吾と美鈴が見える人で、ルイは見えない人なのだ。

 サリューと呼ばれたドラゴンが、ルイに向かって飛んでいく。その横を並行して、圭吾が走る。

 ルイにぶつかる寸前に、圭吾が叫んだ。

「出て来い、ドラゴン!」

 サリューが、ルイの顔の周りをグルグルと回る。

 ルイが、ゆっくりと口を開けていく。くしゃみと一緒に、ルイの口から何かが飛び出した。

「どうしてドラゴンが……」

 美鈴はつぶやいた。

 ルイの口から出てきたドラゴンは、青緑色の体に黒っぽい目をしている。ドラゴンの体と目の色は様々だが、美鈴が一番よく見かける色の組み合わせだった。

 ドラゴンは、翼を大きく広げた。怒ったように、口から火柱をあげる。

 美鈴は焼けるように頬が熱くなった。あまりの熱さに、美鈴は顔をしかめた。

「行け、サリュー」

 圭吾が腕を降りおろしながら、黒い目のドラゴンを指さした。

 サリューがほえた。ものすごいごう音が、耳をつらぬく。

 サリューは目にも止まらぬ速さで、黒い目のドラゴンに向かって行く。

 黒い目のドラゴンも、サリュー目がけて突進した。二匹が激しくぶつかり合い、火花が散る。

 二匹のドラゴンは、何度も体をぶつけあった。そのたびに閃光が走る。

 美鈴は、二匹の戦いを食い入るように見つめた。瞬きをするのを忘れるほどだった。

 圭吾の指示に、サリューは正確に従っている。圭吾とサリューは、次々と黒い目のドラゴンに攻撃をしかけていった。

 サリューが炎を吐きながら、黒い目のドラゴンに体当たりした。

 ついに黒い目のドラゴンが、フラフラしながら落下した。

 しかし、地面に着く前に再び翼を広げた。

 圭吾が、黒い目のドラゴンに素早く走り寄る。

「飛べ!」

 圭吾が短く叫ぶと、黒い目のドラゴンが舞い上がった。

「止まれ」

 黒い目のドラゴンが、空中で停止した。そのまま圭吾の指示を待つように、じっとしている。

「そっちのドラゴンも操れるの?」

 美鈴は思わず声をかけた。

 圭吾が、ズボンのポケットから小さなビンを出した。

「来い、ドラゴン」

 圭吾が言うと、宙に浮いていた黒い目のドラゴンが一瞬で消えた。

「ドラゴン、消えちゃった」

 美鈴がつぶやくと、
「ここにいる」
と、圭吾が手にしたビンを振って見せた。

黒い目のドラゴンは、ビンの中だった。

「サリュー戻ってこい」

 圭吾が宙に右手を差し伸べた。すると、まるで手乗りインコのように、サリューが圭吾の手に乗った。

 Tシャツの首の間から、圭吾はペンダントのビンを取り出した。

 ビンはからっぽだ。美鈴がそう思った次の瞬間には、サリューがビンの中に入っていた。まるで手品でも見ているようだった。

 クシュン。

 さっきから、ルイがしきりにクシャミをしている。

「なんか、クシャミが止まらないんだけど」

 ルイが涙目で圭吾を見る。

「異物を吐き出したから、そのうち止まるよ」

 圭吾はズボンのポケットに、黒い目のドラゴンの入ったビンを入れた。サリューが入ったビンも、Tシャツの中に戻す。

「本当だ、止まった」

 ルイが嬉しそうな顔をしている。まるで何事もなかったみたいな顔だ。

 いくらドラゴンが見えないとはいえ、ルイは本当に、二匹のドラゴンの戦いに気がつかなかったのだろうか。

「ところでさっきから圭吾くん、なにを叫んでいたの? 池とか鯉とかエサとか」

「エサは言ってなかったと思うけど」

 美鈴はクスリと笑った。

 どうやら本当に気がついていないみたいだ。

 長い間戦っていたように感じたが、ドラゴンの攻撃の速さを考えると、意外と短い時間だったのかもしれない。ルイがクシャミを数回する間に、決着がついたのだろう。
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