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第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴
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「ねぇ、話ってなに?」
先を歩く圭吾を、ルイが小走りで追いかける。体育館の裏で、圭吾が立ち止まる。
美鈴は二人に少し遅れて歩きながら、それを見ていた。
「ルイちゃんは、ドラゴンに寄生されているんだ」
圭吾が冷静な表情で言った。
ルイが首をかしげている。
美鈴もようやく二人に追いついた。
圭吾が張りつめた表情を見せた。
「美鈴ちゃん、見てて。これがドラゴンハンターの仕事だ」
圭吾はルイを見つめたまま言った。
圭吾は、ふざけている感じではなかった。少し大人っぽい表情に、美鈴はドクンと胸がなった。
美鈴は、空気の質が変わった気がした。熱い空気が、さらに熱を帯びていくようだった。
何かが起こる。美鈴はそう確信して、つばをのみこんだ。
「サリュー、来い!」
圭吾が鋭く叫ぶ。
圭吾のTシャツの首から、青い目のドラゴンが飛び出した。
「きゃっ」
美鈴は思わず悲鳴をあげた。
ドラゴンは、ガラスのビンに入っていない。自由に宙を舞っている。
きっとルイも驚いているに違いない。美鈴はルイを見た。
しかしルイは、圭吾を見つめたまま動かない。宙を飛ぶドラゴンには、気づいていないみたいだ。いや、そうではない。ルイには見えていないのだ。
美鈴は今、やっとわかった。ドラゴンは見える人と見えない人がいる。圭吾と美鈴が見える人で、ルイは見えない人なのだ。
サリューと呼ばれたドラゴンが、ルイに向かって飛んでいく。その横を並行して、圭吾が走る。
ルイにぶつかる寸前に、圭吾が叫んだ。
「出て来い、ドラゴン!」
サリューが、ルイの顔の周りをグルグルと回る。
ルイが、ゆっくりと口を開けていく。くしゃみと一緒に、ルイの口から何かが飛び出した。
「どうしてドラゴンが……」
美鈴はつぶやいた。
ルイの口から出てきたドラゴンは、青緑色の体に黒っぽい目をしている。ドラゴンの体と目の色は様々だが、美鈴が一番よく見かける色の組み合わせだった。
ドラゴンは、翼を大きく広げた。怒ったように、口から火柱をあげる。
美鈴は焼けるように頬が熱くなった。あまりの熱さに、美鈴は顔をしかめた。
「行け、サリュー」
圭吾が腕を降りおろしながら、黒い目のドラゴンを指さした。
サリューがほえた。ものすごいごう音が、耳をつらぬく。
サリューは目にも止まらぬ速さで、黒い目のドラゴンに向かって行く。
黒い目のドラゴンも、サリュー目がけて突進した。二匹が激しくぶつかり合い、火花が散る。
二匹のドラゴンは、何度も体をぶつけあった。そのたびに閃光が走る。
美鈴は、二匹の戦いを食い入るように見つめた。瞬きをするのを忘れるほどだった。
圭吾の指示に、サリューは正確に従っている。圭吾とサリューは、次々と黒い目のドラゴンに攻撃をしかけていった。
サリューが炎を吐きながら、黒い目のドラゴンに体当たりした。
ついに黒い目のドラゴンが、フラフラしながら落下した。
しかし、地面に着く前に再び翼を広げた。
圭吾が、黒い目のドラゴンに素早く走り寄る。
「飛べ!」
圭吾が短く叫ぶと、黒い目のドラゴンが舞い上がった。
「止まれ」
黒い目のドラゴンが、空中で停止した。そのまま圭吾の指示を待つように、じっとしている。
「そっちのドラゴンも操れるの?」
美鈴は思わず声をかけた。
圭吾が、ズボンのポケットから小さなビンを出した。
「来い、ドラゴン」
圭吾が言うと、宙に浮いていた黒い目のドラゴンが一瞬で消えた。
「ドラゴン、消えちゃった」
美鈴がつぶやくと、
「ここにいる」
と、圭吾が手にしたビンを振って見せた。
黒い目のドラゴンは、ビンの中だった。
「サリュー戻ってこい」
圭吾が宙に右手を差し伸べた。すると、まるで手乗りインコのように、サリューが圭吾の手に乗った。
Tシャツの首の間から、圭吾はペンダントのビンを取り出した。
ビンはからっぽだ。美鈴がそう思った次の瞬間には、サリューがビンの中に入っていた。まるで手品でも見ているようだった。
クシュン。
さっきから、ルイがしきりにクシャミをしている。
「なんか、クシャミが止まらないんだけど」
ルイが涙目で圭吾を見る。
「異物を吐き出したから、そのうち止まるよ」
圭吾はズボンのポケットに、黒い目のドラゴンの入ったビンを入れた。サリューが入ったビンも、Tシャツの中に戻す。
「本当だ、止まった」
ルイが嬉しそうな顔をしている。まるで何事もなかったみたいな顔だ。
いくらドラゴンが見えないとはいえ、ルイは本当に、二匹のドラゴンの戦いに気がつかなかったのだろうか。
「ところでさっきから圭吾くん、なにを叫んでいたの? 池とか鯉とかエサとか」
「エサは言ってなかったと思うけど」
美鈴はクスリと笑った。
どうやら本当に気がついていないみたいだ。
長い間戦っていたように感じたが、ドラゴンの攻撃の速さを考えると、意外と短い時間だったのかもしれない。ルイがクシャミを数回する間に、決着がついたのだろう。
先を歩く圭吾を、ルイが小走りで追いかける。体育館の裏で、圭吾が立ち止まる。
美鈴は二人に少し遅れて歩きながら、それを見ていた。
「ルイちゃんは、ドラゴンに寄生されているんだ」
圭吾が冷静な表情で言った。
ルイが首をかしげている。
美鈴もようやく二人に追いついた。
圭吾が張りつめた表情を見せた。
「美鈴ちゃん、見てて。これがドラゴンハンターの仕事だ」
圭吾はルイを見つめたまま言った。
圭吾は、ふざけている感じではなかった。少し大人っぽい表情に、美鈴はドクンと胸がなった。
美鈴は、空気の質が変わった気がした。熱い空気が、さらに熱を帯びていくようだった。
何かが起こる。美鈴はそう確信して、つばをのみこんだ。
「サリュー、来い!」
圭吾が鋭く叫ぶ。
圭吾のTシャツの首から、青い目のドラゴンが飛び出した。
「きゃっ」
美鈴は思わず悲鳴をあげた。
ドラゴンは、ガラスのビンに入っていない。自由に宙を舞っている。
きっとルイも驚いているに違いない。美鈴はルイを見た。
しかしルイは、圭吾を見つめたまま動かない。宙を飛ぶドラゴンには、気づいていないみたいだ。いや、そうではない。ルイには見えていないのだ。
美鈴は今、やっとわかった。ドラゴンは見える人と見えない人がいる。圭吾と美鈴が見える人で、ルイは見えない人なのだ。
サリューと呼ばれたドラゴンが、ルイに向かって飛んでいく。その横を並行して、圭吾が走る。
ルイにぶつかる寸前に、圭吾が叫んだ。
「出て来い、ドラゴン!」
サリューが、ルイの顔の周りをグルグルと回る。
ルイが、ゆっくりと口を開けていく。くしゃみと一緒に、ルイの口から何かが飛び出した。
「どうしてドラゴンが……」
美鈴はつぶやいた。
ルイの口から出てきたドラゴンは、青緑色の体に黒っぽい目をしている。ドラゴンの体と目の色は様々だが、美鈴が一番よく見かける色の組み合わせだった。
ドラゴンは、翼を大きく広げた。怒ったように、口から火柱をあげる。
美鈴は焼けるように頬が熱くなった。あまりの熱さに、美鈴は顔をしかめた。
「行け、サリュー」
圭吾が腕を降りおろしながら、黒い目のドラゴンを指さした。
サリューがほえた。ものすごいごう音が、耳をつらぬく。
サリューは目にも止まらぬ速さで、黒い目のドラゴンに向かって行く。
黒い目のドラゴンも、サリュー目がけて突進した。二匹が激しくぶつかり合い、火花が散る。
二匹のドラゴンは、何度も体をぶつけあった。そのたびに閃光が走る。
美鈴は、二匹の戦いを食い入るように見つめた。瞬きをするのを忘れるほどだった。
圭吾の指示に、サリューは正確に従っている。圭吾とサリューは、次々と黒い目のドラゴンに攻撃をしかけていった。
サリューが炎を吐きながら、黒い目のドラゴンに体当たりした。
ついに黒い目のドラゴンが、フラフラしながら落下した。
しかし、地面に着く前に再び翼を広げた。
圭吾が、黒い目のドラゴンに素早く走り寄る。
「飛べ!」
圭吾が短く叫ぶと、黒い目のドラゴンが舞い上がった。
「止まれ」
黒い目のドラゴンが、空中で停止した。そのまま圭吾の指示を待つように、じっとしている。
「そっちのドラゴンも操れるの?」
美鈴は思わず声をかけた。
圭吾が、ズボンのポケットから小さなビンを出した。
「来い、ドラゴン」
圭吾が言うと、宙に浮いていた黒い目のドラゴンが一瞬で消えた。
「ドラゴン、消えちゃった」
美鈴がつぶやくと、
「ここにいる」
と、圭吾が手にしたビンを振って見せた。
黒い目のドラゴンは、ビンの中だった。
「サリュー戻ってこい」
圭吾が宙に右手を差し伸べた。すると、まるで手乗りインコのように、サリューが圭吾の手に乗った。
Tシャツの首の間から、圭吾はペンダントのビンを取り出した。
ビンはからっぽだ。美鈴がそう思った次の瞬間には、サリューがビンの中に入っていた。まるで手品でも見ているようだった。
クシュン。
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ルイが嬉しそうな顔をしている。まるで何事もなかったみたいな顔だ。
いくらドラゴンが見えないとはいえ、ルイは本当に、二匹のドラゴンの戦いに気がつかなかったのだろうか。
「ところでさっきから圭吾くん、なにを叫んでいたの? 池とか鯉とかエサとか」
「エサは言ってなかったと思うけど」
美鈴はクスリと笑った。
どうやら本当に気がついていないみたいだ。
長い間戦っていたように感じたが、ドラゴンの攻撃の速さを考えると、意外と短い時間だったのかもしれない。ルイがクシャミを数回する間に、決着がついたのだろう。
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