おばけ育成ゲーム

ことは

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11 わたしたちのこと、ばかにしてんの?

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「アリサちゃんおはよう」

 里奈が席に座ると、アリサがすくっと立ち上がった。そのままバンッと里奈の机を叩く。

 里奈は驚いてアリサを見上げる。

「わたしが里奈ちゃんをいじめてるってなに?」

 アリサは真っ赤な顔をしている。

 里奈は口をパクパクさせた。声が全然出ない。

 どこからかマキが走り寄ってきた。

「なに、里奈ちゃん。またアリサちゃん怒らせるようなこと言ったの?」

(また?)

 里奈の声は出ない。

(わたし、二人と仲良くしたいだけだよ。怒らせるようなことなんて、一度も言ったつもりないよ)

 言葉が頭の中には浮かんでいるのに、声にならない。

「昨日里奈ちゃんのお母さんが、うちのお母さんに言ったらしいよ。わたしが里奈ちゃんをいじめてるって」

 里奈は首を横に振った。

「里奈ちゃんが、お母さんにそう言ったんでしょう?」

「わたし……言ってない」

 やっとそれだけ言えた。

 でも、アリサとマキにはちっとも聞こえていないみたいだ。

「ひどーい。里奈ちゃんのお母さん、アリサちゃんが里奈ちゃんをいじめてるって言ってたの?」

 マキが、里奈とアリサの顔を交互に見る。

「まぁ、はっきりとは言わなかったらしいけど、結局そういうことでしょって、うちのお母さんが」

 アリサが苦いものでも噛んだような顔をする。

「わたし、言ってないよね? 里奈ちゃんに1,500円弁償しろなんて、そんなこと一言も言ってないよね?」

 アリサが強い口調で確認してくる。

 里奈はうなずいた。何度もうなずいた。

「じゃぁ、なんで? わたしにお金渡そうとしたんでしょ? なんで? なんでそんなことするの?」

「ごめん」

 アリサの気迫に押されて、里奈はそれだけ言うのが精いっぱいだった。

「言いたいことあるなら、わたしに直接言えばいいじゃん!」

 アリサが里奈の肩を小突いた。

 アリサの剣幕に、周りの席の子たちがソワソワした様子でこっちを見ている。

 だが、他の子たちの視線を気にもせず、アリサはいっそう声を張り上げた。

「自分ばっかりいい子のフリしちゃって、里奈ちゃんはずるいよ。いっつもにこにこしてるけど、本当はわたしたちのこと、ムカついてんでしょ? はっきり言ってよ。言わなきゃわかんないよ!」

「ちょっと言いすぎじゃぁ……」

 マキが、アリサの腕を引っぱった。その手をアリサが振り払う。

「いいの。この位言わなきゃわかんないんだよ、この子は」

 アリサは目に涙をいっぱいためている。

「わたしたちのこと、ばかにしてんの?」

 アリサの目から涙がこぼれる。

「そんなことない。わたし、二人のことが大好きだし、仲良くしたいと思ってるよ」

 里奈はアリサに微笑みかけた。

「仲良くしたい? は? ここまで言われて、なに笑ってんの? 里奈ちゃん、心から笑ってる? その笑顔を、わたしが信じてるとでも思ってる?」

 アリサがまくしたてるように言う。

 興奮したアリサの隣で、マキが黙って、手の甲で目をこすっている。マキの目にも涙がたまっていた。

「嫌なことも嫌って言えないで、そんなの友だちって言える? 言えないでしょ!」

 アリサは叫ぶように言うと、自分の席に顔を伏せた。

 マキも鼻をすすりながら、自分の席に戻っていく。

 里奈は自分の机に目をやった。

 里奈の机の上は、ランドセルが置かれたままだ。教科書もノートもまだ、机にしまっていない。

 ズシンとお腹に衝撃が走った。

 今までと比べものにならないくらい、お腹が痛い。里奈は手でお腹を押さえた。頭を机につける。ゴツンと低い音がした。

 気が遠くなりかけて、里奈は歯を食いしばった。

 痛いという言葉さえ声にならない。

 一気に血の気がひく。口の中がひんやりとする。体の芯が冷たいのに、冷や汗が止まらない。

「里奈ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」

 アリサの声だった。

 だが、里奈は顔を上げることができない。

 背中に温かい手が置かれる。

「お腹が……」

 かすれた声をのどからしぼり出す。

「痛いの?」

 アリサの声が耳元でする。

 里奈はかすかにうなずいた。

「保健室、行こう」

 アリサが里奈の右の脇に手を入れる。

「マキちゃん、手伝って」

 アリサが叫んだ。

 バタバタと走る音が近づいてきて、左の脇に手が入れられた。

 里奈は二人に抱えられて立ち上がった。

「里奈ちゃん、頑張って」

 アリサとマキが交互に声をかけてくる。

「ありが、とう」

「里奈ちゃんはしゃべらなくていいからっ」

 アリサが叫んでいる。

「里奈ちゃん、里奈ちゃん!」

 モモちゃんの声が遠い。

 激しいお腹の痛みに、意識が飛びそうだった。

 フラフラとした足取りで保健室まで行ったところで、里奈は完全に気を失った。
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