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番外編(ハッピーバレンタイン下)※少し未来の時間軸
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縁がレースの様にカットされた優美な白い皿の上に、高級そうなチョコレートが4つ。
見栄え良く、均等な間隔で並んでいた。
……2個増えてる……。
増えたチョコを何とも言えない顔で見下ろしていると、サフィールがくすくす笑う。
豊かな農紺の髪に、エメラルドの瞳の笑顔の美少女はとっても眼福なんですけど……。
では、何を動揺しているのかって?
だって、増えたチョコのデザイン、表面がどう見ても魔法陣なんですもの。
つやつやのチョコの表面に彩りもくっきりと刻まれた見た事ない魔法陣……。
それぞれ模様の違う、クリスマスカラーの、赤の魔法陣のチョコと、緑の魔法陣のチョコ……。
すごく芳しいのにどっちを食べたとしても、もはや嫌な予感しかしない……。
「これは、一体、何なんで……」
グレナディアは、質問を最後まで口にする事が叶わなかった。
「待たせたな。」
金色の髪に群青色の瞳の、この国、唯一の直系の王子が姿を現したからだ。
頭を下げようとした所を片手で制される。
流石、人の上に立つ事に慣れた王の子だとグレナディアは思った。
そして傍らの婚約者に目を送ると微笑まれる。
二日前にアークトゥルス王子を迎えに行っていたシオンと再会するのは、実は朝ぶりだ。
隙を見て姿を現す神出鬼没な婚約者に、驚きよりも純粋に喜びしか感じなくて困る。
「よし、揃ったな。」
サフィールの声に、グレナディアだけ、緊張が走った。
結局何を企んでいるのか聞けないまま二人を迎えてしまった。
「グレナディア・ボルケニィウスです。」
初対面の、攻略対象の王子にカーテシーで挨拶をする。
「お忍びだ。楽にしてくれ。」
サフィールは、アークの久しぶりに見る王子っぽい姿に、心の中だけでニヤリとした。
「まあ、座れ。特別なチョコを用意したから、一人一つ先に選べ。」
王子よりも偉そうなサフィールの振る舞いにぎょっとしたのはグレナディアだけで、
男の子二人は、慣れているのか、皿に並んだチョコに真剣な目を向け、何かを、話し合っている。
王子のスチルのチョコは、中心に飾られた黒い粒を起点に、
流れる様に金色の三日月模様が描かれていて、美しいし、
オレンジが少しだけ顔を出している、ショコラオランジェも食べたい。
……だが、だがしかし、魔法陣チョコはない。
ないないないない、絶対的に嫌だ!
無礼講だと言うなら先に選ばせて欲しい!
不安が顔に出ていたのか、サフィールはグレナディアにアイコンタクトを送って来た。
「二人が選ばなかったものを私達が食べる。」
そう言ったサフィールの顔をガン見して、思った。
これはある意味ロシアンルーレットに近いものがあるのではないかと。
「じゃあ、貰うよ。」
一番に手を出したのは、リュシオルだった。
選んだのは、赤い魔法陣のチョコ。
どうして?好奇心に負けたの?それとも、せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!みたいな?
それ多分、開いちゃダメなやつ……。
そんなリュシオルにまけじと緑の魔法陣チョコを選ぶ王子。
貴方達には危機管理とかいう概念は無いの?
サフィール様が耳元で囁いた。
「ヒロインが選んだチョコに勝った。」
え?……あ、確かに。
でもなんか、全然きゅんきゅんしない展開になってる気がするけど、いいの?
本末転倒って言わないかな?
サフィールが、王子のスチルチョコを選んだ事により、
グレナディアは最後に残ったショコラオランジェを口に運ぶ。
「……美味しい。」
心の底から幸せを噛みしめていると、事件は既に起きていた。
「まずくはないにゃ。」
王子様、語尾がにゃになってますけど噛みました?
びっくりして婚約者の方を見たら、婚約者の頭の上に、柴犬の様な薄茶の耳が!
「シオン……。あなた頭……。」
シオンはそう言われて思わず上を見たが、天井が見えるだけだった。
思い直して、傍にあった銀器の蓋で自分の姿を確認して、得意げにグレナディアの方を見た。
「ディー、見て見て耳生えた。」
どうしてそんな嬉しそうなの?
すごく、すごーく似合ってるけど、もう少し生物として不安になったり……しないのね。
王子は語尾に意図しない「にゃ」がつく事でものすごく焦っている。
ちなみに黙っていると言う選択肢はない模様。
グレナディアは、シオンの耳をふさぎながら、サフィールを問い詰める。
「王子に、にゃーにゃー言わせて……。
サフィール様、貴女、まさか、エロ同人誌みたいなことをなさるおつもりなの!?」
それを聞いたサフィールは、その発想はなかったと笑い転げているが、……。
「エロ同人誌って何?」
え?まさか、耳は塞いでいたはずよ!?
……しまった。人間の耳はふさいでいたけど、犬耳ふさぐの忘れてた!
「……ぎゃふん。」
もう、何を言っていいか解らない。
ああ、そうだ、話をそらしついでに、サフィールに質問をする。
「サフィール様は二人がどのチョコを選ぶか解っていらしたの?」
それにサフィールは、頷く。
「もちろん、確信を持っていた訳ではないが……、
リュシオルが、グレナディアの色のチョコを選べば、なし崩し的にこうなると思った。」
グレナディアは、思わず目を見開いていた。
あの魔法陣の色は、私とサフィール様の色だったのだと。
「今晩寝たら、魔法は解ける。」
むくれる王子をなだめるサフィールの姿に、犬耳の婚約者と見つめ合い、
「町に出るのは明日ね。」
と、ため息をつきつつ、折角だから、リュシオルの犬耳はしっかりと堪能させて貰いました。
これが、私達の初めてのバレンタイン祭りの初日の顛末である。
……つづかない。
見栄え良く、均等な間隔で並んでいた。
……2個増えてる……。
増えたチョコを何とも言えない顔で見下ろしていると、サフィールがくすくす笑う。
豊かな農紺の髪に、エメラルドの瞳の笑顔の美少女はとっても眼福なんですけど……。
では、何を動揺しているのかって?
だって、増えたチョコのデザイン、表面がどう見ても魔法陣なんですもの。
つやつやのチョコの表面に彩りもくっきりと刻まれた見た事ない魔法陣……。
それぞれ模様の違う、クリスマスカラーの、赤の魔法陣のチョコと、緑の魔法陣のチョコ……。
すごく芳しいのにどっちを食べたとしても、もはや嫌な予感しかしない……。
「これは、一体、何なんで……」
グレナディアは、質問を最後まで口にする事が叶わなかった。
「待たせたな。」
金色の髪に群青色の瞳の、この国、唯一の直系の王子が姿を現したからだ。
頭を下げようとした所を片手で制される。
流石、人の上に立つ事に慣れた王の子だとグレナディアは思った。
そして傍らの婚約者に目を送ると微笑まれる。
二日前にアークトゥルス王子を迎えに行っていたシオンと再会するのは、実は朝ぶりだ。
隙を見て姿を現す神出鬼没な婚約者に、驚きよりも純粋に喜びしか感じなくて困る。
「よし、揃ったな。」
サフィールの声に、グレナディアだけ、緊張が走った。
結局何を企んでいるのか聞けないまま二人を迎えてしまった。
「グレナディア・ボルケニィウスです。」
初対面の、攻略対象の王子にカーテシーで挨拶をする。
「お忍びだ。楽にしてくれ。」
サフィールは、アークの久しぶりに見る王子っぽい姿に、心の中だけでニヤリとした。
「まあ、座れ。特別なチョコを用意したから、一人一つ先に選べ。」
王子よりも偉そうなサフィールの振る舞いにぎょっとしたのはグレナディアだけで、
男の子二人は、慣れているのか、皿に並んだチョコに真剣な目を向け、何かを、話し合っている。
王子のスチルのチョコは、中心に飾られた黒い粒を起点に、
流れる様に金色の三日月模様が描かれていて、美しいし、
オレンジが少しだけ顔を出している、ショコラオランジェも食べたい。
……だが、だがしかし、魔法陣チョコはない。
ないないないない、絶対的に嫌だ!
無礼講だと言うなら先に選ばせて欲しい!
不安が顔に出ていたのか、サフィールはグレナディアにアイコンタクトを送って来た。
「二人が選ばなかったものを私達が食べる。」
そう言ったサフィールの顔をガン見して、思った。
これはある意味ロシアンルーレットに近いものがあるのではないかと。
「じゃあ、貰うよ。」
一番に手を出したのは、リュシオルだった。
選んだのは、赤い魔法陣のチョコ。
どうして?好奇心に負けたの?それとも、せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!みたいな?
それ多分、開いちゃダメなやつ……。
そんなリュシオルにまけじと緑の魔法陣チョコを選ぶ王子。
貴方達には危機管理とかいう概念は無いの?
サフィール様が耳元で囁いた。
「ヒロインが選んだチョコに勝った。」
え?……あ、確かに。
でもなんか、全然きゅんきゅんしない展開になってる気がするけど、いいの?
本末転倒って言わないかな?
サフィールが、王子のスチルチョコを選んだ事により、
グレナディアは最後に残ったショコラオランジェを口に運ぶ。
「……美味しい。」
心の底から幸せを噛みしめていると、事件は既に起きていた。
「まずくはないにゃ。」
王子様、語尾がにゃになってますけど噛みました?
びっくりして婚約者の方を見たら、婚約者の頭の上に、柴犬の様な薄茶の耳が!
「シオン……。あなた頭……。」
シオンはそう言われて思わず上を見たが、天井が見えるだけだった。
思い直して、傍にあった銀器の蓋で自分の姿を確認して、得意げにグレナディアの方を見た。
「ディー、見て見て耳生えた。」
どうしてそんな嬉しそうなの?
すごく、すごーく似合ってるけど、もう少し生物として不安になったり……しないのね。
王子は語尾に意図しない「にゃ」がつく事でものすごく焦っている。
ちなみに黙っていると言う選択肢はない模様。
グレナディアは、シオンの耳をふさぎながら、サフィールを問い詰める。
「王子に、にゃーにゃー言わせて……。
サフィール様、貴女、まさか、エロ同人誌みたいなことをなさるおつもりなの!?」
それを聞いたサフィールは、その発想はなかったと笑い転げているが、……。
「エロ同人誌って何?」
え?まさか、耳は塞いでいたはずよ!?
……しまった。人間の耳はふさいでいたけど、犬耳ふさぐの忘れてた!
「……ぎゃふん。」
もう、何を言っていいか解らない。
ああ、そうだ、話をそらしついでに、サフィールに質問をする。
「サフィール様は二人がどのチョコを選ぶか解っていらしたの?」
それにサフィールは、頷く。
「もちろん、確信を持っていた訳ではないが……、
リュシオルが、グレナディアの色のチョコを選べば、なし崩し的にこうなると思った。」
グレナディアは、思わず目を見開いていた。
あの魔法陣の色は、私とサフィール様の色だったのだと。
「今晩寝たら、魔法は解ける。」
むくれる王子をなだめるサフィールの姿に、犬耳の婚約者と見つめ合い、
「町に出るのは明日ね。」
と、ため息をつきつつ、折角だから、リュシオルの犬耳はしっかりと堪能させて貰いました。
これが、私達の初めてのバレンタイン祭りの初日の顛末である。
……つづかない。
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