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舞台裏(リュシオル・ライトブリンガー4)
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家に帰る時は、自分の寝室を目的地にする事が多い。
だって、急に姿を現してもあまり人を驚かさない場所って限られているでしょ?
前にそういう話をした後、寝室の隅に、帰還用の場所を作って貰った。
円形のドアマット一枚分のその場所から、すぐ手の届く所にある棚は、予告なしの急な外出や帰宅に必要なものが揃っている。
室内用の靴だとか、大きめのタオルだとか傘だとか、使ったらすぐ補充してくれるようになっている。
秘密基地っぽくてすごく気に入っている。
帰宅後、真っ先に向かったのは、母の部屋。
今日は呼ばれていないけど、サフィールのお友達の名前を教えてあげようと思ったのだ。
そして廊下を急いで歩いていると、後ろから声をかけられた。
「坊っちゃん、廊下を走ってはいけません。」
さっきまで誰もいなかったはずなのに、音も立てずに横に居たのは、退役軍人の現執事ウォルトだ。
もちろん転移術は使えない。
父様より少し若いが、訓練中に利き手を痛めて、上司だった父様に執事としてひきぬかれたらしい。
「ウォルト。走ってない、少し急いで歩いているだけだ。」
ウォルトこそ、走ってないのに何処から来て、いつの間に追いついたのか、いつも不思議に思う。
「そうでしたか。申し訳ありません。」
本当はちょっと走ってたかもしれないけど……、もう少し脚が長くなるまで見逃してほしい。
「ウォルトはどこに行くの?すごい手紙の量だね。父様のところ?」
いくつかの束に分けられた手紙は、昨日、母様の机に有った手紙より多い。
赤い紐で結ばれた束は『急ぎ』、黄色い紐は『普通』で、青い紐が『一応見てね』で、
白い紐が『未分類』だった。
前にウォルトに教えて貰った。
「いいえ、旦那様の所には、この倍以上をお届けしましたよ。これは奥様の分です。」
へえ、返事書くの大変そうと思った。
跡取りじゃなくて良かったとも。
「僕も母様の所に向かう途中だったんだ。」
母様の元に辿り着くまでにウォルトに騎士団での面白かった話を聞いていたのだけど、
今回は距離が近すぎた。
「では、坊っちゃん、続きはまた今度で。そうそう、町におりる時の変装は、
靴まで替えないとだめですよ。」
……何故ばれた?ウォルトすごい……。
シオンという名前で町の騎士団の子供の訓練にたまに参加してたの、
小兄様以外知らないはずだったのに……。
汚した服を、洗って管理しているのは誰か、考えればすぐに解る事だったが、
リュシオルがその事に気がつくのにはもう少しかかりそうだった。
「母様……。」
母様は、明らかに、ウォルトに渡した処理済みの手紙より多い手紙にがっかりしている。
確かに、少しの手紙は嬉しいけど、こんなに沢山手紙が来たら泣きたくなるかもしれない。
しかも毎日。
「サフィとアークトゥルス王子の婚約が決まったら、こうなる事は解っていたのよ?」
何故、二人が婚約すると母様が手紙地獄になるのかリュシオルには解らなかった。
「父様への手紙も?」
ウォルトが母様宛の手紙の倍だと言っていた。
「ええ、全部年頃の娘さんを持つ家からよ。」
さっぱり解ってない顔のリュシオルに母様は丁寧に説明してくれた。
父様に届いている手紙は、リュシオルのお嫁さんにしたい女の子の居る親御さんから。
母様に届いている手紙は、年頃の女の子が参加するお茶会へのお誘い。
母様の目に留まれば、リュシオルと結婚できるかも?という考え方だそうだ。
一度断っても、すぐに次のお誘いが来ると、流石に返信の言葉を考えるのが辛いのだそうだ。
「大変そうですね。ところでサフィのお友達の名前は、グレナディアと言うそうです。」
グレナディア・ボルケニィウス。
同じ年の彼女にも沢山手紙が届いてるのだろうか?
「ボルケニィウス辺境伯令嬢ね。彼女も領にお婿さんを迎える為に婚約者を探しているらしいわ」
婚約者を探している?
早い者勝ちだろうか?
「なる。」
きっと一緒にいたら楽しいと思う。
「え?……本気なの?」
なるって、婚約者にって事よね。
もし、婚約が決まれば、この手紙地獄からも解放されるだろう。
だけど、飽くまでもリュシオルの気持ちが大事だと思う。
それに、決して頭の回転が悪い子ではないけど、婚約が何か解っているのかしら?
今日の会話の流れにも、不安しかない。
「グレナディアに会ってみたい。」
サフィールみたいな怖い子じゃなかったらいいな。
だって、急に姿を現してもあまり人を驚かさない場所って限られているでしょ?
前にそういう話をした後、寝室の隅に、帰還用の場所を作って貰った。
円形のドアマット一枚分のその場所から、すぐ手の届く所にある棚は、予告なしの急な外出や帰宅に必要なものが揃っている。
室内用の靴だとか、大きめのタオルだとか傘だとか、使ったらすぐ補充してくれるようになっている。
秘密基地っぽくてすごく気に入っている。
帰宅後、真っ先に向かったのは、母の部屋。
今日は呼ばれていないけど、サフィールのお友達の名前を教えてあげようと思ったのだ。
そして廊下を急いで歩いていると、後ろから声をかけられた。
「坊っちゃん、廊下を走ってはいけません。」
さっきまで誰もいなかったはずなのに、音も立てずに横に居たのは、退役軍人の現執事ウォルトだ。
もちろん転移術は使えない。
父様より少し若いが、訓練中に利き手を痛めて、上司だった父様に執事としてひきぬかれたらしい。
「ウォルト。走ってない、少し急いで歩いているだけだ。」
ウォルトこそ、走ってないのに何処から来て、いつの間に追いついたのか、いつも不思議に思う。
「そうでしたか。申し訳ありません。」
本当はちょっと走ってたかもしれないけど……、もう少し脚が長くなるまで見逃してほしい。
「ウォルトはどこに行くの?すごい手紙の量だね。父様のところ?」
いくつかの束に分けられた手紙は、昨日、母様の机に有った手紙より多い。
赤い紐で結ばれた束は『急ぎ』、黄色い紐は『普通』で、青い紐が『一応見てね』で、
白い紐が『未分類』だった。
前にウォルトに教えて貰った。
「いいえ、旦那様の所には、この倍以上をお届けしましたよ。これは奥様の分です。」
へえ、返事書くの大変そうと思った。
跡取りじゃなくて良かったとも。
「僕も母様の所に向かう途中だったんだ。」
母様の元に辿り着くまでにウォルトに騎士団での面白かった話を聞いていたのだけど、
今回は距離が近すぎた。
「では、坊っちゃん、続きはまた今度で。そうそう、町におりる時の変装は、
靴まで替えないとだめですよ。」
……何故ばれた?ウォルトすごい……。
シオンという名前で町の騎士団の子供の訓練にたまに参加してたの、
小兄様以外知らないはずだったのに……。
汚した服を、洗って管理しているのは誰か、考えればすぐに解る事だったが、
リュシオルがその事に気がつくのにはもう少しかかりそうだった。
「母様……。」
母様は、明らかに、ウォルトに渡した処理済みの手紙より多い手紙にがっかりしている。
確かに、少しの手紙は嬉しいけど、こんなに沢山手紙が来たら泣きたくなるかもしれない。
しかも毎日。
「サフィとアークトゥルス王子の婚約が決まったら、こうなる事は解っていたのよ?」
何故、二人が婚約すると母様が手紙地獄になるのかリュシオルには解らなかった。
「父様への手紙も?」
ウォルトが母様宛の手紙の倍だと言っていた。
「ええ、全部年頃の娘さんを持つ家からよ。」
さっぱり解ってない顔のリュシオルに母様は丁寧に説明してくれた。
父様に届いている手紙は、リュシオルのお嫁さんにしたい女の子の居る親御さんから。
母様に届いている手紙は、年頃の女の子が参加するお茶会へのお誘い。
母様の目に留まれば、リュシオルと結婚できるかも?という考え方だそうだ。
一度断っても、すぐに次のお誘いが来ると、流石に返信の言葉を考えるのが辛いのだそうだ。
「大変そうですね。ところでサフィのお友達の名前は、グレナディアと言うそうです。」
グレナディア・ボルケニィウス。
同じ年の彼女にも沢山手紙が届いてるのだろうか?
「ボルケニィウス辺境伯令嬢ね。彼女も領にお婿さんを迎える為に婚約者を探しているらしいわ」
婚約者を探している?
早い者勝ちだろうか?
「なる。」
きっと一緒にいたら楽しいと思う。
「え?……本気なの?」
なるって、婚約者にって事よね。
もし、婚約が決まれば、この手紙地獄からも解放されるだろう。
だけど、飽くまでもリュシオルの気持ちが大事だと思う。
それに、決して頭の回転が悪い子ではないけど、婚約が何か解っているのかしら?
今日の会話の流れにも、不安しかない。
「グレナディアに会ってみたい。」
サフィールみたいな怖い子じゃなかったらいいな。
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