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幕間(サフィール・ヴィントリアージュ)
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サフィール・ヴィントリアージュは転生者だ。
しかし、その事を本人が思い出したのは、幼なじみの最愛の王子との婚約の準備に入ってから……。
この世界が、前世の自分が、寝食も忘れかねない程のめり込んでいたゲームそっくりの世界だと気づいたのも同じ、
前世から溺愛していた王子の婚約者に正式に選ばれた頃だった。
そして、このままいけば、婚約破棄を言い渡される事は間違いない事にも気付いてしまった。
しかし、せめてもの救いとしては、この世界が、ヒロインが絶対的主役であるゲームの本編で無く、
不確定要素の多い公式ファンディスクであったこと。
まだまだ策を弄するだけの時間と、未来を切り拓くだけの能力がサフィールにはあった。
サフィールは、幼少のみぎりより、王子とそのご学友に選ばれたリュシオルと共に育った。
しかも、幸いな事に、サフィールとリュシオルは、令嬢と騎士候補という壁を超え、剣と剣で語り合える迄に仲良しだ。
そしてサフィールの前世でのゲームの記憶が教えてくれる。
このままだと、幼馴染のリュシオルは、馬鹿丸出しの素直さゆえに婚約者を死に追いやってしまうのだと。
サフィールは、前世からハッピーエンド教の信者だった。
自分が望む未来のために手を抜くつもりはもちろん無い。
近くリュシオルの婚約者になるだろう、会った事もない少女に贈った物理衝撃無効のストールのお礼にと届いた、
鉄扇と、どこかで見た事があるような両端の尖った形の文鎮を机に並べて眺める。
……自分も人の事は言えないが、8歳の淑女に送るには、良い趣味だな。
そう言えば、ボルケニィウス辺境伯領は良質な鉄鉱石の名産地でもあったか……。
……それはひとまず置いておくとして、リュシオルだ。
リュシオルは頭も性格も悪くないが、バカだ。
良く言えば純粋にして素直で、ストレートにいえば剣術バカな幼馴染を思えば、あのシナリオも起こりうる未来だと思った。
ゲーム中で、リュシオルが婚約者を失う経緯はこうだ。
まずリュシオルの上の兄が結婚。
ブラコンの下の兄が、上の兄に結婚前ほど構って貰え無くなり、弟を、嫁(婚約者)にデレるのは恥ずかしい事だと洗脳。
本当は、リュシオルは婚約者の事が大好きだったのに、態度に出す事は恥ずかしい事だと思い頑なな態度に。
冷たくあしらわれていると感じていた婚約者とのすれ違いがピークに達した時、婚約者は、リュシオルの気持ちを知る為こっそり王都へ。
タイミング悪く道の反対側で美形の少女と微笑み交わすリュシオルの姿に思わず駆け寄ろうとして馬車にはねられる……。
なんとその美少女は、一緒に王子の誕生日プレゼント選び中だったリュシオルの幼馴染のサフィニアこと私。
やめて、そんなの見たくない。
婚約者になる少女は探すまでもなかった。
DDでリュシオルを攻略するか、攻略本かキャラ設定本を持っていればすぐに解る。
だって……。
その時、先触れもなくバンッと扉が開く。
乙女の在室中の部屋の扉をぞんざいに開くバカの心当たりは二人。
「サフィール、剣を取れ!」
剣術バカめ!今日も来たか。
微かに頭痛を覚えこめかみを押さえていると、リュシオルの視線は、贈られて来ていた文鎮に注がれていた。
「打撃系の武器か!初めて見る形状だ。」
そうか!
リュシオルの固有スキルの一つに鑑定眼というものがある。
これは何だ?と思うと、説明が出てくるとても便利な解説機能だ。
そのおかげで、思い出した。
この文鎮は、金剛杵だ。
金剛力士像とかが持ってる、煩悩を打ち砕くとされているあれだ。
「どうやって使うんだ?」
どうと言われても……。
このまま殴り付けそうな雰囲気の形だけれど、棒手裏剣と同じ括りとすれば、やはりこれは投擲だろうか……。
「文鎮として貰ったものだ。詳細は知らない。」
正直に答えたが、納得して無い顔だ。
まあちょうどいい機会だ。
ボルケニィウス辺境伯令嬢も、幼馴染の剣術バカも幸せになれるよう、ちょっとアドバイスしてやろうじゃないか……。
「私を仲間外れにするとは良い度胸だ!」
これまたノックも先触れもなく、遅れて飛び込んできた最愛の王子を抱きとめ、これ見よがしに堪能しながら、ボルケニィウス辺境伯令嬢の話を幼馴染に聞かせる。
みんなで幸せになろう。
たとえどんな形でも……。
*************
書いてて楽しいのですが、
自分でもどこを目指しているのか良く解らないのです。
良かったらまたお付き合いください。
しかし、その事を本人が思い出したのは、幼なじみの最愛の王子との婚約の準備に入ってから……。
この世界が、前世の自分が、寝食も忘れかねない程のめり込んでいたゲームそっくりの世界だと気づいたのも同じ、
前世から溺愛していた王子の婚約者に正式に選ばれた頃だった。
そして、このままいけば、婚約破棄を言い渡される事は間違いない事にも気付いてしまった。
しかし、せめてもの救いとしては、この世界が、ヒロインが絶対的主役であるゲームの本編で無く、
不確定要素の多い公式ファンディスクであったこと。
まだまだ策を弄するだけの時間と、未来を切り拓くだけの能力がサフィールにはあった。
サフィールは、幼少のみぎりより、王子とそのご学友に選ばれたリュシオルと共に育った。
しかも、幸いな事に、サフィールとリュシオルは、令嬢と騎士候補という壁を超え、剣と剣で語り合える迄に仲良しだ。
そしてサフィールの前世でのゲームの記憶が教えてくれる。
このままだと、幼馴染のリュシオルは、馬鹿丸出しの素直さゆえに婚約者を死に追いやってしまうのだと。
サフィールは、前世からハッピーエンド教の信者だった。
自分が望む未来のために手を抜くつもりはもちろん無い。
近くリュシオルの婚約者になるだろう、会った事もない少女に贈った物理衝撃無効のストールのお礼にと届いた、
鉄扇と、どこかで見た事があるような両端の尖った形の文鎮を机に並べて眺める。
……自分も人の事は言えないが、8歳の淑女に送るには、良い趣味だな。
そう言えば、ボルケニィウス辺境伯領は良質な鉄鉱石の名産地でもあったか……。
……それはひとまず置いておくとして、リュシオルだ。
リュシオルは頭も性格も悪くないが、バカだ。
良く言えば純粋にして素直で、ストレートにいえば剣術バカな幼馴染を思えば、あのシナリオも起こりうる未来だと思った。
ゲーム中で、リュシオルが婚約者を失う経緯はこうだ。
まずリュシオルの上の兄が結婚。
ブラコンの下の兄が、上の兄に結婚前ほど構って貰え無くなり、弟を、嫁(婚約者)にデレるのは恥ずかしい事だと洗脳。
本当は、リュシオルは婚約者の事が大好きだったのに、態度に出す事は恥ずかしい事だと思い頑なな態度に。
冷たくあしらわれていると感じていた婚約者とのすれ違いがピークに達した時、婚約者は、リュシオルの気持ちを知る為こっそり王都へ。
タイミング悪く道の反対側で美形の少女と微笑み交わすリュシオルの姿に思わず駆け寄ろうとして馬車にはねられる……。
なんとその美少女は、一緒に王子の誕生日プレゼント選び中だったリュシオルの幼馴染のサフィニアこと私。
やめて、そんなの見たくない。
婚約者になる少女は探すまでもなかった。
DDでリュシオルを攻略するか、攻略本かキャラ設定本を持っていればすぐに解る。
だって……。
その時、先触れもなくバンッと扉が開く。
乙女の在室中の部屋の扉をぞんざいに開くバカの心当たりは二人。
「サフィール、剣を取れ!」
剣術バカめ!今日も来たか。
微かに頭痛を覚えこめかみを押さえていると、リュシオルの視線は、贈られて来ていた文鎮に注がれていた。
「打撃系の武器か!初めて見る形状だ。」
そうか!
リュシオルの固有スキルの一つに鑑定眼というものがある。
これは何だ?と思うと、説明が出てくるとても便利な解説機能だ。
そのおかげで、思い出した。
この文鎮は、金剛杵だ。
金剛力士像とかが持ってる、煩悩を打ち砕くとされているあれだ。
「どうやって使うんだ?」
どうと言われても……。
このまま殴り付けそうな雰囲気の形だけれど、棒手裏剣と同じ括りとすれば、やはりこれは投擲だろうか……。
「文鎮として貰ったものだ。詳細は知らない。」
正直に答えたが、納得して無い顔だ。
まあちょうどいい機会だ。
ボルケニィウス辺境伯令嬢も、幼馴染の剣術バカも幸せになれるよう、ちょっとアドバイスしてやろうじゃないか……。
「私を仲間外れにするとは良い度胸だ!」
これまたノックも先触れもなく、遅れて飛び込んできた最愛の王子を抱きとめ、これ見よがしに堪能しながら、ボルケニィウス辺境伯令嬢の話を幼馴染に聞かせる。
みんなで幸せになろう。
たとえどんな形でも……。
*************
書いてて楽しいのですが、
自分でもどこを目指しているのか良く解らないのです。
良かったらまたお付き合いください。
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