捨てられ伯爵令嬢は野獣に勝てるか

めろめろす

文字の大きさ
9 / 92
騎士団入団

第7話

しおりを挟む

「部屋はこっちだ……。早くついてこい、ぐずぐずするな!」

 背が高く、赤毛の長い髪を1つにまとめている女がアリアネスとセレーナを先導してくれた。アルフォンソとルイは、アリアネスとセレーナを女性に任せて、早々にどこかに消えてしまった。遠くで見ていたところ、女性は自分達の案内を拒んでいたようにも見えたが、話は済んだのだろう。

「はじめまして、私は、アリアネスと申します。これからよろしくお願いいたしますわ。そしてこちらがセレーナです。彼女も今日から第10支団にお世話になりますわ!よろしくお願いいたします。」
「……。」

 自己紹介が済んでなかったと思い、前を歩く女性にアリアネスが挨拶をするが、一向に返事が返ってこない。

「あら、聞こえなかったかしら?私は……。」

 アリアネスがもう一度挨拶をしようとした瞬間にら女性がピタリと歩みを止めた。必然的にアリアネスたちも立ち止まることになる。

「あんたたちに名前を教えるつもりはない。男漁りにきた世間知らずなお嬢さんだろ?うちの騎士団の評判を下げない内にさっさとやめてくれないか?」

 女はアリアネスの方を振り向きもせずに話し続ける。

「伯爵令嬢ならうちなんかにこなくても、いくらでもいい男はいるだろう?それとも騎士と良い仲になって、騎士団長に一矢報いるつもりか?いずれにしても、騎士団長の見る目は確かだな。あんたみたいな女を選ばずに、美しくて、賢いファニア様を選んだんだからな!」
「…。」 

 しかし、アリアネスは返事をせずに黙ったままだ。返事がないことに苛ついたのか、女はさらに酷い罵倒を続ける。

「体を使って男をからめ雌狐め!うちの団員はお前なんかに見向きもしないぞ。泥にまみれて地面に這いつくばりたくなきゃさっさと逃げ帰るんだな!」

 再び歩き出した女は古ぼけた扉が特徴の部屋の前で立ち止まる。そして、まるで触れたくもないとでもいうようにセレーナに鍵を投げてよこし、そのまま早足でその場を去った。

「…随分とありきたりな悪口しか言えない方なのね。もっと言われるかと思っていたから少し拍子抜けしてしまったわ。」
「お嬢様のことを侮っているのでしょう。すぐに屋敷に逃げ帰ると……。アリアネス様、部屋に入りましょう。温かいハーブティーをいれます。」

 セレーナが古ぼけたドアのカギを開けると、建てつけが悪いのがぎぃぃと耳触りな音がした。
 部屋の中には2つの古ぼけたベッドがあり、使い古されたシーツが載せられていた。荷物を入れる洋服ダンスが1つに、窓は長年掃除されていないのか薄汚れている。それに、そもそも部屋全体がほこりっぽい。顔をしかめるセレーナと違い、アリアネスは宝物を見つけた子供のように目を輝かせた。

「まぁ!まるで童話で読んだ貧しい女の子の屋根裏部屋のよう!素敵だわ!」
「そういってくださって幸いです。しかし、私はこのような部屋になれておりますが、お嬢様にはご迷惑をおかけすることもあるかと。申し訳ありません…。」
「何を言ってるのセレーナ?小さい頃、2人で秘密基地を作って1カ月生活したことをお忘れ?」
「…もちろん覚えております。お嬢様が半分野生化してしまい、文明に戻ることが大変でしたね。」
「そんなことは覚えていなくてよろしい!とにかく、部屋の掃除をするわよ!!」

「かしこまりました、お嬢様。」

 頼もしい主人の雄叫びを聞いて、セレーナは珍しく口元を緩ませるが、すぐに無表情に戻って、恭しく頭を下げたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

母を亡くした公爵令嬢は、虐げられないが、今日も願いが叶わない

春風由実
恋愛
「何故お前が生きた?」 それは怪我をして長く眠っていたエルリカが、目覚めた直後に父親である公爵から掛けられた言葉だった。 「お前こそが、女神の元に行くべきだった!」 父親から強い口調で詰られたエルリカ。 普通の令嬢は、ここで泣くか、その後立ち直れなくなるという。 けれどエルリカは違った。 「あなたこそ、何をのうのうと元気にしているのですか?」 そうしてこの日父娘は、それぞれに絶縁を宣言した。 以来、母方の祖父母に引き取られ、侯爵領で過ごしてきたエルリカ。 ところが公爵は、いつまでもエルリカを除籍する手続きを実行しなかった。 おかげで名ばかりの公爵令嬢のまま、エルリカが王都へと戻る日がやって来てしまう──。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

処理中です...