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青い王子と雨の王冠
村雲④
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怒ってないからもう出てこい!とベッドから引きずり出されたハフィは、村雲のすぐ隣に座らせられていた。
「それで?どんな魔法なんだ?」
「え?な、なんのお話ですか?」
「だーかーらー!兄さんと仲良くなるために使った魔法だよ!お前、魔女なんだろ?教えてくれよ、その魔法!」
「いや、えっと!」
まさかまだそんな勘違いをしていたのかとハフィは慌てて首を横に振る。すると村雲は不服そうに唇を尖らせた。
「なんだよー。いいじゃないか、教えてくれたって!別に悪用したりしないよ!…ただちょっと兄さんと仲良くなりたいってだけで。」
「それは…悪用っていうんじゃないでしょうか。」
「あぁん?」
「ひぃ!」
凄んでくる村雲が怖いハフィは耳をぺたりと伏せてぷるぷると震える。
「そ!それに私は魔法なんて使ってません!私、ほとんどの魔法を使えないんですから!」
「はぁ?魔女なんだろ?どういうことだよ!」
ハフィの話を信じていないのか、村雲が机をバンっと叩いて反論してくる。また身を縮めるハフィだったが、ここで誤解を解いておかないといつまでたっても魔法を使ってくれと詰め寄ってきそうなので、頑張って話を続ける。
「っ~~!わ、私!落ちこぼれなので!魔力もとっても弱くてほとんどの魔法を使うことができないんです!だから!!」
落ちこぼれであることを自分で言うなんて情けないが仕方がない。下を向いて大声でまくしたてた後、ゆっくり顔を上げて村雲の顔を見る。
さぞや馬鹿にするような顔をしているのだろうと思っていたが、予想とは裏腹に、村雲は口元を緩めて嬉しさを堪えるような顔をしていた。
「あ、あの?」
「っ!な、なんだよ!お前も落ちこぼれなのかよ!早く言えよ!僕と同じじゃないか!」
「同じ?」
ハフィが首を傾げると、村雲が興奮から頬を赤くしてハフィの両手をギュッと握り込んだ。
「はは!僕も王族の落ちこぼれさ!病気がちで水力もほとんど持ってない。降雨の儀さえできないような王家の恥晒しさ!」
「そんな…。」
話すには辛い内容なのに、村雲は「そんな顔するな。」といって笑う。
「この国の次の王は兄さんだ。僕なんかが王になっていいはずはないのさ。…なのにあいつらは!」
朗らかに笑っていた村雲の顔がくもる。
「あいつらって誰のことですか?」
「王に助言する元老院の奴らだよ!兄さんのお母様の身分が低いから王に相応しくないって言ってるんだ!正妃の息子である僕の方が王に相応しいってね!でもそんなの建前さ!本当は体が弱くて水力もほとんどない僕を王にして人形みたいに操りたいだけだ!」
村雲が膝の上でこぶしを強く握りしめている。
「僕は兄さんが次の王でよかったんだ!なのに元老院のじいさんたちが、僕にもチャンスを与えるべきだって!母様が僕は降雨の儀を行えるような体じゃないって進言したのに、父様も話を聞いてくれないんだ!」
村雲はとても辛そうな表情をしていて、ハフィの胸も痛くなってしまう。その心の痛みを少しでも軽くしてあげたい。
「…そうだ、私の猫じゃらしありますか?」
思いついたハフィは村雲に尋ねる。唐突な質問に驚いた村雲だったが「それならここに」とテーブルの上に置いておいた猫じゃらしをハフィに手渡す。
「私、唯一使える魔法があるんです。それをお見せしますね。」
「そ、そうなのか!それで兄さんと!」
「いきますよー!元気になーれ!元気になーれ!フィンフィンハフィ・ルールルー!」
目を閉じて一度猫じゃらしをぎゅっと胸に当てる。村雲が元気になることを祈ってふわりとそれを振った。
「へ…?」
一瞬だけハフィの体が光る。それをぼんやりと見ていた村雲は、ささくれ立っていた心が少しだけ穏やかになるのを感じた。
「これは…。」
「えへへ。大したことないんですけど、私、少しだけ人を元気づけられるんです!」
照れたように頬を染めて笑うハフィに、村雲はしばし見惚れてしまったのだった。
「それで?どんな魔法なんだ?」
「え?な、なんのお話ですか?」
「だーかーらー!兄さんと仲良くなるために使った魔法だよ!お前、魔女なんだろ?教えてくれよ、その魔法!」
「いや、えっと!」
まさかまだそんな勘違いをしていたのかとハフィは慌てて首を横に振る。すると村雲は不服そうに唇を尖らせた。
「なんだよー。いいじゃないか、教えてくれたって!別に悪用したりしないよ!…ただちょっと兄さんと仲良くなりたいってだけで。」
「それは…悪用っていうんじゃないでしょうか。」
「あぁん?」
「ひぃ!」
凄んでくる村雲が怖いハフィは耳をぺたりと伏せてぷるぷると震える。
「そ!それに私は魔法なんて使ってません!私、ほとんどの魔法を使えないんですから!」
「はぁ?魔女なんだろ?どういうことだよ!」
ハフィの話を信じていないのか、村雲が机をバンっと叩いて反論してくる。また身を縮めるハフィだったが、ここで誤解を解いておかないといつまでたっても魔法を使ってくれと詰め寄ってきそうなので、頑張って話を続ける。
「っ~~!わ、私!落ちこぼれなので!魔力もとっても弱くてほとんどの魔法を使うことができないんです!だから!!」
落ちこぼれであることを自分で言うなんて情けないが仕方がない。下を向いて大声でまくしたてた後、ゆっくり顔を上げて村雲の顔を見る。
さぞや馬鹿にするような顔をしているのだろうと思っていたが、予想とは裏腹に、村雲は口元を緩めて嬉しさを堪えるような顔をしていた。
「あ、あの?」
「っ!な、なんだよ!お前も落ちこぼれなのかよ!早く言えよ!僕と同じじゃないか!」
「同じ?」
ハフィが首を傾げると、村雲が興奮から頬を赤くしてハフィの両手をギュッと握り込んだ。
「はは!僕も王族の落ちこぼれさ!病気がちで水力もほとんど持ってない。降雨の儀さえできないような王家の恥晒しさ!」
「そんな…。」
話すには辛い内容なのに、村雲は「そんな顔するな。」といって笑う。
「この国の次の王は兄さんだ。僕なんかが王になっていいはずはないのさ。…なのにあいつらは!」
朗らかに笑っていた村雲の顔がくもる。
「あいつらって誰のことですか?」
「王に助言する元老院の奴らだよ!兄さんのお母様の身分が低いから王に相応しくないって言ってるんだ!正妃の息子である僕の方が王に相応しいってね!でもそんなの建前さ!本当は体が弱くて水力もほとんどない僕を王にして人形みたいに操りたいだけだ!」
村雲が膝の上でこぶしを強く握りしめている。
「僕は兄さんが次の王でよかったんだ!なのに元老院のじいさんたちが、僕にもチャンスを与えるべきだって!母様が僕は降雨の儀を行えるような体じゃないって進言したのに、父様も話を聞いてくれないんだ!」
村雲はとても辛そうな表情をしていて、ハフィの胸も痛くなってしまう。その心の痛みを少しでも軽くしてあげたい。
「…そうだ、私の猫じゃらしありますか?」
思いついたハフィは村雲に尋ねる。唐突な質問に驚いた村雲だったが「それならここに」とテーブルの上に置いておいた猫じゃらしをハフィに手渡す。
「私、唯一使える魔法があるんです。それをお見せしますね。」
「そ、そうなのか!それで兄さんと!」
「いきますよー!元気になーれ!元気になーれ!フィンフィンハフィ・ルールルー!」
目を閉じて一度猫じゃらしをぎゅっと胸に当てる。村雲が元気になることを祈ってふわりとそれを振った。
「へ…?」
一瞬だけハフィの体が光る。それをぼんやりと見ていた村雲は、ささくれ立っていた心が少しだけ穏やかになるのを感じた。
「これは…。」
「えへへ。大したことないんですけど、私、少しだけ人を元気づけられるんです!」
照れたように頬を染めて笑うハフィに、村雲はしばし見惚れてしまったのだった。
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