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梅干し作り~中編~
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「数日先の天気なんて分かりませんよね?」
人工衛星もなければ天気予報もないこの世界。無理を承知でキースさんにそう尋ねると、意外にも簡単な答えが返ってきた。
「雨季ではないし、当分晴れるだろ」
「あ、そうでしたわね」
日本には四季があるが、この世界には“雨季”と“乾季”以外は大きな気候の変化はない。冬にあたる時期に少し肌寒くなるかな……程度で、一年を通して湿度も低く過ごしやすい気候が続く。この状況でよく梅干しにカビが発生したな、と逆に感心させられる程だ。
「天気がなにか関係あるのか?何処かへ行くのか?」
「梅干しをそろそろ干そうと思っておりまして」
「そういえば、そんなこと言っていたな」
「勿論、干さなくても大丈夫ですが、
・太陽の熱で殺菌。
・余分な水分を蒸発させ、保存性を高める。
・風味豊かなまろやかな味にする。
などの効果が期待できますの」
「なるほど」
最近では私が梅干しについてのうんちくを語りだすと、キースさんは無言でメモを取るようになっていた。医者になるだけあって、勉強熱心な人だ。
「それで明日の天気なんだな」
「そうなんです。晴れた日が三~四日、続きそうな日を選んで干します」
「こんな平らなザルでいいのか?」
「ええ、ザルの上に並べることで通気性をよくなりますの。ささ、一緒に並べてくださいませね」
上手く梅干しが完成すれば患者さん達にも使ってもらおうと考えている。そのため十壺ほど制作したほどだ。天日干しだって相当な手間暇がかかる。
「このまま四日、干していればいいのか?」
「いえ、一日に一回は梅を裏返します。さらに一日目は夕方に屋内に取り込み、梅酢に入った容器に梅を付け戻します」
「これを明日もやるわけだな……」
「大変ですけど、よろしくお願いいたしますね」
相当な手間暇だが、
『梅干しは手間暇をかければかけるほど美味しくなるのよ』
と祖母が口癖のように言っていた。診療所は忙しく空いている時間も少ないが、異世界で初となる梅干し作りだできるだけの手間暇をかけたかった。
そんな私の気持ちに斜め上の形でキースさんは応えてくれた。次の日、梅を干そうとしていると十歳ぐらいの二人の少年と少女が姿を見せた。
「リタとレオだ」
キースさんは笑顔で二人をそう紹介する。
「梅干し作りをぜひ手伝いたいと言ってくれてな」
「はい!ウメシを作りたいです!」
明らかに言わせられている二人だが、私も大人だ。笑顔で二人を迎え入れる。
「ありがとうございます。それでは……」
『手伝ってくださいませ』と言いかけて私は言葉を失った。彼らが最後にお風呂に入ったのは何時なのか問いただしたくなるほど手は黒く、爪も伸び放題だった。これではせっかくの梅干しが台無しだ。
「それでは、まずお二人共、爪を切って手を洗っていただけますこと?」
二人は私にかけられた言葉にキョトンとした表情を浮かべる。おそらくこの手の汚さだ、食事をする前、帰宅後に手洗いをするという習慣はないのだろう。どうやら彼らに“梅干し作り”を伝授する前に“手洗い”を教えることから始まりそうだ。
「こちらです。いらしてくださいませ」
私は小さく息をはいて流しへ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【参考文献】
株式会社 紀和農園プロダクツ:梅干しあれこれ (最終閲覧日:2019年5月10日)
http://www.kiwanouen.co.jp/file/arekore/arekore-top.html
【御礼】
多数のお気に入り、評価ありがとうございます。大変励みになっております。
人工衛星もなければ天気予報もないこの世界。無理を承知でキースさんにそう尋ねると、意外にも簡単な答えが返ってきた。
「雨季ではないし、当分晴れるだろ」
「あ、そうでしたわね」
日本には四季があるが、この世界には“雨季”と“乾季”以外は大きな気候の変化はない。冬にあたる時期に少し肌寒くなるかな……程度で、一年を通して湿度も低く過ごしやすい気候が続く。この状況でよく梅干しにカビが発生したな、と逆に感心させられる程だ。
「天気がなにか関係あるのか?何処かへ行くのか?」
「梅干しをそろそろ干そうと思っておりまして」
「そういえば、そんなこと言っていたな」
「勿論、干さなくても大丈夫ですが、
・太陽の熱で殺菌。
・余分な水分を蒸発させ、保存性を高める。
・風味豊かなまろやかな味にする。
などの効果が期待できますの」
「なるほど」
最近では私が梅干しについてのうんちくを語りだすと、キースさんは無言でメモを取るようになっていた。医者になるだけあって、勉強熱心な人だ。
「それで明日の天気なんだな」
「そうなんです。晴れた日が三~四日、続きそうな日を選んで干します」
「こんな平らなザルでいいのか?」
「ええ、ザルの上に並べることで通気性をよくなりますの。ささ、一緒に並べてくださいませね」
上手く梅干しが完成すれば患者さん達にも使ってもらおうと考えている。そのため十壺ほど制作したほどだ。天日干しだって相当な手間暇がかかる。
「このまま四日、干していればいいのか?」
「いえ、一日に一回は梅を裏返します。さらに一日目は夕方に屋内に取り込み、梅酢に入った容器に梅を付け戻します」
「これを明日もやるわけだな……」
「大変ですけど、よろしくお願いいたしますね」
相当な手間暇だが、
『梅干しは手間暇をかければかけるほど美味しくなるのよ』
と祖母が口癖のように言っていた。診療所は忙しく空いている時間も少ないが、異世界で初となる梅干し作りだできるだけの手間暇をかけたかった。
そんな私の気持ちに斜め上の形でキースさんは応えてくれた。次の日、梅を干そうとしていると十歳ぐらいの二人の少年と少女が姿を見せた。
「リタとレオだ」
キースさんは笑顔で二人をそう紹介する。
「梅干し作りをぜひ手伝いたいと言ってくれてな」
「はい!ウメシを作りたいです!」
明らかに言わせられている二人だが、私も大人だ。笑顔で二人を迎え入れる。
「ありがとうございます。それでは……」
『手伝ってくださいませ』と言いかけて私は言葉を失った。彼らが最後にお風呂に入ったのは何時なのか問いただしたくなるほど手は黒く、爪も伸び放題だった。これではせっかくの梅干しが台無しだ。
「それでは、まずお二人共、爪を切って手を洗っていただけますこと?」
二人は私にかけられた言葉にキョトンとした表情を浮かべる。おそらくこの手の汚さだ、食事をする前、帰宅後に手洗いをするという習慣はないのだろう。どうやら彼らに“梅干し作り”を伝授する前に“手洗い”を教えることから始まりそうだ。
「こちらです。いらしてくださいませ」
私は小さく息をはいて流しへ向かった。
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【参考文献】
株式会社 紀和農園プロダクツ:梅干しあれこれ (最終閲覧日:2019年5月10日)
http://www.kiwanouen.co.jp/file/arekore/arekore-top.html
【御礼】
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