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『医者の嫁(見習い)』から『医者の婚約者』にステータスアップした件
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覚悟していた痛みがなかなか訪れないので、おそるおそる目を開けるとディランの薄いが広い胸板が広がっていた。どうやら私をかばって抱きしめてくれたに違いない。顔を埋めた胸元からは場違いなほど華やかな香りもフワリと広がってくる。さすがイケメン、身だしなみもイケメンだ。
「大事ならばなぜ手放した」
ディランの華やかな雰囲気とは対照的に、キースさんは鋭くそう言い放つ。その声へ視線を向けると、男の手をひねりあげ床の上に組み敷いている彼の姿があった。
「全てを捨てて自分との人生を選んでくれた女性をなぜ手放した」
その声にはどこか嫉妬するような切実な響きが感じられる。
「本当に愛しているならば、捨てさせるべきじゃない。裕福な生活をしていた女性が全てを失って幸せになれるわけがないだろ。それでも捨てさせたなら、『怖い』『実感がない』なんてアホなこと言ってないで、死ぬ気で幸せにするべきだ!」
あぁ……そうか。この人は、『心に決めた人』に全てを捨てさせることができなかったのか。
確かに前世で貧乏生活を経験している私ですら、時々この診療所の経済状況に泣き言を言いそうになる。おそらく貴族の一人娘として可愛がられてきた人間など半日も持たないだろう。
キースさんは『心に決めた人』を幸せにするために、一緒にいることをあえて選択しなかったに違いない。
「お前は、どんな理由であれ、彼女から一度逃げ出したんだ。諦めろ」
その言葉に男は嘘のように大人しくなり、ようやく診療所内に安堵の雰囲気が広がった。
「それと……守っていただいたのはありがたいのだが、俺の婚約者から離れていただきたい」
キースさんはそう言って、私達に顔を向けた。その言葉に初めてディランに抱きしめられていたことに気付かされ、慌てて彼から離れる。
「これはこれは失礼いたしました。それでは、そちらの男は代わりに私が引き取りましょう」
ディランは大げさな身振りでキースさんに挨拶し、ツカツカと男の元へ歩み寄る。キースさんが手を離しても動こうとしない男の片腕を掴むと、引きずるようにして診療所から出て行った。
「グレイス様、大丈夫でしたか?!」
男の姿が見えなくなると、エマが飛びつくように私に駆け寄った。
「いえいえ、キース様とディラン様のおかげでかすり傷一つ負いませんでしたわ」
「私、こんなことになるなんて思っていなくて……」
どうやらエマの自宅周辺で怪しい男がウロウロしているという情報はあったらしいが、邸宅内には入ってこなかったので放っておいたらしい。おそらく男は諦めたのではなく彼女が外出するタイミングを狙って接触してきたのだろう。ただディランの様子からして、あの男は二度と彼は彼女の周りをうろつけなくなったに違いない。
帰り際、馬車に乳母達が乗り込むのをキースさんが手伝っていると、エマが私の側に静かに近寄り、こっそり重大な事実を耳打ちしてきた。
「そういえば、グレイス様、『結婚していただけない』とおっしゃっていましたが、一応『婚約者』ではあるんですね」
エマの言葉に初めて自分が『婚約者』と呼ばれていたことに気付いた。どうやら『医者の嫁(見習い)』から『医者の婚約者』に昇格できたようです。
「大事ならばなぜ手放した」
ディランの華やかな雰囲気とは対照的に、キースさんは鋭くそう言い放つ。その声へ視線を向けると、男の手をひねりあげ床の上に組み敷いている彼の姿があった。
「全てを捨てて自分との人生を選んでくれた女性をなぜ手放した」
その声にはどこか嫉妬するような切実な響きが感じられる。
「本当に愛しているならば、捨てさせるべきじゃない。裕福な生活をしていた女性が全てを失って幸せになれるわけがないだろ。それでも捨てさせたなら、『怖い』『実感がない』なんてアホなこと言ってないで、死ぬ気で幸せにするべきだ!」
あぁ……そうか。この人は、『心に決めた人』に全てを捨てさせることができなかったのか。
確かに前世で貧乏生活を経験している私ですら、時々この診療所の経済状況に泣き言を言いそうになる。おそらく貴族の一人娘として可愛がられてきた人間など半日も持たないだろう。
キースさんは『心に決めた人』を幸せにするために、一緒にいることをあえて選択しなかったに違いない。
「お前は、どんな理由であれ、彼女から一度逃げ出したんだ。諦めろ」
その言葉に男は嘘のように大人しくなり、ようやく診療所内に安堵の雰囲気が広がった。
「それと……守っていただいたのはありがたいのだが、俺の婚約者から離れていただきたい」
キースさんはそう言って、私達に顔を向けた。その言葉に初めてディランに抱きしめられていたことに気付かされ、慌てて彼から離れる。
「これはこれは失礼いたしました。それでは、そちらの男は代わりに私が引き取りましょう」
ディランは大げさな身振りでキースさんに挨拶し、ツカツカと男の元へ歩み寄る。キースさんが手を離しても動こうとしない男の片腕を掴むと、引きずるようにして診療所から出て行った。
「グレイス様、大丈夫でしたか?!」
男の姿が見えなくなると、エマが飛びつくように私に駆け寄った。
「いえいえ、キース様とディラン様のおかげでかすり傷一つ負いませんでしたわ」
「私、こんなことになるなんて思っていなくて……」
どうやらエマの自宅周辺で怪しい男がウロウロしているという情報はあったらしいが、邸宅内には入ってこなかったので放っておいたらしい。おそらく男は諦めたのではなく彼女が外出するタイミングを狙って接触してきたのだろう。ただディランの様子からして、あの男は二度と彼は彼女の周りをうろつけなくなったに違いない。
帰り際、馬車に乳母達が乗り込むのをキースさんが手伝っていると、エマが私の側に静かに近寄り、こっそり重大な事実を耳打ちしてきた。
「そういえば、グレイス様、『結婚していただけない』とおっしゃっていましたが、一応『婚約者』ではあるんですね」
エマの言葉に初めて自分が『婚約者』と呼ばれていたことに気付いた。どうやら『医者の嫁(見習い)』から『医者の婚約者』に昇格できたようです。
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