僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん

文字の大きさ
22 / 61
第2部  プラチナ帝国公爵領編

第9話

しおりを挟む
シェラはこの声を否定も肯定もせず、声を発した。
 
「聞け!!」

そう言っただけでピタリと兵士の声は止み、シェラの言葉を余すことなく聞こうとする。

「500のうち、450は私に続いて砦を出る。そして野外で敵を迎え撃つ!!」

「・・・・・こわいか?」

とニヤリとしながら問いかけるシェラに兵士は誰もうなずかずシェラを一心にみている。

すごい。

これがシェラの人心掌握か。しかもただの一瞬で。

僕も思わずシェラについていきそうになった。

この人について行きたいと思わせる何かが出ているのだ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

実はこの場にナスタチウム元皇太子殿下がいた。

彼は皇帝陛下の怒りを買い平民に落とされ傭兵にまで落ちぶれていたが、たまたまこの砦の兵士として雇われていたのだ。

そしてこの奇跡を肌で体感した。

「すげぇ・・・・これが偉大な英雄の姿か・・・・・」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

シェラは砦の外へ出るが、僕には別の役目がある。

残りの50を率いて大事な役目を任されているのだ。

「出陣!!!」

というシェラの掛け声で砦の兵士の9割は砦からでて野戦で10倍以上の敵を迎撃する。

戦術の観点からいくと賢い選択といはいえない。しかしシェラが率いる兵士は誰も疑問に思わない。

かつてシェラが僕に言った「この人には絶対に勝てないと思わせることが第一条件だ」と言った言葉を思い出す。

シェラについていく兵士の目にはシェラの姿しか映らないように見える。

それを知ってか知らずかシェラは兵士に檄をかける。

「防陣を敷け。敵を倒そうとするな。自分と隣の身を守れ。諸君らの後ろには私がいる」

「相手の将が何者であろうと、何人いようと関係ない。身を守れ。耐えろ。さすれば必ず勝利するぞ!!」

この言葉だけでシェラについてきた兵士の士気は高まった。

さらにシェラは冷静に相手の軍の分析を開始する。

一番大事なことは相手の将がどのような思考をするかである。

シェラはすでに当たりをつけていた。

この軍を率いる将はシルバー王国内にいる将軍ではない。おそらくシルバー王国傘下の国の将軍であろう。

そしてここまでの練度をもつ軍と力のある将軍は3人しかいない。

一人はコーラル王国のクロッカス将軍、一人はクラウド王国のライラック将軍、もう一人はコパー都市国家のスマルト将軍である。

そのうち、一人は死んだ。

そして、スマルト将軍、通称「知略のスマルト」はコパー都市国家の国王に忠誠を誓っていない。

ということは消去法でクラウド王国のライラック将軍が残った。

そしてライラック将軍は奇策を好まず正攻法を好み、軍は精強を誇るという情報をシェラは持っていた。

おそらく、目の前の軍を率いるのはクラウド王国のライラック将軍であろう。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

エボニー砦450とクラウド王国軍5000が野戦で戦っている。

すでに数時間が過ぎていた。互いに一進一退である。

10倍の差をもつ軍が野戦で戦って互角の戦況を保つというのは常識から言って考えられないことだ。

この常識を覆した原因はシェラの采配にある。

シェラ率いる450は防陣を敷いて戦っている。

防陣の一部が崩れそうになると、中央にいるシェラが間にはいり、立て直しを図るのだ。

これを繰り返すことで優勢だったはずの5000のクラウド王国軍に攻めきれないという焦りが生まれた。

軍の焦りは将に伝染る。

僕は、シェラから数時間以内にかならず敵側に焦りがでて隙ができると聞いていた。

その隙が出たら、ライラック将軍の本陣近くまで林を利用して50の兵で近づき、本陣の兵が少なくなる時を見計らって奇襲をしかけるという策を与えられていた。

つまりシェラは僕を信じて、5000の兵を引き付ける囮の役をしてくれたのだ。

450の兵を囲む5000の兵。実際には4000の兵が囲んでいる。

残りの1000は本陣でライラック将軍を守っている。しかし、シェラが指揮をとる450は士気も結束も固く、容易に崩せない。

あまり固すぎると相手の士気がおち、攻撃の手が緩んでしまう可能性がある。逆に崩れだすと人数を増やして一気に勝負を決めようという戦場の心理が働く。

その心理を知り尽くしているシェラは適度なところでわざと隙をみせ、防陣が崩れるように見せかけた。

案の定、ライラック将軍は残りの1000も攻撃に加え、一気にこの戦いを終わらせようとした。

罠にかかった本陣に僕は狙いをすまし、50の兵で不意をついて総攻撃を加えた。

少しばかりの抵抗はあったが、本陣をまもる兵士は10人足らずであり、不意をつかれて動揺していたこともあって障害にはならなかった。

僕の剣がライラック将軍へ一撃を浴びせ、致命傷を与えることに成功したのだ。

将軍の最後の言葉は、

「大将軍様には10倍の差ぐらいでは相手にもならなかった。しかし全力をもって相手をしたのだ。悔いはない。クラウド王国に栄光あれ」

というものであった。

この将軍も背負うものがあり、覚悟を持って戦場に出て来たのだろうと思った。

僕は勝鬨をあげ、この戦いが終わったことを戦場にいる兵士全員にきかせた。

「この戦い、エボニー砦守備軍が勝ったぞーーーーーーー!!!」

この勝鬨を聞いて負けに気づいたクラウド王国軍はみな投降した。

こうしてのちにエボニー砦の奇跡と呼ばれる戦いは守備側の勝利でおわった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

空手馬鹿の俺が転生したら規格外の治癒士になっていた 〜筋力Eのひ弱少年治癒士が高みを目指す!?〜

くまみ
ファンタジー
 前世は空手部主将の「ゴリラ」男。転生先は……筋力Eのひ弱な少年治癒士!?  「資質がなんだ!俺の拳は魔法を超える!……と、思うけど……汗」 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  俺は五里羅門(ごり・らもん) 35歳独身男だ。硬派すぎて女が寄り付かず。強すぎる空手愛と鍛え抜かれた肉体のせいで不本意ながら通称「ゴリラ」と呼ばれていた。  仕事帰りにダンプに跳ねられた俺が目覚めると、そこは異世界だった。だが転生した姿は前世とは真逆。  病弱で華奢。戦闘力最低と言われる職業の「治癒士」(ヒーラー)適正の10歳の少年・ノエル。  「俺は戦闘狂だぞ!このひ弱な体じゃ、戦えねぇ!  「華奢でひ弱な体では、空手技を繰り出すのは夢のまた夢……」  魔力と資質が全てのこの世界。努力では超えられない「資質の壁」が立ちふさがる。  だが、空手馬鹿の俺の魂は諦めることを知らなかった。  「魔法が使えなきゃ、技で制す!治癒士が最強になっちゃいけないなんて誰が決めた?」  これは魔法の常識を「空手の技」で叩き壊す、一人の少年の異世界武勇伝。    伝説の騎士、美少女魔術師、そして謎の切り株(?)を巻き込み、ノエルの規格外の挑戦が今始まる!    

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...