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森で出会った少女①
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背の高い樹木が聳え立つ森の中。うねる枝と生い茂る濃緑の葉の隙間から鈍色の空が覗いている。その下、朽ちた大木の側に出来た広場で、屈みこむ小さな身体があった。
ここは猟師であろうと容易には踏み込むことのない場所だ。国を囲い込むように在る広大な森、その最奥に位置し、磁場が狂い帰り道も見失う危険なところ。ゆえに、人がいること自体が異様。しかも年端もいかない子供などあり得ない。
しかし、その小さな生き物は確かにそこに存在した。
僅かに差し込む陽の光を追って、せっせと手を動かしている。袖から時折覗く細い手首は頼りなく、生成りのスカートは継ぎはぎだらけ。しかし、頭から上半身までをすっぽり覆う頭巾は、眩いばかりの赤色だった。
殺風景な森の中に突然現れた鮮やかな原色に、彼は足を止め暫し呆気にとられたが、直ぐに注意深く観察し始める。そして、さてどうしたものかと自問した。
彼は右手で寝ぐせの付いた灰茶の髪を掻き、左手でやぶ蚊に刺された胸元を掻く。腰にぶら下げた水筒から水を一口飲んで、ふうと息を吐いてみたが、名案はみつからなかった。
獣相手に裏をかくのは得意だが、人間相手となると皆目わからない。真、人間という動物は難解で厄介だ。
彼は依頼主である人物の顔と、出立前に念押しされた忠告を思い出す。そして、苦々しい表情で呟いた。
「慎重につったってどうすりゃいいんだよ。知るかよ」
実際、物事というのは単純なものだ。それをわざわざ複雑に絡ませてしまうから面倒なことになる。箱の中身を見る前に、あーだこーだと考えるのは時間の無駄だと彼は思う。
(箱の中が生魚だったら腐っちまう。とりあえず、蓋を開けねぇとどうしようもねぇだろうが)
彼は決意し大きく息を吸い込んだ。そして、三馬身ほど先にいる赤い塊に向かって声をかけた。
ここは猟師であろうと容易には踏み込むことのない場所だ。国を囲い込むように在る広大な森、その最奥に位置し、磁場が狂い帰り道も見失う危険なところ。ゆえに、人がいること自体が異様。しかも年端もいかない子供などあり得ない。
しかし、その小さな生き物は確かにそこに存在した。
僅かに差し込む陽の光を追って、せっせと手を動かしている。袖から時折覗く細い手首は頼りなく、生成りのスカートは継ぎはぎだらけ。しかし、頭から上半身までをすっぽり覆う頭巾は、眩いばかりの赤色だった。
殺風景な森の中に突然現れた鮮やかな原色に、彼は足を止め暫し呆気にとられたが、直ぐに注意深く観察し始める。そして、さてどうしたものかと自問した。
彼は右手で寝ぐせの付いた灰茶の髪を掻き、左手でやぶ蚊に刺された胸元を掻く。腰にぶら下げた水筒から水を一口飲んで、ふうと息を吐いてみたが、名案はみつからなかった。
獣相手に裏をかくのは得意だが、人間相手となると皆目わからない。真、人間という動物は難解で厄介だ。
彼は依頼主である人物の顔と、出立前に念押しされた忠告を思い出す。そして、苦々しい表情で呟いた。
「慎重につったってどうすりゃいいんだよ。知るかよ」
実際、物事というのは単純なものだ。それをわざわざ複雑に絡ませてしまうから面倒なことになる。箱の中身を見る前に、あーだこーだと考えるのは時間の無駄だと彼は思う。
(箱の中が生魚だったら腐っちまう。とりあえず、蓋を開けねぇとどうしようもねぇだろうが)
彼は決意し大きく息を吸い込んだ。そして、三馬身ほど先にいる赤い塊に向かって声をかけた。
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