赤ずきんと猟師

すなぎ もりこ

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森で出会った少女②

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 メイジーは顔を上げ、声がした方向へ顔を向けた。視線の先にあるものに目を凝らし、低姿勢のままゆっくりと後退る。
「おーい、怖がらなくっていいぞ、逃げないでくれ」
 彼女は警戒態勢を解かぬまま、声を発した男を観察した。
 着古した白いシャツに皮のベスト、茶色いズボンにブーツ。肩に掛けられているのは猟銃である。良く知る人物と格好は似通っているが、声も髪色も違う。大人だが、年若い。
 メイジーは喉元に手をやり頭巾を掻き寄せる。心臓がバクバクと鳴る振動が腕に伝わった。
「驚かせて悪かったな。ちょっと聞きたいことがあるだけなんだ」
 男は、朽ちた木片のような色の髪をガシガシと搔き混ぜると、その場にどっかりと腰を下ろす。
「なにもしねぇから、な、落ち着けよ」
 胡坐をかき猟銃をぽいと放り投げる男を見て、メイジーは首を傾げ、くんくんと匂いを嗅ぐ。確かに敵意は嗅ぎ取れなかった。
 メイジーは生き物の発する殺気や良からぬ感情を匂いで感じることができる。その能力でこれまで生き抜いてきたようなものなのだ。男がここまで接近していることにさえ気づかなかったのだから、敵ではないのかもしれない。
 メイジーは男が危険なものではないと判断を下し、警戒を解く。呼吸を整え、小さく頷いて見せた。
 男はホッとしたように表情を緩めると、口を開く。
「ところで、なんでお嬢ちゃんはこんなとこにいるんだ? もしかして迷子か?」
 メイジーはぶんぶんと首を振った。
「え? だとしたら住んでるの? まさかこんな不便なところに?」
 こくこくと首を縦に振れば、男は大げさに仰け反る。
「ホントかよ。エライなぁ、俺は無理だなぁ、猟は好きだけども三日も森の中にいたら飽きちまう。飯は偏るし寒いわ熱いわ寝づらいわ風呂は入れねぇしよ。まあ風呂はあんまり好きじゃねぇんだけど」
 男はどうでもいいことを粗野な口ぶりで話し出す。話し相手に飢えていたのかお喋りが止まらない。メイジーは観念し、地面に腰を下ろして男の声に耳を傾けた。外からくる人間の話には興味があったし、メイジーもまた人との接触を求めていたのである。
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