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本編 絶倫男爵に取り憑かれた王子と見鬼の私
モトドクモモトカノモトサヤ
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此原との契約が残すところあと十回をきった秋の日、ハンナは衝撃的な場面に遭遇した。
珍しく用事があるからと、此原からマンションへの訪問を断られたハンナは、ユカを誘って街へ出た。
そこで、目撃したのだ。
此原が女性と居るところを。
物陰に隠れてこっそり様子をうかがっていたユカとハンナは、お相手の女性のレベルの高さにおののいた。
「さ、さすが王子。何あの美人、ただ者じゃないね」
隣でユカがため息をつく。
「社内の女子社員に目が向かないわけだよ」
「そうだよね、高級チョコが食べれるのに、なぜ麦チョコを摘まむ必要があるのか」
ハンナの不可解な例えに首を傾げつつも、ユカは再び身を乗り出して様子を窺う。道行く人も振り返る、周囲の視線をかっさらう美男美女である。
「かなり親しそうだね。女の方が王子に夢中って感じだけど、王子もまんざらでもなさそう」
腕に掴まる女性に優しく笑いかける此原。
ハンナの胸が張り裂けそうに痛んだ。
ほら、だから嫌だったんだよ。
のめり込みたくなかったのに。
こんなに辛いじゃん。
ハンナは泣きそうになる気持ちを振り払い、ユカの腕を掴んだ。
「もう行こうよ、あまり見ると悪いじゃん」
様子がおかしいハンナの顔を、ユカが覗きこむ。
「ねえ、ハンナ、そんなにショックだったわけ?」
「まあ、憧れてたし」
「遠くから見てるだけで良かったんでしょ」
「推しに交際発覚のニュースがあれば、そりゃガックリするでしょ、喪失感が半端ないよ」
「じゃあさ……」
ユカはハンナに腕を絡めた。
「この間飲んだ谷君さ、ハンナの事けっこう気に入ってるみたいなの。二人で会ってみない?」
あー私服がくそダサいとかいう……
「うーん、そうだなぁ、来月でも良い?」
「別に良いけど何で来月?」
例えこの時点で性交の相手としてお役御免になったとしても、絶倫男爵の行方は確認しておきたい。
残りの数回をあの恋人と致すとしても、遅くとも今月中には達成出来るだろう。
「別に理由はないけど」
ユカはハンナをじっと見てから、頭をポンポンと叩いた。
「ハンナさ、本気で王子のこと好きだったんじゃない?気持ちを伝えてみれば?」
「嫌だよ。笑いもんじゃん」
もう既に道化じみてる。
「私は麦チョコも好きだけどなぁ」
ユカが傍らで呟いた。
翌日、社内は此原の噂で持ちきりだった。
どうやら昨夜の二人を目撃していたのは、ハンナ達だけでは無かったらしい。
まあ、あれだけ人目を引いていたから当然だろう。
此原が、廊下で女子社員に問いつめられているところや、羨ましげに男性社員に囃し立てられる様子を何度も目にした。
「元カノと元サヤだって。元カノ元読モだって」
ほぇ、モトカノモトサヤモトカノモトドクモ……早口言葉か。
背中でぼやき合う先輩らの声をききつつ、ハンナはスマホを確かめる。
しかし、此原からの連絡は無い。
通常なら今夜も此原のマンションへ寄るところだが、恋人が居るとわかった今は、憚られる。
そうだ、私物を引き上げなければ。
歯ブラシやパジャマ……下着まで置いてある!
あれを見られたらまずい。
ハンナは此原にメッセージを送る。
“私物を急ぎ取りにおうかがいしたいのですが”
即既読が付き、返信がきた。
“今日は残業で遅くなるので合鍵を使って”
おお……やはり、もう顔を会わせないつもりなんだな。
なんだよ、あからさまだな。
ちょっとムカつくな。
“承知しました”
ハンナは返信すると、デスクの引き出しを探りビッグサイズのエコバッグを取り出して鞄に入れた。
以前貰ったノベルティの試作品だ。
このサイズなら全部収まるだろう。
ハンナは合鍵を使って此原の部屋に入ると、急いでエコバッグに私物を放り込んだ。
そうやって部屋を彷徨いていると、ついついここ数ヵ月の楽しい日々が頭に浮かんでしまう。
ハンナは胸を押さえる。
予想はしていたけれど、辛いものは辛い。
気持ちのやり場が見付けられない。
憧れの人と疑似恋愛を出来たのだから、絶倫男爵には感謝すべきなのかもしれないけれど……
……いや、あやつがいなければ憧れのまんま傷付くことなく気持ちを終わらせられた筈だ。
やっぱり許せん、エロヒゲ男爵め。
ハンナはカフスが仕舞ってあるクローゼットを睨んだ。
思い付く限り自分の痕跡を消したハンナは、玄関に向かう。
扉を閉めた後、ふと手元を見て焦った。
合鍵をどうしよう……
悩みながらマンションを出ると、見覚えのある八頭身美女が、スマホ片手に通話していた。
ハンナは息を呑み、激しく鳴る鼓動を懸命に落ち着ける。
美女は長い足を組んでマンションの壁に凭れ、見るからに高級そうなネイルの指でスマホを持っていた。
小さな顔に見事に配置された華やかで甘いパーツ。
ミニ丈のワンピースを厭らしくなく着こなしているのは、流石元ドクモと言うべきか。
「マンションの前に居るんだけど、まだ遅くなるの」
少し責めるような口調の透き通った声が聞こえた。
もしかして電話の相手は此原だろうか。
「え?そんなに?早く終わらせられないの」
此原は残業中の筈だ。
ちょっと我が儘な彼女らしい。
まあ、美人だから許されるよね。
ハンナは早足でその場を立ち去る。
「克巳ってばひどぉい」
美人の甘えた声が追いかけてくる。
ハンナは重い荷物を揺らしながら一目散に逃げた。
何とか自宅アパートにたどり着き、荷物をどさりと床に置くと、ハンナはベッドに走り寄る。そして、うつ伏せに倒れた。
百回まであと七回。
本当は最後まで相手を務めるつもりだった。
まさかこんな直前に突然終わるとは。
だけど……九十三回。
この数ヵ月で驚異の回数だ。
それだけあの此原と身体を重ねたのだ。
……夢のような日々だった。
当惑しながらも幸せだった。
過去となった途端、現実味が薄れていく。
だから、ほら、涙も出ない。
そう、此原はハンナを好きだった訳じゃない。
協力者のハンナに敬意を払い、罪悪感を誤魔化すために恋人のように振る舞っていただけだ。
ハンナは目を閉じた。
良くやったさ、私。
A級モンスターに取り憑かれた哀れな男を救ったのだから。
本来の見鬼の仕事としては明らかにやり過ぎ。
出血大サービスだぞ。
ハンナは仰向けになって胸の下で手を握り、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。
祖父に教えて貰った身体の気を整える方法である。
スマホの着信音が聞こえたような気がしたが、ハンナはそのまま深い瞑想に沈んでいった。
ハンナはふと目を覚ました。
部屋は真っ暗で、外もしんと静まり返っている。
寝ちった…
身体を起こして手探りで鞄の中のスマホを探す。
時刻は二時を示していた。
あれ?
ハンナは凍りつく。
着信十三件。
メッセージ三十六件。
全部此原からだ。
怖っ……どうしよう……こんな真夜中に電話をするわけにはいかないし、メッセージを見たら既読が付いちゃうしなぁ。
ある意味妖怪より怖い。
ハンナは暫し考えた後、無視をすることに決めた。
気付かずに寝ちゃいました、ってことに……
「昨夜は帰宅後すぐに寝落ちしちゃって、着信に気付きませんでした。すみません!」
翌朝掛かってきた此原からの電話に、ハンナは開口一番謝罪した。額にじんわりと汗が滲む。
少しの沈黙の後、聞いたことのないような低い声がスマホから流れてきた。
『どういうこと?なんで広瀬さんのものが全部無くなってるの』
ハンナはスマホを握りしめ、正座をして答える。
「いつまでも置いておくのは良くないと思いまして」
『は?それに、何で昨夜は帰ったの、待っててくれなかったの』
「荷物を持ち帰りたかったので」
『だったら何で連絡をしないの』
ハンナは唾を呑んだ後、思い切って言った。
「マンションの前で此原さんの彼女さんが待っていました」
電話の向こうで此原が黙る。
ハンナは一気に言葉を繋いだ。
「元カノとお付き合いを再開されたと聞きました。残りはあの方とされたら良いと思います。百回達成したらご連絡下さい。男爵がカフスに戻ったことを確認します。それでもって従兄弟の方にお返しになるときは遠くから確認させていただきますのでお知らせください、では」
『ちょっ、広瀬さ』
ハンナは通話を切り、急いで電源も切った。
荒い呼吸を落ち着ける。
何とか伝えることが出来た。
あとは合鍵を返すだけだ。
テレビの画面右上に表記されている時刻を見る。
シャワーを浴びる時間はありそうだ。
取り敢えず緊張のあまり汗をかいた身体をスッキリさせたい。
本当は会社にも行きたくないがしょうがない。
ハンナは立ち上がった。
珍しく用事があるからと、此原からマンションへの訪問を断られたハンナは、ユカを誘って街へ出た。
そこで、目撃したのだ。
此原が女性と居るところを。
物陰に隠れてこっそり様子をうかがっていたユカとハンナは、お相手の女性のレベルの高さにおののいた。
「さ、さすが王子。何あの美人、ただ者じゃないね」
隣でユカがため息をつく。
「社内の女子社員に目が向かないわけだよ」
「そうだよね、高級チョコが食べれるのに、なぜ麦チョコを摘まむ必要があるのか」
ハンナの不可解な例えに首を傾げつつも、ユカは再び身を乗り出して様子を窺う。道行く人も振り返る、周囲の視線をかっさらう美男美女である。
「かなり親しそうだね。女の方が王子に夢中って感じだけど、王子もまんざらでもなさそう」
腕に掴まる女性に優しく笑いかける此原。
ハンナの胸が張り裂けそうに痛んだ。
ほら、だから嫌だったんだよ。
のめり込みたくなかったのに。
こんなに辛いじゃん。
ハンナは泣きそうになる気持ちを振り払い、ユカの腕を掴んだ。
「もう行こうよ、あまり見ると悪いじゃん」
様子がおかしいハンナの顔を、ユカが覗きこむ。
「ねえ、ハンナ、そんなにショックだったわけ?」
「まあ、憧れてたし」
「遠くから見てるだけで良かったんでしょ」
「推しに交際発覚のニュースがあれば、そりゃガックリするでしょ、喪失感が半端ないよ」
「じゃあさ……」
ユカはハンナに腕を絡めた。
「この間飲んだ谷君さ、ハンナの事けっこう気に入ってるみたいなの。二人で会ってみない?」
あー私服がくそダサいとかいう……
「うーん、そうだなぁ、来月でも良い?」
「別に良いけど何で来月?」
例えこの時点で性交の相手としてお役御免になったとしても、絶倫男爵の行方は確認しておきたい。
残りの数回をあの恋人と致すとしても、遅くとも今月中には達成出来るだろう。
「別に理由はないけど」
ユカはハンナをじっと見てから、頭をポンポンと叩いた。
「ハンナさ、本気で王子のこと好きだったんじゃない?気持ちを伝えてみれば?」
「嫌だよ。笑いもんじゃん」
もう既に道化じみてる。
「私は麦チョコも好きだけどなぁ」
ユカが傍らで呟いた。
翌日、社内は此原の噂で持ちきりだった。
どうやら昨夜の二人を目撃していたのは、ハンナ達だけでは無かったらしい。
まあ、あれだけ人目を引いていたから当然だろう。
此原が、廊下で女子社員に問いつめられているところや、羨ましげに男性社員に囃し立てられる様子を何度も目にした。
「元カノと元サヤだって。元カノ元読モだって」
ほぇ、モトカノモトサヤモトカノモトドクモ……早口言葉か。
背中でぼやき合う先輩らの声をききつつ、ハンナはスマホを確かめる。
しかし、此原からの連絡は無い。
通常なら今夜も此原のマンションへ寄るところだが、恋人が居るとわかった今は、憚られる。
そうだ、私物を引き上げなければ。
歯ブラシやパジャマ……下着まで置いてある!
あれを見られたらまずい。
ハンナは此原にメッセージを送る。
“私物を急ぎ取りにおうかがいしたいのですが”
即既読が付き、返信がきた。
“今日は残業で遅くなるので合鍵を使って”
おお……やはり、もう顔を会わせないつもりなんだな。
なんだよ、あからさまだな。
ちょっとムカつくな。
“承知しました”
ハンナは返信すると、デスクの引き出しを探りビッグサイズのエコバッグを取り出して鞄に入れた。
以前貰ったノベルティの試作品だ。
このサイズなら全部収まるだろう。
ハンナは合鍵を使って此原の部屋に入ると、急いでエコバッグに私物を放り込んだ。
そうやって部屋を彷徨いていると、ついついここ数ヵ月の楽しい日々が頭に浮かんでしまう。
ハンナは胸を押さえる。
予想はしていたけれど、辛いものは辛い。
気持ちのやり場が見付けられない。
憧れの人と疑似恋愛を出来たのだから、絶倫男爵には感謝すべきなのかもしれないけれど……
……いや、あやつがいなければ憧れのまんま傷付くことなく気持ちを終わらせられた筈だ。
やっぱり許せん、エロヒゲ男爵め。
ハンナはカフスが仕舞ってあるクローゼットを睨んだ。
思い付く限り自分の痕跡を消したハンナは、玄関に向かう。
扉を閉めた後、ふと手元を見て焦った。
合鍵をどうしよう……
悩みながらマンションを出ると、見覚えのある八頭身美女が、スマホ片手に通話していた。
ハンナは息を呑み、激しく鳴る鼓動を懸命に落ち着ける。
美女は長い足を組んでマンションの壁に凭れ、見るからに高級そうなネイルの指でスマホを持っていた。
小さな顔に見事に配置された華やかで甘いパーツ。
ミニ丈のワンピースを厭らしくなく着こなしているのは、流石元ドクモと言うべきか。
「マンションの前に居るんだけど、まだ遅くなるの」
少し責めるような口調の透き通った声が聞こえた。
もしかして電話の相手は此原だろうか。
「え?そんなに?早く終わらせられないの」
此原は残業中の筈だ。
ちょっと我が儘な彼女らしい。
まあ、美人だから許されるよね。
ハンナは早足でその場を立ち去る。
「克巳ってばひどぉい」
美人の甘えた声が追いかけてくる。
ハンナは重い荷物を揺らしながら一目散に逃げた。
何とか自宅アパートにたどり着き、荷物をどさりと床に置くと、ハンナはベッドに走り寄る。そして、うつ伏せに倒れた。
百回まであと七回。
本当は最後まで相手を務めるつもりだった。
まさかこんな直前に突然終わるとは。
だけど……九十三回。
この数ヵ月で驚異の回数だ。
それだけあの此原と身体を重ねたのだ。
……夢のような日々だった。
当惑しながらも幸せだった。
過去となった途端、現実味が薄れていく。
だから、ほら、涙も出ない。
そう、此原はハンナを好きだった訳じゃない。
協力者のハンナに敬意を払い、罪悪感を誤魔化すために恋人のように振る舞っていただけだ。
ハンナは目を閉じた。
良くやったさ、私。
A級モンスターに取り憑かれた哀れな男を救ったのだから。
本来の見鬼の仕事としては明らかにやり過ぎ。
出血大サービスだぞ。
ハンナは仰向けになって胸の下で手を握り、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。
祖父に教えて貰った身体の気を整える方法である。
スマホの着信音が聞こえたような気がしたが、ハンナはそのまま深い瞑想に沈んでいった。
ハンナはふと目を覚ました。
部屋は真っ暗で、外もしんと静まり返っている。
寝ちった…
身体を起こして手探りで鞄の中のスマホを探す。
時刻は二時を示していた。
あれ?
ハンナは凍りつく。
着信十三件。
メッセージ三十六件。
全部此原からだ。
怖っ……どうしよう……こんな真夜中に電話をするわけにはいかないし、メッセージを見たら既読が付いちゃうしなぁ。
ある意味妖怪より怖い。
ハンナは暫し考えた後、無視をすることに決めた。
気付かずに寝ちゃいました、ってことに……
「昨夜は帰宅後すぐに寝落ちしちゃって、着信に気付きませんでした。すみません!」
翌朝掛かってきた此原からの電話に、ハンナは開口一番謝罪した。額にじんわりと汗が滲む。
少しの沈黙の後、聞いたことのないような低い声がスマホから流れてきた。
『どういうこと?なんで広瀬さんのものが全部無くなってるの』
ハンナはスマホを握りしめ、正座をして答える。
「いつまでも置いておくのは良くないと思いまして」
『は?それに、何で昨夜は帰ったの、待っててくれなかったの』
「荷物を持ち帰りたかったので」
『だったら何で連絡をしないの』
ハンナは唾を呑んだ後、思い切って言った。
「マンションの前で此原さんの彼女さんが待っていました」
電話の向こうで此原が黙る。
ハンナは一気に言葉を繋いだ。
「元カノとお付き合いを再開されたと聞きました。残りはあの方とされたら良いと思います。百回達成したらご連絡下さい。男爵がカフスに戻ったことを確認します。それでもって従兄弟の方にお返しになるときは遠くから確認させていただきますのでお知らせください、では」
『ちょっ、広瀬さ』
ハンナは通話を切り、急いで電源も切った。
荒い呼吸を落ち着ける。
何とか伝えることが出来た。
あとは合鍵を返すだけだ。
テレビの画面右上に表記されている時刻を見る。
シャワーを浴びる時間はありそうだ。
取り敢えず緊張のあまり汗をかいた身体をスッキリさせたい。
本当は会社にも行きたくないがしょうがない。
ハンナは立ち上がった。
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