おむすび娘と縁切り侍

すなぎ もりこ

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蘇る熱

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「お前の想像通りだよ。縁切りの儀式をすると一時的に発情する。どうしようもなく性欲が高まるんだ」

はつじょう……せいよく……

「切った情を補う為とか言われてるけど理由は良くわからねぇ。…浅緋は元々節操が無い奴で、そういう相手が複数いるんだよ。毎回誰かしら離れに呼びつけて致してるわけ」

それは、彼女…というよりセフレ的な。

「で、お前はやってくれんの?俺の役に立つっていうことはそういうことだぞ」

モカは言葉が出てこない。
けれど、蒼士から目を離せない。

「何とか言えよ。食っちまうぞ」

そう言った直後、蒼士の唇がモカのものに重なった。
モカは目を見開き硬直するが、ふと、最初にあった夜のことを思い出した。
あのキス、蕩けるような淫靡な記憶が呼び覚まされていく。
モカは蒼士に身体を向けて力を抜き、目を閉じた。
そして、その肩に手を掛ける。
蒼士はビクリと身体を震わせて一旦唇を離し、モカに問いかけた。

「おい、良いのかよ」
「何がよ、そっちから始めたくせに」
「いや、そうだけど」
「別に初めてでもないでしょ、二回目じゃない」
「いや、そうだけど」
「…もう終わり?」

見上げて訊ねると、蒼士はゴクリと喉を鳴らした。

「後悔すんなよ」
「後悔しようがどうしようが、私の勝手でしょ」
「あー、もう黙れ」

再び唇が合わされた。
蒼士はモカの腰を掴み正面に引き寄せた。
布団越しに蒼士の硬い太股の感触を感じる。
お互いに細めた瞳を絡ませながら、舌を出して擦り合う。
唇を密着させて、お互いの口内を舐め合った。
いつしか蒼士の両手はモカの後頭部に回され、逃がさぬように固定される。
のし掛かるように迫る蒼士の顔を、熱により霞む視界に捉えながら、モカは貪られるままになっていた。
荒い息と、途切れ途切れに甘い声を上げる自分の声が混ざり合い、耳を犯す。

「ん、あ、蒼士っ、はあっ、」
「やらしいな、お前…そんなに良いの?」
「そ、そっちだってっ、あ、」
「はっ、さすがにこれ以上はやべえな、止まらなくなっちまう」

蒼士は唇を離した。
モカはぼんやりと蒼士を見上げた。

「そんな顔すんなよ、馬鹿」
「バカ、とは、何よ」

蒼士は顔を寄せると、モカの耳に口をつけ、囁いた。

「儀式のあと離れに来いよ、続きをやろうぜ」


薬が効いたのか蒼士は滞りなく儀式を終えた。
モカは巫女服から普段着に着替えて誰にも見付からないようにそっと離れへ向かう。
モカは初めて近くで見る離れを観察する。
平屋建てで小さな窓がひとつあるだけのシンプルな造りだ。
その窓には竹で細かく編まれた格子が嵌まっていて中は窺えない。
モカは飛石の上を慎重に歩き、三和土のポーチにたどり着いて引戸の前に立つ。

蒼士が中で待っている筈だ。
モカは自分に問う。
蒼士に今から抱かれる訳だが、果たしてそれで良いのか。
いや、不埒な行為とは言え、これは一種の治療だ。
そう、祈祷のようなものだ。
蒼士の反動を治めるための。

モカはきゅっと唇を引き締めた。

違う、それは言い訳だ。
モカは蒼士に抱かれたい、それだけなのだ。
あの身も心も溶け合うようなキスの先を知りたい。
身体の奥に灯された熱を解放して、二人で熱く燃え尽きたい。

モカは決意して引戸に手を掛けた。
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