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過保護
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その日の迎えは浅緋だった。
車に乗り込んだモカはシートベルトを装着しながら訊ねる。
「蒼士はどうしたの?」
「んー、アイツはね、ちょっと体調崩してて。本人は大丈夫だって言うんだけど、一応儀式は午後に回すことにした」
モカは眉を寄せた。
木曜に会った時は元気そうだったのに何があったんだろう。
「最悪、禰宜さんに祝詞を頼んで、俺が午後も交代してやる事になるかもな」
「浅緋さん、平気なの?……その、反動とか」
浅緋は前をみながら苦笑いする。
「まあ、俺は何とでもするから。モカちゃんは心配しなくても大丈夫だよ」
また彼女さんを呼ぶんだろうか。
蒼士がそうしないってことは、そういう相手がいないってことなのかな。
何だか安心している自分に気付き、モカは少し焦る。
いやいや、そんなことより、体調を崩しているのに儀式を行うのは危険だ。
それに、反動を鎮める為に蒼士は水を被ると言っていた。
そんな自殺行為は何としても止めさせないと。
「儀式はやる」
蒼士はマスクをして咳き込みながら憮然と言い切った。
「そんな状態じゃ無理だろ」
浅緋の言葉に皆頷いた。
「ただの花粉症だし。薬を飲んだから症状は治まる筈だ」
浅緋は腕を組んでため息をついた。
「取りあえず午前中は休めよ。午後から様子を見て決めよう」
「蒼ちゃん、お布団敷いてあげるから大人しく寝てなさい」
奥様が蒼士の袖を引っ張る。
蒼士は渋々それに従い奥様と共に歩き出したが、振り返ってモカを指差しつつ浅緋と禰宜さんに声をかけた。
「コイツのこと頼みます」
禰宜さんと浅緋は頷き、蒼士が背中を向けた途端に笑みを浮かべた。
「何だあれ?すっかりモカちゃんの保護者気取りじゃん。勧誘したのは俺だっつーの」
「心配で堪らないんだねぇ」
「そんな頼りないんでしょうか」
モカの質問に、浅緋と禰宜さんは顔を見合わせた。
「そんな事はないよ、あれは、そうだなぁ、庇護欲?いや、独占欲か」
「そうそう、後で様子を見に行ってあげると良いよ。モカちゃんが側にいれば良くなるんじゃないかな」
モカは釈然としないまま頷いた。
儀式が終了し、モカは蒼士が休む部屋を訪れた。
蒼士は薄手の掛け布団を胸まで掛けて静かに寝ている。
暫しそのあどけない寝顔を眺め、改めてその整った顔に見惚れた。
キリッとした眉、切れ長の二重の瞳は閉じられ長い睫毛で覆われている。
高い鼻と少し開いた唇から規則正しい呼吸が漏れている。
珍しく無防備な姿を前にして、その鼻を摘まみたい欲求がムクムクと沸き起こってきたが、気持ち良く寝ているところを起こす訳にはいかない。
モカは持ち込んだ神楽鈴を握った。
一応、役に立つかと持ってきたが、これを振っても起こしてしまうだけだ。
午後の儀式までまだ時間はあるし、また来よう。
モカはそっと立ち去ろうと腰を浮かした。
しかし、グイと腕を掴まれて尻餅をつく。
「終わったのか」
「起きてたの?!」
「今起きたんだよ」
モカは裾を直して座り直した。
「具合はどう?」
「ああ、だいぶ良いよ。昨日深夜まで残業したせいで寝不足だったんだ。昼飯食ってまた薬を飲めばやれるだろ」
「無理しない方が良いんじゃない?…また、水を被るなら、止めた方が良い」
蒼士は身体を起こして前髪をかきあげた。
「心配すんなって」
「自惚れないで下さい~、悪化して蒼士が休むことになったら浅緋さんや禰宜さん達に迷惑がかかるからです~」
「ムカつく。…大丈夫だって、他にも方法あるし」
モカは膝を立てて気だるげに俯く蒼士を凝視した。
他の方法って、それは、つまり、浅緋方式か?!
当てがあるってことか?!
「私が鈴払いをする!振りまくる!」
蒼士は顔を上げてぼんやりとモカを見た。
「は?何言ってんのお前。振り回せば良いってもんじゃねぇぞ」
「知ってるよ!でも、少しっくらい役に立つかもしれないじゃん!」
蒼士は、じっとモカを見ている。
モカは少しどぎまぎしながら蒼士を見返した。
「俺の役に立ちたいの」
「うん!」
勢い込んで答えたモカに、蒼士が吹き出して俯いた。
「お前ってホント、厄介な女だな」
「ど、どういう意味?!」
「まあ、色々拗らせてんだろうけど。つっても、それは俺もだけどさ」
「ねぇ、だからワケわかんない事言うの止めてよ」
蒼士はモカの腕を掴んで引き寄せた。
至近距離に蒼士の顔が迫り、モカは固まった。
車に乗り込んだモカはシートベルトを装着しながら訊ねる。
「蒼士はどうしたの?」
「んー、アイツはね、ちょっと体調崩してて。本人は大丈夫だって言うんだけど、一応儀式は午後に回すことにした」
モカは眉を寄せた。
木曜に会った時は元気そうだったのに何があったんだろう。
「最悪、禰宜さんに祝詞を頼んで、俺が午後も交代してやる事になるかもな」
「浅緋さん、平気なの?……その、反動とか」
浅緋は前をみながら苦笑いする。
「まあ、俺は何とでもするから。モカちゃんは心配しなくても大丈夫だよ」
また彼女さんを呼ぶんだろうか。
蒼士がそうしないってことは、そういう相手がいないってことなのかな。
何だか安心している自分に気付き、モカは少し焦る。
いやいや、そんなことより、体調を崩しているのに儀式を行うのは危険だ。
それに、反動を鎮める為に蒼士は水を被ると言っていた。
そんな自殺行為は何としても止めさせないと。
「儀式はやる」
蒼士はマスクをして咳き込みながら憮然と言い切った。
「そんな状態じゃ無理だろ」
浅緋の言葉に皆頷いた。
「ただの花粉症だし。薬を飲んだから症状は治まる筈だ」
浅緋は腕を組んでため息をついた。
「取りあえず午前中は休めよ。午後から様子を見て決めよう」
「蒼ちゃん、お布団敷いてあげるから大人しく寝てなさい」
奥様が蒼士の袖を引っ張る。
蒼士は渋々それに従い奥様と共に歩き出したが、振り返ってモカを指差しつつ浅緋と禰宜さんに声をかけた。
「コイツのこと頼みます」
禰宜さんと浅緋は頷き、蒼士が背中を向けた途端に笑みを浮かべた。
「何だあれ?すっかりモカちゃんの保護者気取りじゃん。勧誘したのは俺だっつーの」
「心配で堪らないんだねぇ」
「そんな頼りないんでしょうか」
モカの質問に、浅緋と禰宜さんは顔を見合わせた。
「そんな事はないよ、あれは、そうだなぁ、庇護欲?いや、独占欲か」
「そうそう、後で様子を見に行ってあげると良いよ。モカちゃんが側にいれば良くなるんじゃないかな」
モカは釈然としないまま頷いた。
儀式が終了し、モカは蒼士が休む部屋を訪れた。
蒼士は薄手の掛け布団を胸まで掛けて静かに寝ている。
暫しそのあどけない寝顔を眺め、改めてその整った顔に見惚れた。
キリッとした眉、切れ長の二重の瞳は閉じられ長い睫毛で覆われている。
高い鼻と少し開いた唇から規則正しい呼吸が漏れている。
珍しく無防備な姿を前にして、その鼻を摘まみたい欲求がムクムクと沸き起こってきたが、気持ち良く寝ているところを起こす訳にはいかない。
モカは持ち込んだ神楽鈴を握った。
一応、役に立つかと持ってきたが、これを振っても起こしてしまうだけだ。
午後の儀式までまだ時間はあるし、また来よう。
モカはそっと立ち去ろうと腰を浮かした。
しかし、グイと腕を掴まれて尻餅をつく。
「終わったのか」
「起きてたの?!」
「今起きたんだよ」
モカは裾を直して座り直した。
「具合はどう?」
「ああ、だいぶ良いよ。昨日深夜まで残業したせいで寝不足だったんだ。昼飯食ってまた薬を飲めばやれるだろ」
「無理しない方が良いんじゃない?…また、水を被るなら、止めた方が良い」
蒼士は身体を起こして前髪をかきあげた。
「心配すんなって」
「自惚れないで下さい~、悪化して蒼士が休むことになったら浅緋さんや禰宜さん達に迷惑がかかるからです~」
「ムカつく。…大丈夫だって、他にも方法あるし」
モカは膝を立てて気だるげに俯く蒼士を凝視した。
他の方法って、それは、つまり、浅緋方式か?!
当てがあるってことか?!
「私が鈴払いをする!振りまくる!」
蒼士は顔を上げてぼんやりとモカを見た。
「は?何言ってんのお前。振り回せば良いってもんじゃねぇぞ」
「知ってるよ!でも、少しっくらい役に立つかもしれないじゃん!」
蒼士は、じっとモカを見ている。
モカは少しどぎまぎしながら蒼士を見返した。
「俺の役に立ちたいの」
「うん!」
勢い込んで答えたモカに、蒼士が吹き出して俯いた。
「お前ってホント、厄介な女だな」
「ど、どういう意味?!」
「まあ、色々拗らせてんだろうけど。つっても、それは俺もだけどさ」
「ねぇ、だからワケわかんない事言うの止めてよ」
蒼士はモカの腕を掴んで引き寄せた。
至近距離に蒼士の顔が迫り、モカは固まった。
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