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ポッコチーヌ様のお世話係

過去と罪①

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 マクシミリアンの一日は、ポッコチーヌの鑑賞から始まる。たっぷり交流を深めたのちに不浄にて猛りを宥め、食事をとる。それから鍛錬場へ向かい騎士らの訓練を見学し、その流れで朝礼に出席。デスクで幾つかの書類をこなし、午後の訓練を眺めた後に部屋へ戻る。
 言葉を発することは僅かで、訓練に立ち会いながらも始終ぼんやりと何処かを眺めているが、一応、最低限の職務はこなしている。
 騎士団長としては実に頼りないと言わざるを得ないが、幸いにここ十数年は周辺国との関係は良好、国内の情勢も落ち着いている。つまり、騎士の出動が少ない。故に実質的な支障は殆どなく、白騎士たちも特に不満を感じていないようである。むしろ、規律に厳しく高圧的な団長がいる他団より余程過ごしやすいと喜んでいるらしい。
 彼らにとってのマクシミリアンは、そう、ペットのようなものだ。変わり者だが見目麗しい白騎士団長を全員で守り、愛でているのだ。
 
 そして、そんな愛すべき白騎士団長に、最近新たな日課が加わった。
 正確に言えば、彼の陰茎にて親友であるポッコチーヌ様に、である。

『今日はどんなお話をする?』

 ポッコチーヌは首を傾げる。

「ポッコチーヌ様は何がよろしいですか?また、好きな御本のお話でもしましょうか」

 ゲルダはベッドサイドテーブルに水差しとコップを置くと床に膝を立てて座った。

『好きな本はいっぱいあるけれど、ゲルダは退屈じゃないの?』
「ポッコチーヌ様のお話はとても楽しいですよ?私はこれまであまり読書とは縁が無かったのですが、興味が湧いてきました。今度の休日には、王立図書館を訪ねようかと思っています」
『そうなの?おすすめを教えようか?』
「是非」

 ポッコチーヌはプルプルと震えた。これは、喜んでいる仕草である。どうやら今夜も陰茎様のご機嫌はすこぶるよろしいようだ。
 そう、あの日から、ポッコチーヌは毎日声を発するようになっていた。朝晩の挨拶が日常となり、就寝前には必ずと言って良いほどゲルダとの会話をせがむ。
 当初、話題の殆どはマクシミリアンの過去に関するものだったが、最近では好きな本や食べ物の話まで発展するようになっていた。嬉々として自らの事を話す陰茎を見て、ゲルダはほほ笑む。ポッコチーヌ=マクシミリアンであるから、これは、かなり良い兆候だと思う。
 しかし、この日ポッコチーヌが所望したのは予想外のものだった。

『たまには、ゲルダの話をききたいな』
「わ、私の、ですか?」

 ゲルダは戸惑う。自分にはそもそも学がない。騎士学校は何とか卒業できたが、文芸や芸術など知らないし、食にもこだわりがない。とてもポッコチーヌを満足させられるとは思えなかった。
 そんなゲルダにポッコチーヌは無邪気に提案する。

『ゲルダが子供の頃のお話はどう?』

 ゲルダはポッコチーヌを唖然と見た後、目を伏せた。
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