星の誓い〜異国の姫はアイスブルーの騎士に溺愛される〜

すなぎ もりこ

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6.迷惑なエスコート-1

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カリーナは、このまま部屋に引きこもろうと思っていたが、部屋のテーブルの上に兄からのメッセージが記されたカードを見つけてしまった。
 
「紹介したい人物があるので、必ず園遊会に戻るように」
 
……婚活かー。
カリーナはうんざりしながら汚れたベールを椅子に掛けて、ドレスを緩めながらクローゼットに向かった。
カリーナは自ら手早く着替えた。
侍女は連れて来ていない。
あの里での生活で大概の事は1人でできるようになっていたし、使用人も最小限の小国の王宮において身重の王妃の側を手薄にすることも憚られたのだ。
厚みのあるレースのペチコートに淡い黄色のドレスを合わせて裾を整える。
下ろしていた髪を緩く纏めると、ベールを被りドレスと同系色の花飾りのピンで止めた。
少しメイクを直して、鏡の前でくるくる回ってチェックする。
気は進まないが、腐っても王女である。国の代表として恥ずかしい格好は出来ない。 
深呼吸して、気合いを入れて扉を開けた。 

扉を開けた瞬間、壁に寄りかかっていたアルフレッドの姿が目に入った。
アルフレッドはカリーナを見ると、背筋を伸ばしてまたもや手を差し出してきた。
 
「もしかして、ずっと待っていたの?」 

カリーナは呆れながらもその手を取った。 

「当然です。僕は姫のエスコートを仰せつかったのですから」
「貴方のように見目麗しい騎士様と居たら私なんて引き立て役じゃないの」

アルフレッドはキョトンとした顔をしてカリーナを見た。
「まさか、貴女の美しさには誰も敵いません。貴女ほどの方を、園遊会などという野獣の巣窟に1人で行かせるなんて出来る訳がない。私が命を掛けてお守りします」

冗談を言っているようでもないから、アルフレッドは美の基準がどうにかなっているんだろう。
毎日整った自分の顔を鏡で見るうちに少しずつずれていったのかも。 
カリーナの見た目は特に目立ちもしないせいぜい十人並みだ。
身内からは「親しみやすい」とは言われるが、誉め言葉かどうかは微妙である。
まあ、公の場ではベールを着けているので素顔は滅多に晒すことはないのだが。
アルフレッドは高官で、しかもまだ独身だという。
利用価値がなく、特に美しくもない小国の王女より、よっぽど人が群がりそうだ。
特にご婦人が。

「わかったわ。兄がどなたかお知り合いを紹介して下さるようなので、兄のところまでエスコートしていただける?」

アルフレッドは頷いた。 

「ジスペイン国王といえばたいへんな愛妻家であるときいています。今回の式典にもてっきり奥様を同伴されると思っていました」

愛妻家で有名なのか…。
確かに間違いではないけども、身内としてはもっとこう政策とか外交とかで有名になって欲しいわよね。

「王妃が今臨月なの。初産なので無理はさせられないということで、急遽私が同伴したのよ。兄も心配でたまらないようなので、明日の式典が終わったら翌日朝にはお暇するつもりなの」
 
アルフレッドはピタリと歩みを止めてしまった。

「明後日には国にお帰りになる…と?」 
「そうよ」

他の招待国の来賓は、明後日の夜に行われる舞踏会に出席した後、城下町の祭を見学するなどして5~7日間滞在するようだが、兄もカリーナも早々に帰国するという点では当初から意見が一致していた。
カリーナとて初恋を吹っ切るために来たのであって、失恋した相手の身近にいつまでも居たくはなかった。
 
「アルフレッド様、どうしたの?」 

動こうとしないアルフレッドを見上げると、右手で口を覆って何事か真剣に思案しているようだ。
再度、声を掛けてやっと我に返ったアルフレッドは、愛想笑いをしてから歩みを再開した。 
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