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6.迷惑なエスコート-2

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再度訪れた園遊会場は、相変わらず人で賑わっていた。
少し日が傾いて日差しが和らいでいたが、少し前からアルコールの解禁時間になったらしく、熱気のようなものが漂っていた。
カリーナは更にげんなりしながら、兄の姿を探した。
それだから、少しばかり気付くのが遅れたのだ、周囲の視線と声に。

令嬢の黄色い声と、夢見るような視線と同時に探るような視線。
ひそひそ声。
注目しているのは、令嬢だけではなかった。
騎士はこぞって凝視しているし、中には3度見した貴族の男もいた。 
カリーナは確信していた。
原因は隣の男だ。
先ほどおそらく、とは思ったけども、これ程注目される人物だとは思ってなかった。
カリーナ達の動きにあわせて、さざ波のように人が声が移動するのだ。
カリーナはいたたまれず、今すぐ腕を離して全速力で去りたい衝動に駆られていた。
隣の男はそれを意に介しもせず、多分カリーナをずっと見つめている。
こめかみの辺りがさっきからジリジリする。
その異様な空気の中で、勇敢にも話し掛ける声があった。
 
「アルフレッド、カリーナ姫、噂の的は君たちだったのか」

 ガルシア国王である。カリーナはもう、内心瀕死状態だ。
 
「アルフレッド、君が社交場に顔を出すなんて何年ぶりだろうね? 一時期、アルフレッド副団長は、本当は実在しない説が広まっていたのを知ってるかい?」
 
アルフレッドは、抑揚のない声で答えた。

「人が集まるところは嫌いです」 
「まぁ、周りが放っとかないからね、君の場合は…国王の私より人気があるのは気に入らないけどね」
 
ガルシア国王は、傍らのカリーナに困ったように笑いかけた。
「カリーナ姫も災難でしたね。この男のエスコートは却って危険ですから」 

アルフレッドは、ムッとした顔で言い返した。

「どういった意味でしょうかぁ?! 国王は、私の力を見くびっておられるのか!何人たりとも姫には近づけませんけどぉ?」

ちょっ、声でかい、声でかい。
 
「そういう意味ではないよ。しかし、そろそろカリーナ姫を解放してあげればどうだ?」

カリーナはコクコクと頷いた。

「……嫌です。だいたい解放ってなんですか?人聞きの悪い」

うわぁ、声が低い。
目も据わってる。
なにより、自国の最高権力者に対してなんという口のききかただ。
 
「陛下、私は兄を探しているのです。どこかで見掛けられませんでしたか?」 

カリーナは不穏な空気を払拭するように、早口で聞いた。
 
「ああ、ジスペイン王なら、あのガゼボの近くで今ほどお見掛けしたよ」
 
カリーナは素早く見回してガゼボの位置を確認した。
そして、アルフレッドの腕から手をサッと引き抜くと、人の間をぬって駆け出した。 

「ありがとうございましたーっ」 
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