星の誓い〜異国の姫はアイスブルーの騎士に溺愛される〜

すなぎ もりこ

文字の大きさ
13 / 95

5.美貌の騎士-3

しおりを挟む
「さすがにもう戻らなくちゃ駄目よね。兄が探しているかも」


カリーナは地面を見下ろした。

アルフレッドは先ほどここから跳び降りたようだけれど、カリーナには無理そうだ。

枝を伝って降りるしかない。


「姫、よろしければお手をお貸し下さいますか?」


隣を見ると、アルフレッドが手を差し出している。


「お気遣いなく。バイオレット様。自力で降りてみせますわ」

「僕のことはアルフレッドとお呼びください、カリーナ姫」


アルフレッドは、そう言うとカリーナの手を取って、ぐいと引っ張った。

カリーナはバランスを崩してアルフレッドの胸に飛び込む形になった。

文句を言おうと顔を上げたところ、至近距離に超絶美形が見下ろしていて息を飲んだ。


「そのまま掴まっていてください」


アルフレッドは、カリーナを抱き締めると何事かを唱えた。

直後、身体が浮遊する感覚に包まれ、気付けばアルフレッドに抱き抱えられたままゆっくりと地上に下降していた。


足が地に着いても、暫く驚きで身体が動かない。


「い、今のは?!もしかして魔術ですか?」


まだ胸がどきどきしている。


「ええ。実は風の魔術が少し」


また謙遜している。どうせかなりの使い手なのだろう。

と、いうことは…


「先ほど私のベールを飛ばしたのも貴方の仕業なのね!」


アルフレッドは少しの間沈黙した後、白状した。


「すみません。どうしても貴女の顔が見たくなって」


しゅんとした声に、カリーナは怒る気も失せてしまった。

まあ、いいだろう。お陰で楽しい時間を過ごせたのだ。数刻前の苦い思いも忘れるくらい。


…それにしても、いつまでアルフレッドはこのままでいるつもりだろう。


「あの…それはそうと、もう大丈夫ですから、そろそろ離していただけるかしら」


アルフレッドからは返事がない。

それどころか抱き締める腕の力が強くなったような気がする。

身体が密着してアルフレッドの鼓動が耳に聞こえてきた。

胸元からの柑橘系の良い匂いを嗅いでしまい、カリーナは自分の頬が紅潮するのがわかった。


「アルフレッド様!離して下さい!」


アルフレッドはようやく腕の力を緩めて、カリーナの二の腕をそっと掴んで身体を離した。


「すみません。離れがたくって」


長身の美貌の青年が、目の前で頬を染めてうつむいていた。

カリーナは呆気にとられてアルフレッドを見上げた。大の大人が子供のように項垂れている。


「もう、良いですわ」


カリーナは苦笑いするとアルフレッドに手を差し出した。


「考えてみれば、ドレスを着替えないといけませんでしたわ。部屋まで案内してくださいません?」


アルフレッドは、顔を上げて目を輝かせた。

カリーナの手をそっととって、自身の腕に掴まらせると嬉しそうに笑った。


(子犬みたい。)


図体のでかい美貌の子犬なんて。


(へんなのに懐かれちゃったなぁ)


カリーナは少しくすぐったい気分だった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

発情王女の夫選び

山田ランチ
恋愛
〈あらすじ〉  王家熱を発症した者が女王になれる国、テーレフルミ王国の第一王女サンドラは、よりにもよってたまたま通りすがった騎士団長ジュール・ベルナールの前で王家熱を発症してしまう。王家熱を発症するとより多くの子孫を残そうと発情してしまうという厄介な体質になってしまったサンドラは、抗えない衝動によってジュールを襲い後悔する。その日は丁度、功績を上げた褒美としてジュールが騎士団長になり、侯爵という高位の爵位を賜った日でもあった。  女王になれば複数の愛妾を持つ定めのサンドラは、ジュールに惹かれていく気持ちになんとか蓋をしようとする。そんな中、二人を引き裂くようにサンドラの夫候補としてグランテーレ王国から第三王子のアレシュがやってくる。そしてサンドラはアレシュの前で発情してしまい……。 〈登場人物〉 テーレフルミ王国  サンドラ・フルミ 第一王女 17歳 ジュール・ベルナール ベルナール侯爵、騎士団長、26歳。 シルヴィオ・フルミ 第一王子 22歳 シルビア・フルミ 第二王女 8歳 レア・フルミ 女王、53歳 シュバリエ 女王の愛妾 55歳 シレンヌ・ベル 宰相、ベル伯爵、53歳 アレッサ・シャスール シャスール子爵家の長男、騎士団副隊長、28歳。 シェイラ・シャスール シャスール子爵家の長女で、アレッサの双子の妹。ジュールの元婚約者。 グランテーレ王国 アレシュ 第三王子 18歳  

記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています

瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
恋愛
【第一部完結】  婚約者を邪険に思う王太子が、婚約者の功績も知らずに婚約破棄を告げ、記憶も魔力も全て奪って捨て去って――。  ハイスぺのワケあり王子が、何も知らずに片想いの相手を拾ってきたのに、彼女の正体に気づかずに――。 ▲以上、短いあらすじです。以下、長いあらすじ▼  膨大な魔力と光魔法の加護を持つルダイラ王国の公爵家令嬢ジュディット。彼女には、婚約者であるフィリベールと妹のリナがいる。  妹のリナが王太子と父親を唆し、ジュディットは王太子から婚約破棄を告げられた。  しかし、王太子の婚約は、陛下がまとめた縁談である。  ジュディットをそのまま捨てるだけでは都合が悪い。そこで、王族だけに受け継がれる闇魔法でジュディットの記憶と魔力を封印し、捨てることを思いつく――。  山道に捨てられ、自分に関する記憶も、魔力も、お金も、荷物も持たない、【ないない尽くしのジュディット】が出会ったのは、【ワケありな事情を抱えるアンドレ】だ。  ジュディットは持っていたハンカチの刺繍を元に『ジュディ』と名乗りアンドレと新たな生活を始める。  一方のアンドレは、ジュディのことを自分を害する暗殺者だと信じ込み、彼女に冷たい態度を取ってしまう。  だが、何故か最後まで冷たく仕切れない。  ジュディは送り込まれた刺客だと理解したうえでも彼女に惹かれ、不器用なアプローチをかける。  そんなジュディとアンドレの関係に少しづつ変化が見えてきた矢先。  全てを奪ってから捨てた元婚約者の功績に気づき、焦る王太子がジュディットを連れ戻そうと押しかけてきて――。  ワケあり王子が、叶わない恋と諦めていた【幻の聖女】その正体は、まさかのジュディだったのだ!  ジュディは自分を害する刺客ではないと気づいたアンフレッド殿下の溺愛が止まらない――。 「王太子殿下との婚約が白紙になって目の前に現れたんですから……縛り付けてでも僕のものにして逃がしませんよ」  嫉妬心剥き出しの、逆シンデレラストーリー開幕! 本作は、小説家になろう様とカクヨム様にて先行投稿を行っています。

大人になったオフェーリア。

ぽんぽこ狸
恋愛
 婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。  生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。  けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。  それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。  その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。 その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。

処理中です...