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5.美貌の騎士-3
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「さすがにもう戻らなくちゃ駄目よね。兄が探しているかも」
カリーナは地面を見下ろした。
アルフレッドは先ほどここから跳び降りたようだけれど、カリーナには無理そうだ。
枝を伝って降りるしかない。
「姫、よろしければお手をお貸し下さいますか?」
隣を見ると、アルフレッドが手を差し出している。
「お気遣いなく。バイオレット様。自力で降りてみせますわ」
「僕のことはアルフレッドとお呼びください、カリーナ姫」
アルフレッドは、そう言うとカリーナの手を取って、ぐいと引っ張った。
カリーナはバランスを崩してアルフレッドの胸に飛び込む形になった。
文句を言おうと顔を上げたところ、至近距離に超絶美形が見下ろしていて息を飲んだ。
「そのまま掴まっていてください」
アルフレッドは、カリーナを抱き締めると何事かを唱えた。
直後、身体が浮遊する感覚に包まれ、気付けばアルフレッドに抱き抱えられたままゆっくりと地上に下降していた。
足が地に着いても、暫く驚きで身体が動かない。
「い、今のは?!もしかして魔術ですか?」
まだ胸がどきどきしている。
「ええ。実は風の魔術が少し」
また謙遜している。どうせかなりの使い手なのだろう。
と、いうことは…
「先ほど私のベールを飛ばしたのも貴方の仕業なのね!」
アルフレッドは少しの間沈黙した後、白状した。
「すみません。どうしても貴女の顔が見たくなって」
しゅんとした声に、カリーナは怒る気も失せてしまった。
まあ、いいだろう。お陰で楽しい時間を過ごせたのだ。数刻前の苦い思いも忘れるくらい。
…それにしても、いつまでアルフレッドはこのままでいるつもりだろう。
「あの…それはそうと、もう大丈夫ですから、そろそろ離していただけるかしら」
アルフレッドからは返事がない。
それどころか抱き締める腕の力が強くなったような気がする。
身体が密着してアルフレッドの鼓動が耳に聞こえてきた。
胸元からの柑橘系の良い匂いを嗅いでしまい、カリーナは自分の頬が紅潮するのがわかった。
「アルフレッド様!離して下さい!」
アルフレッドはようやく腕の力を緩めて、カリーナの二の腕をそっと掴んで身体を離した。
「すみません。離れがたくって」
長身の美貌の青年が、目の前で頬を染めてうつむいていた。
カリーナは呆気にとられてアルフレッドを見上げた。大の大人が子供のように項垂れている。
「もう、良いですわ」
カリーナは苦笑いするとアルフレッドに手を差し出した。
「考えてみれば、ドレスを着替えないといけませんでしたわ。部屋まで案内してくださいません?」
アルフレッドは、顔を上げて目を輝かせた。
カリーナの手をそっととって、自身の腕に掴まらせると嬉しそうに笑った。
(子犬みたい。)
図体のでかい美貌の子犬なんて。
(へんなのに懐かれちゃったなぁ)
カリーナは少しくすぐったい気分だった。
カリーナは地面を見下ろした。
アルフレッドは先ほどここから跳び降りたようだけれど、カリーナには無理そうだ。
枝を伝って降りるしかない。
「姫、よろしければお手をお貸し下さいますか?」
隣を見ると、アルフレッドが手を差し出している。
「お気遣いなく。バイオレット様。自力で降りてみせますわ」
「僕のことはアルフレッドとお呼びください、カリーナ姫」
アルフレッドは、そう言うとカリーナの手を取って、ぐいと引っ張った。
カリーナはバランスを崩してアルフレッドの胸に飛び込む形になった。
文句を言おうと顔を上げたところ、至近距離に超絶美形が見下ろしていて息を飲んだ。
「そのまま掴まっていてください」
アルフレッドは、カリーナを抱き締めると何事かを唱えた。
直後、身体が浮遊する感覚に包まれ、気付けばアルフレッドに抱き抱えられたままゆっくりと地上に下降していた。
足が地に着いても、暫く驚きで身体が動かない。
「い、今のは?!もしかして魔術ですか?」
まだ胸がどきどきしている。
「ええ。実は風の魔術が少し」
また謙遜している。どうせかなりの使い手なのだろう。
と、いうことは…
「先ほど私のベールを飛ばしたのも貴方の仕業なのね!」
アルフレッドは少しの間沈黙した後、白状した。
「すみません。どうしても貴女の顔が見たくなって」
しゅんとした声に、カリーナは怒る気も失せてしまった。
まあ、いいだろう。お陰で楽しい時間を過ごせたのだ。数刻前の苦い思いも忘れるくらい。
…それにしても、いつまでアルフレッドはこのままでいるつもりだろう。
「あの…それはそうと、もう大丈夫ですから、そろそろ離していただけるかしら」
アルフレッドからは返事がない。
それどころか抱き締める腕の力が強くなったような気がする。
身体が密着してアルフレッドの鼓動が耳に聞こえてきた。
胸元からの柑橘系の良い匂いを嗅いでしまい、カリーナは自分の頬が紅潮するのがわかった。
「アルフレッド様!離して下さい!」
アルフレッドはようやく腕の力を緩めて、カリーナの二の腕をそっと掴んで身体を離した。
「すみません。離れがたくって」
長身の美貌の青年が、目の前で頬を染めてうつむいていた。
カリーナは呆気にとられてアルフレッドを見上げた。大の大人が子供のように項垂れている。
「もう、良いですわ」
カリーナは苦笑いするとアルフレッドに手を差し出した。
「考えてみれば、ドレスを着替えないといけませんでしたわ。部屋まで案内してくださいません?」
アルフレッドは、顔を上げて目を輝かせた。
カリーナの手をそっととって、自身の腕に掴まらせると嬉しそうに笑った。
(子犬みたい。)
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(へんなのに懐かれちゃったなぁ)
カリーナは少しくすぐったい気分だった。
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