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14.謎の魔道騎士-2

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「大活躍だったそうですね」

目の前には、美形の騎士がアイスブルーのオーラを纏いながら仁王立ちをしている。
カリーナは目をそらして手をもぞもぞ動かした。
背後ではキースと騎士達が直立不動で凍りついている。
キースらと城に戻って来たところ、宮殿から飛び出してきたアルフレッドと鉢合わせた。
アルフレッドの姿を見つけたカリーナは、振ろうとした手を上げたまま固まった。
遠目にもその怒りが見てとれたからだ。

「貴女には王女という自覚が足りない!」
「困った民を救うのは上に立つものとしての使命よね」

アルフレッドは腕を組み憮然とした。

「ほう、では、上に立つ者が使命感だけで向こう見ずに行動することで、どれだけの損害があるか考慮した上での事だったと?」

カリーナは黙った。
アルフレッドの言う通りだ。
今回はたまたま魔道騎士長官が居合わせていたから助かっただけ。
そうでなければ、カリーナが命を落とすだけに留まらず、一旦救助した人質も沿道の人々も犠牲になっていたかもしれない。
護衛として任命されていたキース、偽騎士の扮装に関与した者、すべてその責任を負う。
カリーナは王女なのだから、国家間の問題にまで発展するだろう。
ガルシア騎士団の面目も潰れる。
カリーナは頭を下げた。

「この度は、私の軽率な振る舞いで、ガルシア騎士団及び私に関わるすべての方々にご迷惑お掛けしたことを心よりお詫びいたします」

そして、後ろを向き、騎士達にも詫びた。

「あなたがたにも心配を掛けてしまって申し訳ありません」

王女に頭を下げられて騎士達は狼狽えて、お互いの顔を見合っている。
カリーナは、アルフレッドに向き直った。

「バイオレット閣下、すべての責任は私が負いましょう。来賓などという気遣いは必要ございません。どうか、彼らをお責めになりませんよう、心よりお願い申し上げます」

アルフレッドは、眉をしかめ、カリーナから目をそらした。

「ジスペイン国からお預かりしている立場として、貴女を危険な目に合わせたことは紛れもない事実です。これは明らかに責任者である私の落ち度です。貴女に責任を負わせるつもりはない」

アルフレッドはキースに報告書の提出を命ずると、カリーナの腕を掴んで踵を返した。
強い力で握られ、引っ張られて、腕がじんじんしてきたが、カリーナは黙って従っていた。
仕方ないこととは言え、いつもカリーナに対しては情けないほど優しいアルフレッドに、あのように冷たい眼で見られたことにショックを受けていた。

(やばい…泣きそう)

国に返されるのだろうか。
無理やり留められ、ほんの数日しか滞在していないにも関わらず、カリーナはこの国に愛着を持ち始めていたことに気づく。
アルフレッドの背中を見上げて思う。
なにより、アルフレッドのような人にはもう二度と出会えないだろう。

すれ違う騎士達がアルフレッドに頭を下げつつ、カリーナを気の毒そうに見てくる。
カリーナは懸命に平然とした表情を作って後に付いていく。
そうして、通路奥からひとつ手前の部屋にたどり着くと、アルフレッドはドアを乱暴に開けた。
カリーナも引きずられるように部屋の中に入る。
そして、腕を強く引っ張っられたかと思うと気付けば、アルフレッドの腕の中だった。
強い力で抱きしめられている。
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