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14.謎の魔道騎士-3

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「本当に貴女はっ…!何でそんな無茶をしたんだ!」

カリーナはアルフレッドの腕に手を掛けながらその顔を見上げた。

「くそっ!僕がそばにいれば、そんな目に合わせなかったのに!」

端正な顔が今にも泣きそうに歪められた。
カリーナは慌てて謝った。

「ごめん、ごめんなさい。アルフレッドは悪くないわ。自分を責めるのは止めて。それに、本当に私はなんともないのよ!」

アルフレッドはカリーナの頭を抱き込んで自らの顔を寄せた。
その手が僅かに震えていることに気づいて愕然とした。
何故、この人はこんなにも私を失うことを恐れるのだろう。
カリーナはアルフレッドの背中に手を回して擦る。

「大丈夫。私はここにいる。ここにいるわ」

カリーナは背伸びをして、アルフレッドの髪を撫でた。
強ばっていたアルフレッドの身体から徐々に力が抜けていく。
カリーナは、そっと、アルフレッドの両頬に手を添えて下から目を合わせた。
ネイビーブルーの瞳が揺れている。
その奥の光を覗き込むようにじっと見つめる。

「アルフレッド。ごめんね」

やがて瞳が落ち着きを取り戻すと、目尻にシワを寄せ、口の端を上げて美形の騎士は笑った。

「もういいよ」

カリーナはホッとして微笑んだ。

アルフレッドは、息をついたあと、カリーナの肩に手を置いて、全身を眺めた。

「うん。魔道騎士の制服すごくいいね。似合ってる」
「そう?動きやすくてとても良かったわ。最初はちょっと恥ずかしかったけど」

カリーナは照れてローブを掴んでパタパタあおった。
アルフレッドの反応が途切れたので不思議に思って見上げると、唖然とした顔が目に入った。

「どうしたの?」
「何でそんな短いの履いてるの?足が見えてる!」

カリーナは面食らった。

「え?いや、スラックスはサイズが合わなくて、これも一応正規の制服だって聞いたわよ」
「それで町を歩いてたってこと?一緒にいたキースの野郎も見てたってことだろ?僕が見る前に…許せん…」

カリーナは扉に向かうアルフレッドを後ろから抱きついて必死で止めた。

「ローブで殆ど見えてないから!絶対見えてない!屋根から飛び降りた時くらいだよ」

アルフレッドが動きをピタリと止めて、ゆっくり振り返った。
顔が怖い。

「屋根から飛び降りたって?誰が?」

え?そこはまだ聞いてなかったんだ…
カリーナは自分の血の気が引く音が聞こえた気がした。
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