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14.謎の魔道騎士-1
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その時、男の身体が急に後方に弾けとんだ。
そして、家の壁にぶつかる手前で今度は上方に飛ばされた。
手足をバタバタさせた男は、どんどん上昇していく。
カリーナと沿道の人々は声を上げることさえせ出来ず、それをただ、ぽかんとして目で追っていた。
やがて、どこからか紐状の光が現れ、ひゅんひゅんと音をたてて男の身体を空中で縛り付けると、男はゆっくり落下して地面に転がった。
度肝を抜かれたからか、目を見開いて放心している。
カリーナもあんぐり口を開けて立ち尽くしていたが、背後から至近距離で声を掛けられ、我に返った。
「相変わらずのお転婆ぶりですね」
カリーナが振り向くと、紫のフードを深く被った長身の人物が立っていた。
カリーナは瞬きをしながらその人物を見つめた。
心当たりなど全く無い、何しろ顔もまともに見えない。
「ああ、でも、とてもお美しくなられましたね。もう立派なレディだ」
その話し方がカリーナの記憶のどこかに触れた。
しかし、形を成さない。
「えっと…どこかでお会いしました?」
カリーナは思いきって聞いてみた。
その質問には答えずに、フードから唯一のぞく口許で曲線を描くと、その人物はローブを翻した。
「またお会いしましょう」
翳した左手の前に大きな魔方陣が出現し、紫のローブはその中に消えた。
やがて、路地から先程の娘に先導されて騎士が数人現れた。
その中にキースもいたようで、慌ててカリーナの側に駆け寄ってきた。
「ひ、ひめ~大丈夫っすか?お怪我はないっすか?」
「大丈夫よ。擦り傷ひとつないわ」
安心させるように微笑んだ。
キースは安堵のため息をつくと、ガックリ項垂れた。
「不甲斐ないっす。お守り出来ず。マジで副団長に殺されるかも俺」
カリーナは、キースの肩をポンポン叩いて慰めた。
「私が軽率だったのよ。キースは騎士の職務に忠実だったわ。屋台の喧嘩は解決したの?」
キースは項垂れたまま頷いた。
「まあ、最終的に両方殴って黙らせたんすけど」
あらまあ。
キースはふと顔を上げて尋ねた。
「事情は道すがらあの娘に聞きましたけど、まさか、あの輩は姫が?」
捕縛された男は騎士2人に抱え起こされている。
カリーナは首を振った。
「私には手に負えなかったわ。魔道騎士が助けてくれたの。紫のローブの…」
キースは目を見開いて絶句した。
「まさか…あのお方が?」
「やっぱり高名な魔道士なのね。鮮やかなお手並みだったわ」
キースは、信じられないというように頭を左右に振って口を手で覆った。
「多分、魔道騎士長官っすよ。紫のローブだったら間違いないっす。ずっと魔法塔に隠って研究してるんで、滅多に姿を見られないお方なんす」
「へぇーそうなの?」
そんな方が何故私の事を知っているんだろう。
カリーナは先程見た姿を思い出してみる。あの声、あの口元…
「副団長の師匠なんすよ」
カリーナは、はっとしてキースをふり仰いだ。
「フラン隊長!」
沿道の人々に事情を聞いていたらしい部下から呼ばれて、キースはそちらへ向かった。
カリーナもトテトテ付いていく。
そして、先程の事件現場に転がっているポポの実を回収した。
わぁ、本当に硬いんだー、傷ひとつついてない。
ポポの実を両手に持って、キースの元へ行って尋ねた。
「ねえ、これってまだ食べられるよね?」
顔を上げると、キースを始めとするそこにいた騎士達が、なんとも言えない表情でカリーナを見つめていた。
そして、家の壁にぶつかる手前で今度は上方に飛ばされた。
手足をバタバタさせた男は、どんどん上昇していく。
カリーナと沿道の人々は声を上げることさえせ出来ず、それをただ、ぽかんとして目で追っていた。
やがて、どこからか紐状の光が現れ、ひゅんひゅんと音をたてて男の身体を空中で縛り付けると、男はゆっくり落下して地面に転がった。
度肝を抜かれたからか、目を見開いて放心している。
カリーナもあんぐり口を開けて立ち尽くしていたが、背後から至近距離で声を掛けられ、我に返った。
「相変わらずのお転婆ぶりですね」
カリーナが振り向くと、紫のフードを深く被った長身の人物が立っていた。
カリーナは瞬きをしながらその人物を見つめた。
心当たりなど全く無い、何しろ顔もまともに見えない。
「ああ、でも、とてもお美しくなられましたね。もう立派なレディだ」
その話し方がカリーナの記憶のどこかに触れた。
しかし、形を成さない。
「えっと…どこかでお会いしました?」
カリーナは思いきって聞いてみた。
その質問には答えずに、フードから唯一のぞく口許で曲線を描くと、その人物はローブを翻した。
「またお会いしましょう」
翳した左手の前に大きな魔方陣が出現し、紫のローブはその中に消えた。
やがて、路地から先程の娘に先導されて騎士が数人現れた。
その中にキースもいたようで、慌ててカリーナの側に駆け寄ってきた。
「ひ、ひめ~大丈夫っすか?お怪我はないっすか?」
「大丈夫よ。擦り傷ひとつないわ」
安心させるように微笑んだ。
キースは安堵のため息をつくと、ガックリ項垂れた。
「不甲斐ないっす。お守り出来ず。マジで副団長に殺されるかも俺」
カリーナは、キースの肩をポンポン叩いて慰めた。
「私が軽率だったのよ。キースは騎士の職務に忠実だったわ。屋台の喧嘩は解決したの?」
キースは項垂れたまま頷いた。
「まあ、最終的に両方殴って黙らせたんすけど」
あらまあ。
キースはふと顔を上げて尋ねた。
「事情は道すがらあの娘に聞きましたけど、まさか、あの輩は姫が?」
捕縛された男は騎士2人に抱え起こされている。
カリーナは首を振った。
「私には手に負えなかったわ。魔道騎士が助けてくれたの。紫のローブの…」
キースは目を見開いて絶句した。
「まさか…あのお方が?」
「やっぱり高名な魔道士なのね。鮮やかなお手並みだったわ」
キースは、信じられないというように頭を左右に振って口を手で覆った。
「多分、魔道騎士長官っすよ。紫のローブだったら間違いないっす。ずっと魔法塔に隠って研究してるんで、滅多に姿を見られないお方なんす」
「へぇーそうなの?」
そんな方が何故私の事を知っているんだろう。
カリーナは先程見た姿を思い出してみる。あの声、あの口元…
「副団長の師匠なんすよ」
カリーナは、はっとしてキースをふり仰いだ。
「フラン隊長!」
沿道の人々に事情を聞いていたらしい部下から呼ばれて、キースはそちらへ向かった。
カリーナもトテトテ付いていく。
そして、先程の事件現場に転がっているポポの実を回収した。
わぁ、本当に硬いんだー、傷ひとつついてない。
ポポの実を両手に持って、キースの元へ行って尋ねた。
「ねえ、これってまだ食べられるよね?」
顔を上げると、キースを始めとするそこにいた騎士達が、なんとも言えない表情でカリーナを見つめていた。
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