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【番外編☆側近達の番物語☆フォルクス編】子ぎつねはお団子を食べて恋を知る
出会い
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フォルクスは初めて見る王都の活気に圧倒されていた。
ど田舎から出てきたとひと目でわかる己の出で立ちに恥入り縮こまるが、志しを思い出し、きっと前を向き背筋を伸ばした。
連なる屋根の向こうに聳える黄土色の王城を見上げ、足を踏み出す。
これから自分はあの場所で次期獣人王の側近となるべく学ぶのだ。
フォルクスの故郷は獣人国の五大村のひとつだ。
幼き頃から全てにおいて突出していたフォルクスは、並ぶべき者なしとの評価を受け、筆頭選出大会が行われないまま次期国王側近に選ばれた。
異例の事である。
そのため、他の筆頭に先立ち、君主になるべく準備を始めているシメオン王子の補佐として王城に迎え入れられることになったのだ。
「ちょっと君!」
歩き始めたフォルクスは、呼び掛けられて足を止め、キョロキョロと辺りを見回した。
見れば、店先からフォルクスに向かって手招きする獣人があった。
フォルクスは迷ったが、そちらに向かうことにした。
まだ時間には余裕がある。
店の前には縁台が置かれ、その後ろにある看板布には「甘味屋」と書かれている。
その獣人は半纏を羽織り、胸の高さの窓枠から身を乗り出していた。
どうやら雌のようだ。
燃えるような赤い髪を編んで、肩に流している。
香ばしい匂いを鼻が嗅ぎつける。
胃がきゅうと鳴り、そう言えば朝から何も食べていなかった事に思い当たった。
フォルクスは財布の中を探る。
金には充分に余裕があった筈だが、道中見かけた古本屋でついつい古書を衝動買いしてしまった。
足りるだろうか…
王都の物価は高いと聞いているが、如何程のものだろう。
初見で腹が鳴るという失態は避けたいので何か腹に入れておきたいが、初っ端からツケるというのも気が引ける。
フォルクスは悶々と悩みながら店先に辿り着いた。
「君、王都は初めてなんでしょ?」
顔を上げると、眩いばかりの笑みを浮かべる美女が目に飛び込んできた。
フォルクスは暫し見蕩れる。
さすが王都は雌も洗練されている。
「緊張することないわよ。王都の獣人は皆んな温かくて気の良い奴らばっかりだから。はい、どうぞ」
彼女は丸い餅が並んで串に刺さった物をフォルクスに差し出した。
「あの、お幾らでしょう?実は私、あまり持ち合わせが無くて」
「お代は良いわ。これは私からの贈り物。王都へようこそ!」
フォルクスは恐る恐る手を差し出し、それを受け取った。
半透明の茶色の蜜がかかった甘味であろうそれをまじまじと見つめる。
「お団子というのよ。気に入ったら今度は買いに来てね」
「甘いのですか?」
「甘いのは苦手?」
「いえ」
「一気に食べると喉が詰まるかもしれないからね、最初は少しずつ食べてみて」
フォルクスは1番上の餅を齧り、モグモグと味わった。
「…美味しいです」
その後は貪るようにかぶりつき、あっという間に腹に収めてしまった。
寂しい心地で串を舐める。
「お気に召したかしら?」
「こんな美味しい甘味は初めてです。モチモチしてて甘くて香ばしくて…とても好きです」
彼女は破顔した。
「良かったわ!是非ご贔屓に!私はサリエ、この甘味屋の娘なの。よろしくね」
「私はフォルクスと言います。これから王都で暮らす予定です。必ずまた食べに来ます!」
フォルクスは串を握り締めて宣言をした。
それが、サリエとの出会いだ。
ど田舎から出てきたとひと目でわかる己の出で立ちに恥入り縮こまるが、志しを思い出し、きっと前を向き背筋を伸ばした。
連なる屋根の向こうに聳える黄土色の王城を見上げ、足を踏み出す。
これから自分はあの場所で次期獣人王の側近となるべく学ぶのだ。
フォルクスの故郷は獣人国の五大村のひとつだ。
幼き頃から全てにおいて突出していたフォルクスは、並ぶべき者なしとの評価を受け、筆頭選出大会が行われないまま次期国王側近に選ばれた。
異例の事である。
そのため、他の筆頭に先立ち、君主になるべく準備を始めているシメオン王子の補佐として王城に迎え入れられることになったのだ。
「ちょっと君!」
歩き始めたフォルクスは、呼び掛けられて足を止め、キョロキョロと辺りを見回した。
見れば、店先からフォルクスに向かって手招きする獣人があった。
フォルクスは迷ったが、そちらに向かうことにした。
まだ時間には余裕がある。
店の前には縁台が置かれ、その後ろにある看板布には「甘味屋」と書かれている。
その獣人は半纏を羽織り、胸の高さの窓枠から身を乗り出していた。
どうやら雌のようだ。
燃えるような赤い髪を編んで、肩に流している。
香ばしい匂いを鼻が嗅ぎつける。
胃がきゅうと鳴り、そう言えば朝から何も食べていなかった事に思い当たった。
フォルクスは財布の中を探る。
金には充分に余裕があった筈だが、道中見かけた古本屋でついつい古書を衝動買いしてしまった。
足りるだろうか…
王都の物価は高いと聞いているが、如何程のものだろう。
初見で腹が鳴るという失態は避けたいので何か腹に入れておきたいが、初っ端からツケるというのも気が引ける。
フォルクスは悶々と悩みながら店先に辿り着いた。
「君、王都は初めてなんでしょ?」
顔を上げると、眩いばかりの笑みを浮かべる美女が目に飛び込んできた。
フォルクスは暫し見蕩れる。
さすが王都は雌も洗練されている。
「緊張することないわよ。王都の獣人は皆んな温かくて気の良い奴らばっかりだから。はい、どうぞ」
彼女は丸い餅が並んで串に刺さった物をフォルクスに差し出した。
「あの、お幾らでしょう?実は私、あまり持ち合わせが無くて」
「お代は良いわ。これは私からの贈り物。王都へようこそ!」
フォルクスは恐る恐る手を差し出し、それを受け取った。
半透明の茶色の蜜がかかった甘味であろうそれをまじまじと見つめる。
「お団子というのよ。気に入ったら今度は買いに来てね」
「甘いのですか?」
「甘いのは苦手?」
「いえ」
「一気に食べると喉が詰まるかもしれないからね、最初は少しずつ食べてみて」
フォルクスは1番上の餅を齧り、モグモグと味わった。
「…美味しいです」
その後は貪るようにかぶりつき、あっという間に腹に収めてしまった。
寂しい心地で串を舐める。
「お気に召したかしら?」
「こんな美味しい甘味は初めてです。モチモチしてて甘くて香ばしくて…とても好きです」
彼女は破顔した。
「良かったわ!是非ご贔屓に!私はサリエ、この甘味屋の娘なの。よろしくね」
「私はフォルクスと言います。これから王都で暮らす予定です。必ずまた食べに来ます!」
フォルクスは串を握り締めて宣言をした。
それが、サリエとの出会いだ。
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